「PITY ある不幸な男」周りから同情して貰う事に快楽を感じた男がとった行動とは。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「PITY ある不幸な男」を観てきました。

 

ストーリーは、

10代の息子と小綺麗な家に住み、礼儀正しく身だしなみも良い弁護士の中年男性。何不自由ない暮らしを送っているように見えるが、彼の妻は不慮の事故で昏睡状態に陥っている。彼の1日は、妻を思ってベッドの隅でむせび泣き、取り乱すことから始まる。そんな彼の境遇を知り、同情心から親切になる周囲の人々。この出来事がもたらした悲しみは、いつしか彼の心の支えとなっていた。ところがある日、妻が奇跡的に目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れる。

というお話です。

 

 

不幸なときだけ幸せを感じる男の物語。ティーンエイジャーの一人息子と、小綺麗な家に住み、健康で、礼儀正しく、概ね身だしなみは良い、一見何不自由ない弁護士の男性。しかし彼の妻は不慮の事故により昏睡状態に陥っている。彼の日々は妻を想ってベッドの隅で咽び泣き、取り乱すことから始まる。

境遇を知り、毎朝ケーキを差し入れる隣人、割引をするクリーニング屋、気持ちに寄り添う秘書など同情心から親切になる周囲の人々。この出来事がもたらした悲しみはいつしか心の支えとなり、次第に依存してゆく。



 

そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れます。悲しみという楽園を失った男はやがて自分自身を見失い、暴走を始めます。最初は、妻が回復した事を黙って、嘘をついているのですが、それも妻の行動によりバレてしまいます。”哀れみ”をかけられなくなった男は、執拗に、相手にそれまでと同じ哀れみと奉仕を願い続けて・・・。(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、映画祭とかで好まれそうな映画でした。なので、一般の人に喜ばれるような映画ではないなぁと思ったけど、でも、深い内容で、うーんと考えさせられました。アメリカの映画評論サイトロッテントマトでは、とても高い評価を受けている作品です。

 

 

主人公は、弁護士で生真面目で、家族思いの男性です。妻と息子の3人家族なのですが、妻が事故で昏睡状態になってしまい、毎日のように、病院にお見舞いに行っています。息子はピアノが上手く、母親が大好きな少年で、父親と一緒にお見舞いに通っています。

 

そんな二人に、周りの人々は同情し、いつも奥様のお加減はどうですか?と聞いて、良い返事が返ってこないと、また同情するという毎日を送っています。弁護士の男性は、同情され、周りが労わってくれるのが心地良く、毎日のように、知り合いのクリーニング屋に洗う必要もない服を持ち込み同情され、家の下の階の女性に朝食用のケーキを貰い満足し、秘書に病院に行くと言って事務所を出る時に、同情のハグをされ、友人たちに会って同情の言葉をかけて貰うのが幸せの糧になっていました。

 

 

毎朝、起きると、ベッドに座って泣くのですが、とっても嘘泣きっぽくて、笑っちゃうほどなのに、息子にも父親が悲しんでいる姿を見せるためにやっているんだと思うんです。もー、徹底しているでしょ。これ、俗に言う”代理ミュンヒハウゼン症候群”だと思うんです。良くあるのは、自分の息子に無理に怪我をさせて病院に連れて行き、可哀想な母親と思われて幸せを感じるというのが有名ですが、この映画は、妻が昏睡状態でということなんです。

 

突然に妻が目を覚まし、回復してしまいます。凄く喜ばしい事で、健全な毎日に戻れると思うのですが、男は、同情されなくなるのが寂しくて、辛くて、妻が回復した事を周りに話さないんです。でも、もちろん妻は回復したので、家に帰って来て、買い物にも出かけるし、外に出ますよね。なので、回復したということが回りに知れ渡ってしまい、男が嘘をついても、「この間、奥様に遭いましたよ。」と言われてしまうんです。

 

 

同情されなくなった男は、あまりにも寂しくて、段々と同情を強請るような行動をとりはじめるのですが、もちろん、受け入れられる訳もなく、社会から孤立して行くんです。不思議な雰囲気でしたよ。

 

人によっては、同情されるのって気持ち良いんですかね。私は、出来るだけ同情されるような情報を周りに与えたくありません。なんか、負けるような気持ちになるし、たとえば、同情されるような事があっても、全然平気だというような顔をするようにしています。だって、同情って、ハンデを貰っているような気がしませんか?失敗しても、同情するような事があったんだから仕方ないというように思われるでしょ。それって、ズルをしているような気がして、耐えられないんです。私の美意識からハズれるんですよ。でも、同情が心地良い人がいるんだなぁ。

 

 

主人公を演じている男性が、ほとんど表情が無くて、気持ちを表現するような行動も無いように見えるんです。悲しんでいるように見えるのは、全て演技みたいに思えて、不気味なんです。笑っちゃうんだけど、それが段々と恐く見えてくるんです。ホラーではないんだけど、ちょっとホラーなの?って思うような空気が流れるんです。うーん、恐かった。

 

不思議な映画でしたが、私は面白い時間を過ごしました。観ている時は、とても不気味で、淡々としていて、通常運転っぽいんだけど、後から思い返すと、恐かったり、笑えたり、人間って寂しい生物だよなと考えさせられるんです。ただ、観ている時は、何をしているのか、ちょっと理解し難い感じがあるので、万人が楽しいと感じるとは思えません。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。この映画は、玄人向きだと思いました。頭が空っぽで楽しめる映画ではないので、万人向けではありませんが、映画を観た後に、咀嚼して反芻するような映画マニアには、ウケる映画だと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「PITY ある不幸な男」