「空白」衝撃的な映画でした。人間の深い部分をグリグリと抉ってくるような素晴らしい内容でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

「空白」を観てきました。

 

ストーリーは、

女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。

というお話です。

 

 

スーパーの化粧品売り場で万引きしようとした女子中学生・添田花音は、現場を店長の青柳直人に見られ、捕まってしまう。しかし隙をついて逃げ出し、店長に追われて、そのまま国道に飛び出して乗用車とトラックにひかれて死亡してしまう。

亡くなった花音の父親は、わが子の死の状況を聞くも、万引きをしたという話を信じず、娘の無実を信じて疑わなかった。娘の死に納得できず不信感を募らせた父親は、事故の関係者たちを次第に追い詰めていく。



 

父親の充は、花音の学校に行って、虐めがあったから悩んでいたのではないかと校長や教師に訴え、同級生の調査を行わせるが、いじめは見つからない。店長の青柳の前に現れ、悪戯目的で万引きをしたと偽って連れ込もうとしたのではないかと騒ぐが、青柳は違うと言って、謝るばかり。

元妻の翔子から、花音のカバンから万引きした化粧品が出てきた事実を知らされるが、何を言われても信用しない。誰の話も聞かないのだった。

店長の青柳は、元々大人しく優しい性格で、相手に強く言われると言い返すことが出来ない。添田から責められ、マスコミに追い掛け回され、どんどん追い詰められて行ってしまう。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、深かった。それぞれの立場に立つと、誰も悪くは無いんです。娘が亡くなったら、悲しむのは当たり前だし、誰かを憎まなくちゃやってられないという気持ちも解ります。自分の店で万引きをした人間がいれば、捕まえて警察に突き出すのは当たり前ですよね。だって、万引きというけど、それは犯罪で窃盗犯ですから。そして、事故で轢いてしまった人は、飛び出してきたのだから車は止められなかった。だから許して欲しいと謝るのは当たり前だけど、飛び出した方が悪いですよね。

 

この話、何処まで言っても、誰も悪くないんです。只一人、亡くなった娘は、悪い事をしていました。でも、なんで万引きなんていう行動をしてしまったのかというと、また、彼女にも理由があって、悪い子ではないんです。もう、考えれば考えるほど、どこまでも収集が付かなくて、辛くなるんです。

 

 

実は、この映画を観る前日に、「由宇子の天秤」という映画を観まして、この映画と対になるような内容で、ちょっと驚きました。誰もが、自分にとっての正しい事を主張するけど、それは噛み合わないんですよね。みんな、自分が正しいと思っているけど、相手から見れば間違っているんです。そんな社会で、人間は生きて行かなければならないという”啓示”のような映画だと思いました。どんなに自分が正しいと思っても、相手の言い分も聞くべきなんです。

 

この映画では、娘を失くした充は、どこまでも他人を憎みます。そして、関係者を片っ端から壊して行くんです。酷いと思いました。でも、気持ちは解るんです。そうしていないと、自分が壊れてしまう。だって、解っているんですよ、自分が娘の話を聞いてやらずに、娘を追い詰めていたという事を。それを受け入れられないから、当たり散らすんです。本当に、悲しいほど伝わってきました。これは古田さんだからの演技だと思います。

 

 

そして店長の青柳は、元々、そんなに意欲的にスーパーの店長をやっていた訳ではなく、父親が突然に亡くなって継いだという感じなんです。それまではプーをやっていたようでしたし、あまりやる気が無いんです。でも、きっと、少しづつ店長としての自覚が出てきたところだったんだと思います。だからこそ、自分の店で万引きをする人間が許せなかった。犯罪ですからね。だから、何処までも追いかけたのだと思います。

 

私は、青柳には一切悪いところは無いと思います。何度も言いますが、万引きは犯罪です。万引きという簡単な言葉で言っているけど、窃盗なんです。犯罪をして、死んだからと言って罪は消えません。この映画で間違っちゃいけないのは、窃盗をして追われて死んだら、本人の責任です。逃げなければ良いんですから。追った方に、一切責任はありません。映画の中で、マスコミが行き過ぎたことが無いかと言っていたけど、犯罪者が逃げたら追うのは当たり前。どこが行き過ぎているのか、全く解りません。そんな事がまかり通ったら、社会は崩れてしまいます。犯罪者は犯罪者、逃げて死んだのは自分の責任です。

 

 

それなのにマスコミが追い詰め、SNSや野次馬たちが追い詰め、充が追い詰めて行くので、青柳は自分の正義が揺らいできてしまいます。こういう時って、誰かが助けてあげるべきで、草加部さんという女性が手を差し伸べるんだけど、この女性のやり方がイマイチなのよね。凄く優しくて良い人なんだけど、人のパーソナルスペースまで、ずかずか入り込んでくるような人なんです。このやり方はキツいですね。私も良い人と解かっていても、無理かもしれません。どんな時でも、助けようとするときは、パーソナルスペースを守ってやらないと、相手を不快にさせて、怖がらせてしまいます。善意でやってくれているんだけど、難しいですよね。人間って、本当に難しい。

 

この草加部さんという女性は、ボランティアもやって、人の為に一生懸命働く人なんですけど、その入り込み方が強引に見えてしまい、どうしても周りの人々に理解されず、自分でも苦しんでいるようでした。人との接し方って、本当に難しいです。相手の為にやってあげているという態度が、どうしても押し付けに見えちゃうんですよね。押し付ける気持ちが無くても、上手く伝わってくれないんです。

 

 

他にも、充の船の従業員の野木、充の元妻の翔子、花音の学校の先生、花音を轢いてしまった女性と母親などなど、何人もの人物が出てきて、それぞれの想いと気持ちをぶつけ合い、一つの事件によって、何人もの運命が変わっていってしまいます。

 

とても深い内容の映画でした。これ、2度目を観たら、また感想が違うかもしれません。そんな風に思えるような、深い映画でした。色々な人物が出てくるように、観る側も、観る人それぞれの考えは様々だと思いました。誰もが違う考えを持つんじゃないかな。

 

それにしても、主演の古田さん、松坂さん、他の方々、あまりにも素晴らしい演技なので、もう、観ていてしんどくなりました。本当に凄い映画でした。ここまでトップレベルの俳優陣が演技を戦わせてくれたら、そりゃ、観る方もしんどくなりますよ。素晴らしいです。凄く疲れましたが、観た後は、とても納得が出来て、うんうんと頷いてしまいました。凄い映画です。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。本当に凄い映画です。脱帽するほどの出来でした。素晴らしいです。そして、これと対になるような映画「由宇子の天秤」については、後日、書きますが、そちらも素晴らしいです。内容は違いますが、映画が訴えている事が、描き方は違うけど、方向性が同じなんです。同じ時期に、こういう映画が2作出来上がったのは、奇跡かなとも思います。まず、この「空白」という映画、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「空白」