フランス映画祭in横浜で「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」を観ました。
原題「SALVATOR MUNDI, LA STUPÈFIANTE AFFAIRE DU DERNIER VINCI」
ドキュメンタリー映画なので内容は、
すべてはニューヨークの美術商の“第六感”から始まった。ダ・ヴィンチには“消えた絵”があり、それには救世主が描かれているという説がある。名も無き競売会社のカタログに掲載された絵を見て、もしかしたらと閃いたNYの美術商が13万円で落札したのだ。彼らはロンドンのナショナル・ギャラリーに接触、専門家の鑑定を得たギャラリーは、ダ・ヴィンチの作品として展示する。お墨付きをもらったこの絵に、あらゆる魑魅魍魎が群がった。
その意外な身元を明かすコレクター、手数料を騙し取る仲介者、利用されたハリウッドスターL・ディカプリオ、巧妙なプレゼンでオークションを操作するマーケティングマン、国際政治での暗躍が噂されるある国の王子。一方で、「ダ・ヴィンチの弟子による作品だ」と断言する権威も現れる。そして遂に、510億円の出所が明かされるが、それはルーブル美術館を巻き込んだ、新たな謎の始まりだった。
というお話です。
この映画、面白かったです。ニューヨークの美術商が、何となくオーラを感じた絵を購入し、それが凄いことになっていくのですが、まさか、13万円の価値だった絵画が、510億円になるとは誰も思いませんよね。それが、あれよあれよと値段が上がっていくのですから、本当に面白いんです。
その「救世主の絵」は、最初、そういう絵があるという噂から始まっていて、ニューヨークの美術商が、この絵が噂の救世主の絵ではないかと購入したところから始まります。購入してすぐに、絵画の有名な鑑定士に鑑定をお願いするのですが、判定は出ないんです。1人は、ダヴィンチの絵だというのですが、他の鑑定士たちは、そのように思うけど、ダヴィンチ本人か、工房の弟子の手による絵なのかは判らないという判定なんです。
その美術商は、こんど、ロンドンのナショナルギャラリーに頼んで、ダヴィンチ展に貸し出しますというんです。話題になると思い、ナショナルギャラリーは、その絵を展示して、目録にも載せるんです。これで、既成事実が出来てしまい、この絵がダヴィンチの絵だと広まるんです。
そして美術商は、今度はオークションに出して売るんです。ダヴィンチの絵となったその絵は、そこで、何十倍もの値段になり、購入されます。そこからは、もう、獲物に群がる猛獣のような人間たちが集まり、凄いことになっていきます。
誰もがその絵を、本物なのか偽物なのか、真偽を疑いながらの駆け引きとなっていきます。だって、レオナルド・ダ・ヴィンチの手による絵なのか、その工房の弟子による絵なのかは、描いた本人にしか判りませんよね。その時代、ダ・ヴィンチは、自分の工房にたくさんの弟子を抱えていて、指導をしながら描かせていたというのですから。弟子が描いたけど、一部に手を加えたかもしれないし、タイムマシンでもない限り、判らないんです。
それでも群がる猛獣たちの勢いは衰えず、ダヴィンチの絵だとなって、オークションでの値段はすごいことになっていきます。オークションの代理人となる人間のずる賢いことに驚きました。例えば、オークションで競り落として欲しいと頼んできた顧客に、10億でしたと言っておきながら、5億で競り落として、自分の会社に一度入れて、そこから顧客に売るという、汚いことをしていたんです。そりゃ、顧客は怒るわなぁ。本当に、こういう人たちって怖いです。
そんな事、平気でしているらしいので、いかに、美術界が恐ろしいところか分かりますよね。誰も、美術品に感動したりしている訳ではなく、投資目的としか考えていないんですよ。ダヴィンチかもしれない絵が、お金に見えちゃっているんです。えげつないですよね。
そんな姿が、すべてこの映画に収められていて、本当に面白いです。皆さん、平気でインタビューに答えていて、驚きますよ。美術館のキュレーターという人達だって、鑑定士の方たちだって、自分の利益しか考えてないんです。そして、絵の修復をする方なのですが、うーん、美術商の人は上手い修復士だと言っていたけど、下手だったなぁ。絵がべったりしてしまっていて、テカテカなんですもん。もう少し、元の絵の良さを残さないとねぇ。
とにかく、この映画は、本当に観るべきだと思いました。美術品の値段は、こうやって作られていくのだということが、良く描かれています。観ていて面白いですもん。誰もが騙されていて、ダヴィンチの絵だと言われると、何となく感動しちゃうんでしょうね。でも、本当なのかしら。だって、この救世主の絵、「弥勒菩薩像」の形にそっくりですよ。右手を挙げて左手を下して、誰も気が付かないのかしら。キリスト教の宗教画が、仏教の仏像にそっくりって、どうなの?でも、絵具などの鑑定はしているのだろうから、ダヴィンチの時代の絵であることは確定なんだろうなぁ。不思議だなぁ。工房の絵であることも、鑑定してあるんだろうなぁ。うーん、なんなんだろうね。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。ドキュメンタリー映画なんだけど、本当に面白いです。現実がこんなに楽しいとはと思うほど、欲が入り乱れて笑ってしまいますよ。もうすぐ公開なので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」