フランス映画祭in横浜で「分裂」を観ました。
原題「LA FRACTURE」
ストーリーは、
ラフとジュリーは、破局寸前のカップル。ある日、転倒して腕の骨を折ったラフは、救急に運ばれ、ジュリーも駆けつける。その日は、パリで「黄色いベスト運動」の大規模デモがあり、救急はデモで怪我をした人々で溢れていた。長い待ち時間の間に、ラフはデモで足を怪我したヤンと知り合い、自分の偏見や思い込みに気づく。病院の外では、デモ隊と警察の攻防がさらに激しさを増し、病院は臨時閉鎖されることに。病院内は更に混乱し、長い夜は続く…。
というお話です。
ラフとジュリーの同性カップルは破局寸前。大喧嘩をし、次の日にジュリーはアパートを探して出ていくという。ラフは何とか思いとどまらせようとジュリーの後を付いてまわり、道路で転倒して腕の骨を折ってしまう。救急病院に運ばれ、”妻を呼んで!”と騒ぎ、ジュリーも病院へ呼ばれる。
その日は、パリで「黄色いベスト運動」の大規模デモが行われており、救急はデモで怪我をした人々で溢れていた。ただでさえ人員不足の折、こんなに大勢の救急患者が訪れて、待つ場所も無いほどの病院内。もちろん長い間、待たされるのは覚悟しなければならない。
ラフは、酷い状態なのでストレッチャーに寝かされて待たされていた。同じ時に、デモで足を撃たれたらしい男性・ヤンが車椅子で待たされていた。お互いにイライラしており言い合いをしている内に、ラフは、自分がデモをしている人々に対しての偏見や思い込みを持っていたことに気が付く。
ジュリーは、待合室で高校の頃の同級生に再会する。彼もデモに参加していたらしく、一緒に参加していた女性に付き添って来ていたのだった。懐かしく思いながらも、変わってしまった自分たちに恥ずかしさを覚えていたのかもしれない。
病院の外のデモは拡大し、病院の門の前まで迫って来ていた。病院は門を閉鎖し、中の人々を守りに入るが、中から見れば閉じこめられた格好になり、誰もが不安を感じ始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白かったです。フランスのデモって、こんなに酷いんですね。というか、貧富の差が拡大している事がよく解るように描かれていて、こんな事になったら大変だなと思いました。デモの様子も描かれているのですが、警察はバリケードを作って、最初は手は出してないんですけど、デモの人たちがモノを投げたり、殴りかかったりすると応戦するんです。それが酷くなると、警察も攻撃をするという、悪い循環で、怪我人が増えていくという状態のようでした。
デモの様子を描く映画ではなくて、病院の様子を描く映画なので、間違えないでください。色々な事が起こっているパリの救急病院が、どれほど大変なのかという事が描かれています。
日本でも、このコロナ禍で、十分に病院の大切さや、医療従事者方々の大変さが解ったと思いますが、この映画では、コロナ禍ではなくても、こんなにごった返していて、待つ場所も無いほどになっているんです。治療をしたくても、医者も看護師も数が限られているし、この映画に出てくる看護師の女性は、週6日も夜間勤務をしていると言うんです。酷くないですか?寝れませんよね。家族もいるのに、子供の面倒も見れず、本当に苦しんでいるんです。それでも、目の前に患者がいると、何とか助けようと動いてしまう。そんな医療従事者の方々によって、人々は助かっていくというのが、何とも苦しくて、申し訳なくて、でも、自分が怪我をしたり倒れたりしたら、どうしようもなくて、助けていただくしかない。
この悪循環はどうしたら良いんでしょうね。医療従事者の方を増やしたら良いんですかね。一般の方も、ある程度の研修を受けて、ちょっとの治療なら出来るような簡易免許みたいなのは出来ないんですかね。もし、そんな簡易免許のようなものが出来たなら、私、研修に行きたいな。少しでも、自分で助けられることがあるならやりたいし、もし、自分が病気になっても、ある程度の判断が出来るでしょ。こんなパンデミックが起きるなら、前もって、国民誰もが、医療関係の勉強を簡単でもしておくべきじゃないのかなと思いました。
そんな救急病院に運び込まれた、ラフと付き添いのジュリー。病院で、様々な人間関係を目の当たりにします。ラフは、イラストレーターらしいのですが、利き腕を折ってしまい、仕事が出来ないと騒ぎます。でも、すぐ横には、片足がボロボロになったトラック運転手のヤンがいて、治療を待っているんです。彼はデモに参加していて、貧困で、仕事が出来なくなったら死活問題なんです。ラフは騒ぐだけだけど、ヤンは明日は食べる物が無いという事なんです。同じ病院でも、そんなに立場が違って、だからこそデモが大きくなっていったのだという事が、何となく伝わってきて、難しいなと思いました。
この貧富の差が激しくなり、デモが大きくなったということと、救急病院が大変な事になっているという事を、連動して描いていて、上手いなぁと思いました。どちらも労働問題なんだけど、どうしたら良いのか解らないと言う所が問題なんです。まぁ、デモの方は、大統領を辞めさせれば良いのかもしれないけど、それだけで貧困問題は解決しないでしょ。医療従事者の問題も解決しないですよね。そんな事を訴えていて、凄く考えさせられました。
ラフを診てくれている看護師は、”もう辞めるんです。”と言っているんです。その気持ち、凄く解ると思いました。コロナ禍で、日本の医療従事者の方々もそう思った方、沢山いたと思います。助けてあげられないのが、本当に申し訳ない。気持ちだけしか伝えられないけど、本当に思っています。何か、日本でも解決策を考えて欲しいです。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。この映画、とても考えさせられる映画で、今だからこそ観て欲しい映画だなと思いました。まだ、配給が決まっていないようなので、日本公開がどうなるのか解りませんが、これは、ぜひ公開して欲しい。貧困問題、医療従事者の問題、そしてジェンダー差別の問題など、色々な問題を盛り込んだ内容なので、もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「分裂」