「護られなかった者たちへ」生活保護のあり方を考えさせられる内容でした。難しい問題です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「護られなかった者たちへ」を観てきました。

 

ストーリーは、

東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は知人を助けるために放火、傷害事件を起こして服役し、刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。

というお話です。

 

 

東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され”餓死”させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。被害者はいずれも、誰もが慕う人格者だった。

東日本大震災時、家族を失ったり、家を失ったり、誰もが悲しみと不安に押しつぶされそうになっていた。避難所では居場所のない人も数少なく無かった。そんな中に、母親を亡くした少女カンちゃんと、ただ一人助かった青年・利根泰久がいた。二人は居場所も無くうつむいていたが、近くに住む遠島けいという老女に声をかけられ、その家に行くようになる。

利根は仕事を探し、カンちゃんも学校に通い始め、ある日、けいの家に行くと、彼女はお金も無く貧困に喘いでいた。しかし、そんな時でも二人には食べ物を与えようとする。利根は生活保護を受けるべきだと説得し申請に行き、福祉保健事務所で受け付けて貰うのだが・・・。



 

そして現代、捜査線上に浮かび上がったのは、別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根という男だった。刑事の笘篠は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し、利根を追い詰めて行くが、決定的な証拠がつかめない。自供もしているのだが、笘篠には何かが引っかかっていた。

そんな時、第3の事件が起きようとしていた。なぜ、このような残忍な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画は、東日本大震災時に起こった出来事と、現代に起きている事件がリンクしていき、あの震災によって、沢山の人の人生が変わったのだという話になっていきます。

 

空家になったアパートで、死体が発見されます。椅子に身体を括り付けられ口もガムテープで留められ、動けないようにされたまま放置され、餓死させられたようでした。あまりの残酷な殺され方に警察も驚きを隠せず、捜査を始めると、直ぐ次に、同じような死体が発見されます。そちらも空家で餓死させられたものでした。餓死させるって、凄い殺し方ですよね。あの「ソウ」を思い出しました。あちらは監禁されて、自分の足を切れば逃げれるって選択だったけど、今回は、選択肢は無く、殺されるだけでした。

 

 

ぐるぐる巻きにされた死体なので、他殺として捜査が始まり、その二人が同じ福祉保険事務所に勤めていたことが解ります。そこでの怨恨だろうという事で、捜査を進めると、最近、出所してきた利根という男が浮かんできます。震災時に世話になっていた遠島けいさんが生活保護を受けられずに餓死をしてしまい、その恨みで福祉事務所に放火をして、逮捕服役したのでした。

 

ここで福祉事務所が生活保護の申請者について、どんな対応をするかという事が描かれるのですが、この映画では、どちらの立場についてもちゃんと描いているので上手いと思いました。もちろん、生活保護申請者に対しては、虚偽が無いか、誰かに指示されていないかなど、よく調べます。そりゃそうですよ、税金ですもんね。その調査が、人によっては、キツく聞こえて申請を戸惑う人もいるだろうとは思いました。

 

 

職員の方は、上司から申請者を減らせとも言われているような雰囲気でした。それこそ税金だし、近親者に援助して貰えるならそうして貰うようにとの指示をしているようでした。これ、普通の事ですよね。でも、本当に貧困で困っている人もいて、近親者にも頼めないような人もいるのだという事を考慮してあげないと、映画のように我慢して餓死してしまう人も出るのかなとも思いました。これは難しい問題ですよね。人間は嘘をつく生物だから、それをどうやって見分ければ良いのか、本当に難しいと思いました。

 

だから、殺された職員の方々も、悪い人では無いんです。きっと、より苦しんでいる人を助けたいし、虚偽で生活保護を受けている人を排除したいと考えて、判断をしていたのだと思います。そうなると、ちょっとでも疑わしい人、近親者が居る人などには、キツい対応になってしまうのだろうと思いました。彼らは彼らなりに、頑張っていたのだと思います。

 

 

生活保護って、本当に難しいですよね。本当に弱い人は何も言えず貧困に喘いていて、大騒ぎして恫喝する人には職員も面倒になって保護を出してしまう。大騒ぎする人は本当は困って無いと思いますよ。騒ぐ力があるんだから。それよりも声も出せずに弱い人を助けてあげて欲しいんだけど、それを見極めるのは難しいのかな。

 

私は、貧困で困っている人は、公団などの空いている部屋に住んでもらって面倒を見るという前提で、生活保護をするのはダメなのかしら。それぞれが色々な地域に住んでいるから、生活状態も分からないんでしょ。同じ所に住んでもらえば、高級車を持っていたりする虚偽申請者は直ぐに解かると思うんです。それは無理なのかしら。この映画の中にも出て来るけど、保護費を貰いながらベンツに乗っていたりするんです。酷いよね。うーん、色々、難しいなぁ。

 

 

ま、話を戻して、職員が2人殺され、利根が疑われるのですが、利根は、何故か、ワザと自分が捕まるような動きをするんです。あからさまにそれが解るんですよ。なので、観ている方も、刑事の笘篠も、おかしいなと思い始めるんです。そして、段々と真実が解かってくる。

 

東日本大震災の後、利根は、自分が生き残った意味があるのだろうかと考え、沈んでいたところをけいさんに助けられたんです。生き残ったという事は、必ず意味があるのだと私は思うけど、だからって、無理に何かをしようなんて思う必要もないと思うんです。ささやかでも何でも、しあわせな生き方が出来れば、それは十分に生き残った意味があるし、そんなの、震災に合わなかった人だって一緒です。震災を忘れろとは言いませんが、もう引っ張られるのは終わりにしても良いんじゃないかな。新しい生活を手に入れて、新しいしあわせを生きて良いと思います。そんな事を思った映画でした。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。難しい映画だけど、考えさせられる内容で、心に刺さるお話でした。佐藤さんと阿部さんが良かったなぁ。この映画の中の人物として、ちゃんとそこに生きていましたもん。上手い人って、他の作品と役が被らないんですよね。その役で観れるので、深く同調出来るんです。素晴らしかったです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「護られなかった者たちへ」