「アプローズ、アプローズ!」【第29回フランス映画祭in横浜】受刑者によるゴドーは面白かったです | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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第29回フランス映画祭 in 横浜で、「アプローズ、アプローズ!」を観てきました。原題「UN TRIOMPHE」

 

ストーリーは、

売れない俳優のエティエンヌは、生活費のために刑務所での演劇ワークショップの講師の仕事を引き受ける。しかし、演技経験ゼロの収容者たちの演技力に驚いた彼は、本物の劇場で彼らと一緒に芝居をすることを決意する。公演までに引き起こる様々なトラブルを乗り越え、無事に最終公演を迎えられるのか?

というお話です。

 

 

売れない俳優のエティエンヌは、友人がやっていた仕事の後をやってくれと頼まれる。仕事も無いので引き受けると、その仕事とは、刑務所での演劇ワークショップの講師だった。刑務所に入るのも初めてだし、演劇経験の無い収容者たちに何が教えられるのかと、緊張しながら仕事場に向かう。

 

収容者たちを前にして講義を始めると、収容者たちは、驚くような能力を持っている者が何人もいた。彼らの演技力に驚いたエティエンヌは、これは、やれるかもしれないと思い始め、練習を重ねていく。

 

ワークショップの中で、彼らは、自分たちはただ”待っている”だけなんだと言っていた。それぞれが刑務所から出られる日を待っているのだ。そんな彼らの願いを聞いたエティエンヌは、それなら、何も起こらずに待っているだけの演劇「ゴドーを待ちながら」を演目にしようと思い立つ。

 

「ゴドーを待ちながら」の練習を始め、どんどん上手くなり、とうとう発表会で披露することに。すると、あまりの上手さに、皆、絶賛し、話題になって、色々な場所で上演して欲しいとの要望が入り出す。刑務所内の犯罪者たちなので、そう簡単に色々な場所に連れて行き、演劇をするのは至難の業。刑務所所長や、行政の認可など、色々な許可を経て、公演をして周り始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、北欧の刑務所で実際に起こった事件を元に作られています。舞台をフランスに変えて、エマニュエル・クールコル監督が作りました。入念な取材をして、実際の刑務所で撮影したそうです。刑務所は、スタジオとは違うので、撮影に苦労したそうです。

 

内容ですが、この刑務所の受刑者が演劇をするという映画、以前、観た様な覚えがあって、自分のブログを調べたら、「塀の中のジュリアス・シーザー」というイタリアの映画がありました。その映画は、ドキュメンタリー映画で、本当の受刑者を俳優として使い、刑務所内でジュリアス・シーザーを演じるという映画でした。そちらも凄かったんです。題名は良く覚えてなかったのですが、あまりに印象的だったので、受刑者とシーザーということを覚えていました。

 

今回は、実際にあった事件を、本当の俳優を使って、刑務所で撮影した作品です。選んだ俳優は、個性的で印象に残る人物を選んだそうです。エティエンヌ役は、フランスでは有名な、多彩な俳優カッド・メラッドを選び、彼の仕事が空くまで、撮影を延期したそうです。

 

受刑者たちは、最初は、全くやる気がなく、面白くないと言い放つばかりで、教室に集まりもせず、どうなる事かと思いましたが、その内、エティエンヌの指導に興味を持ち、何となく集まり始めるんです。そして、演技を始めると、そりゃ、驚くほどの成長を始めます。

 

 

この”ゴドーを待ちながら”は、サミュエル・ベケットの戯曲なのですが、不条理演劇の代表作と言われるものです。主人公のウラディミールとエストラゴンは、1本の木の近くでゴドーを待っているんです。ただ、待っているだけで、何も起きないんだけど、起きているんですよ。二人の心は、それぞれに動くのですが、それでもやっぱり、ゴドーを待つんです。何でゴドーを待っていたのかも忘れちゃっているのに・・・。
 

そんな内容なので、演じる人の表現によって、どうとでも演じられるんです。そして、とても難しいんです。少し間違えば、ただの面白くない、座って待っているだけの演劇になってしまうんですから。それを、受刑者で演じるって、凄いピッタリでしょ。彼らも、ただ、出所出来る日を待っているだけなんです。その気持ちを、表現しているので、沢山の人の心に響いたのだと思いました。

 

受刑者にだって家族もいるし、本当ならいつでも会いたいんだけど、罪を償わなくちゃ刑務所から出れないし、刑務所側だって、簡単に出したのでは、被害者の気持ちはどうなるのって事になってしまうので、簡単には出せないんです。こういう部分は、とても考えさせられました。

 

受刑者と関わっていれば、そりゃ、彼らに愛情が湧いてくるし、味方をしてあげたくなるけど、彼らによって被害に遭われた、被害者もいるんです。映画の中では、犯罪歴などは一切出てきませんが、長期間入れられているのだから、それなりの犯罪を犯してきたのだと思います。だから、いくら演技が上手くたって、罪は軽くはならないですよね。

 

受刑者の立場と、エティエンヌの気持ち、そして、”ゴドーを待ちながら”の内容が相まって、とても上手く出来ていたと思いました。実際に起こった事だから、凄い話だなって思いました。私は、出来れば、この事件の顛末も知りたかったなと思いました。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。とっても面白いんだけど、「塀の中のジュリアス・シーザー」という映画で、既に同じような内容を観ていたので、ちょっとデジャヴ的に見えてしまい、超を付けられませんでした。でも、初めて、こういう内容を観る方には、凄く楽しめると思いますよ。来年7月に公開です。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「アプローズ、アプローズ!」