「由宇子の天秤」正しい事に突き進む由宇子がぶち当たった問題は正しいだけでは解決しない問題でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「由宇子の天秤」を観てきました。

 

ストーリーは、

3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、ドキュメンタリーディレクターとして、世に問うべき問題に光を当てることに信念を持ち、製作サイドと衝突することもいとわずに活動をしている。その一方で、父が経営する学習塾を手伝い、父親の政志と二人三脚で幸せに生きてきた。しかし、政志の思いもかけない行動により、由宇子は信念を揺るがす究極の選択を迫られる。

というお話です。

 

 

3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子は、テレビ局の方針と対立を繰返しながらも事件の真相に迫りつつあった。すこし強引に見える取材だが、由宇子が対話を始めると、不思議と相手も話をしてしまう、そんな雰囲気を持つのが由宇子だった。

 

ディレクターの仕事をしながら、父親が経営する学習塾の手伝いもしている由宇子は、ある日、具合が悪そうな女子生徒・萌を介抱する。貧血が酷いようで、自宅へ送っていき、萌が父親と二人暮らしでお金に困っていそうなことに気が付く。萌もバイトをしていたようだが、学校が厳しく、最近は出来なくなったらしい。



 

そんな時、学習塾を経営する父から思いもよらぬ〝衝撃の事実〞を聞かされる。それは通常なら正しく処理しなくてはいけないような事案だったが、それをしてしまうと、父親、学習塾、由宇子の仕事にまで影響が及んでしまう。影響を考えた由宇子は、今のドキュメンタリーの仕事のオンエアが終わるまで、話を伏せておく選択をする。しかし それは同時に自分の「正義」を揺るがすことになるのだった。

果たして「〝正しさ〞とは何なのか」。常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる。正しい事をしたいと思いながらも、人間として生きる為に必要な事は膨大であり、全てが正しく出来ているわけではないのだ。



 

ドキュメンタリーディレクターとしての自分と、一人の人間としての自分。その狭間 で激しく揺れ動き、迷い苦しみながらもドキュメンタリーを世に送り出すべく突き進む由宇子。彼女を最後に待ち受けていたものとは?(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、どこまでも答えが出ないような問題に切り込んだ、良い映画でした。この映画を観た後に、「空白」という映画を観まして、そちらと対になるような、そんな感じを受けました。どちらも、何が正しいのか、誰が正しいのか、正しいとは何なのかという事を問題にしていたと思います。

 

 

人間は、生きていれば、必ず矛盾が生じてしまう。自分は正しい事だけをしていると言いながら、赤信号で横断歩道を渡っていたりするでしょ。これくらいは良いというかもしれませんが、既にそこで矛盾してしまっているんです。全てが正しい人間などいないし、自分は正しくても、相手にとっては正しくなかったりするんです。そんな事を、上手く組み込んだストーリー構成で、どちらの作品も素晴らしいなと思いました。

 

由宇子は、ドキュメンタリーディレクターなんですけど、TV局の社員ではないようでした。なので、TV局からOKが出なければ放送はして貰えないんです。なので、由宇子の言う正しいドキュメンタリーを制作しても、局の意向で、カットされたり、切り貼りされたりして、内容が変わってしまう事もあり、上司と凄い喧嘩をしたりするんです。それは、正しい報道をするべきだという、由宇子の信念から来ることで、周りもそれを解かっているんだけど、でも、TVは見てもらってなんぼなので、視聴率が取れなればいけないし、間違った報道をすれば酷く非難を浴びることになってしまいます。

 

 

そんな事もあり、由宇子は、いつも神経を張り巡らせて、良い報道を、正しいジャッジをと考えているんです。そんな由宇子の前に、その正しいという事がを揺らがせる出来事が起きてしまいます。ネタバレは出来ないのですが、これは悩むだろうなぁと思いました。只、謝れば良いというような問題ではないので、シビれました。

 

その父親の問題に関連した事で、ある嘘がある事が解ってきて、それと連動するように、ドキュメンタリーで追っていた事件でも、疑惑が上がってくるんです。いつもTVを観ていて思うのですが、人間って嘘をつく生物だから、いくらインタビューをしていても、嘘ついている人が沢山いるんだと思うんです。みんな、私も含めて、自分を良く見せたいですからね。それを差し引いて考えなければいけないのに、その言葉を利用して、上手く切り貼りして、もっと大きな嘘に仕立てていくのが、ワイドショーだと思うのよね。だから、いつも私は、マスゴミというのですが、真実を伝えるだけだったら、あんなに面白くないですもん。そんな嘘のニュースで、関わった人々は追い詰められて、生活が出来なくなったり、自殺をしたり、苦しむことになるんです。

 

 

こんな問題が起こったら、私だったらどうするかなぁ。これって、自分の一番大切なものって何なのかですよね。家族が大切なのか、仕事が大切なのか、社会的地位が大切なのか、選択だと思いました。由宇子の選択は、自分の周りのものは全て守って、それ以外は切り捨ててるんですよ。綺麗ごとを言って、助ける振りをしているけど表面だけの態度に見えるんです。人間なんて、そんなもんだと思います。きっと、私も同じようにしただろうと思うもん。心に傷は残るけど、別に死ぬわけじゃない。人間はそうやって、罪を重ねて生きて行くんです。

 

だから、どんな時でも、自分の考え方はしっかり持つことと、自分が正しいと思っていても相手の言い分は必ず聞くこと。そして、全ての場合に正しいことが良い選択とは限らないという事です。イイんですよ、自分を守っても。最大限、周りの状況を考えて出来るところまでは譲歩してあげるべきだけど、最後は自分を守って良いんです。いつもいつも、正義のヒーローが良い訳じゃないのよ。だって、ヒーローってウザいでしょ。正論ばかりぶつけるなっつーの。人間なんだから、人間らしくて良いんです。間違っていないと思いますよ。

 

 

私は、この映画を観て、由宇子は、とても人間らしい判断をしていたと思います。ドキュメンタリーを撮影している時は偽善者に見えたけど、問題が起きてからの彼女はとても人間らしいと思いました。私は、こういう人間らしい人がドキュメンタリーなどを撮影した方が、面白くはないかもしれないけど、良い映像が撮れそうな気がしましたけどね。

 

それにしても、最後の大どんでん返しは驚いたなぁ。実際に、そんな事もあるんだろうと思いました。だからこそ、ワイドショーやネットの噂などは信用出来ませんね。情報操作がいくらでも出来てしまうんですから。だからSNSなどで知らない人を誹謗中傷している人たちって、本当に踊らされているだけなのよね。何も解らないのに、書かれたり聞いたりしたことのみでジャッジをしているなんて、世界が狭い事をひけらかしていて、みっともないと思わないのかな。

 

最後に、キャストの皆さん、良かったです。瀧内さん、「火口のふたり」で素晴らしかったし、今回もキツい役を見事に演じてくださいました。光石さんの抑えた演技も素晴らしく、他の方々もピッタリでした。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。とても考えさせられましたし、自分が正しいと思っている人の怖さが描かれていると思いました。父親や周りの人の声を聞いていれば、もっと違う選択もあったかもしれないし、誰も傷つかず、穏便に済ます事だって出来たかもしれない。その人の経験にもよるけど、四角いモノでも丸く包み込むくらいの許容値が必要なんじゃないかな。尖っているだけでは、何も解決しないと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「由宇子の天秤」