「ペトルーニャに祝福を」伝統行事と男女差別、どう折り合いをつけるべきなのか。神様も困っちゃうね。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

「ペトルーニャに祝福を」を観てきました。

 

ストーリーは、

北マケドニアの小さな町、シュティプに暮らす32歳のペトルーニャは、美人でもなく、太めの体型で恋人もおらず、大学を出たのに仕事はウェイトレスのアルバイトしかない。ある日、主義を曲げてのぞんだ面接で、セクハラを受けたうえに不採用になってしまう。その帰り道、ペトルーニャは地元の伝統儀式に遭遇する。それは、司祭が川に投げ入れた十字架を男たちが追いかけ、手に入れた者には幸せが訪れるというものだった。ペトルーニャは思わず川に飛び込み十字架を手にするが、女人禁制の儀式に参加したことで男たちから猛反発を受けてしまい・・・。

というお話です。

 

 

大学で学んだ知識を生かす仕事に就くことができず、鬱々としながらウェイトレスをする32歳のペトルーニャ。知人のツテで仕事の面接の口を探してきた母親は、ペトルーニャに言う。「きれいな恰好をしていって。本当の年齢でなく、25歳というのよ」と。

友人からマシなワンピースを借りたぺトルーニャが指定された場所に行くと、そこは多くの女性がミシンを踏む縫製工場だった。面接担当の男性責任者はスマホをいじりながらペトルーニャに年齢を聞くと「42歳に見える」と一言。そして「デスクワークの経験はないが、大学で学んだ知識がある」と語るぺトルーニャに近づくと、そのスカートに手をかけ、からかった末に言う。「裁縫はできず就職経験もない。事務もしたことがない。見た目もそそらない。」



 

最悪の面接の帰り道、ぺトルーニャは、キリストの受洗を祝う「神現祭」の群衆に遭遇する。司祭が川に十字架を投げ込み、それを最初に取った男は、1年幸福に過ごせると信じられている祭だ。多くの男たちが半裸の姿で川に向かう。その人波に飲まれ川沿いまで来たぺトルーニャは、投げ込まれると同時に自分の前に流れてきた十字架を見て、思わず川に飛び込み、それを手に取った。

「女性がとったわ!」だが男たちは、群衆から上がった そんな歓声を無視し、十字架をぺトルーニャの手から奪い取る。「私が最初に取ったのに!」「女が取るのは禁止だ!」いきり立つ男たちをなだめながらも、前代未聞の事態に戸惑う司祭。その混乱に乗じ、ペトルーニャは十字架を奪い取って逃亡する。



 

消えたペトルーニャに怒る男たちに、警察署長までが加わって、現場はさらなる混乱に陥っていた。「神現祭」の取材に来たテレビ局の女性リポーター、スラビツァは、警察署長や司祭に別の取材を始めている。「女性が十字架を取るのは問題ですか?なぜですか?どこに違法性が?」と尋ねるスラビツァに、「子供に男だけがとれると教えている」と答える司祭。騒ぎを大きくしたくない警察署長は「君の仕事はイカれた女を追うことか?」と尋ねるが、「怒り狂った群衆が、彼女を追いかけているんですよ」とスラビツァは一歩もひかない。

一方ペトルーニャの家では、びしょ濡れで帰った娘をいぶかっていた母親が、テレビが報じる「田舎町の珍事」というニュースで、事の次第を知り怒り狂う。「罰当たりのバケモノ!近所に何を言われるかわからない!出ていけ!」その母に蹴りを入れて、ペトルーニャは言い放つ。「十字架は私のもの!絶対に渡さない」だが、やがてやってきた警察に、ペトルーニャは連行されてしまう。(公式HPより)後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、あまり知らずに観に行ったのですが、期待以上に面白かったです。観ていて、”解かる~!”っていう場面が沢山ありまして、結構、真面目な映画なんだけど、ちょっと笑ってしまうような場面がいくつかありました。

 

北マケドニアって、アルバニア、コソボ、セルビア、ブルガリア、ギリシャに囲まれた、海の無い国のようです。周りの国の名前を聞いて分かるように、まだまだ紛争が続いていて、安定しない地域ですよね。女性の人権も重要視されていないようで、性差別のようなものが強そうでした。

 

主人公のペトルーニャは、大学で歴史を学び卒業したのですが、就職が無くて、今もフリーター状態で、実家に両親と住んでいます。そんな娘を心配する母親は、彼女に就職させようと、友人から紹介して貰って、娘を面接に行かせます。32歳の娘に過保護すぎるなぁと思ったけど、娘が可愛いのかなとその時は思いました。

 

 

ペトルーニャが面接に行くと、面接官が彼女の経歴を聞いて、”何も出来ないし、容姿にそそられもしない”と言うんです。酷いでしょ。大学を出ていても、女性は何も仕事を貰えないんです。作業員としては雇うけど、一般職は貰えないんです。性差別が酷いなぁと思いました。

 

そんな面接の帰りに、その地域の伝統行事の川で十字架を拾うという儀式に出会い、つい、ペトルーニャは自分の目の前に流れてきた十字架を拾ってしまうんです。その十字架を拾うと幸せになれるという行事なのですが、参加出来るのは男性のみ。ペトルーニャは、拾ったのに取り上げられそうになります。きっと、女が拾うなとか取り上げられそうにならなければ、ペトルーニャだって、意地になって渡さないとは言わなかったと思うのですが、落ち込んでいる時に、またも酷いことを言われ、もう、絶対に渡さないと頑張ってしまうんです。

 

 

どの地域にも、伝統行事があり、日本でも男性しか参加が出来ない行事も多いですよね。性差別と言えばそうかもしれないけど、言い伝えで”女性の神様だから女性が参加すると怒る”と言われると、やっぱり男性だけが良いのかなって私は思います。神様とか超常現象的なものは想像でしょと言われるかもしれませんが、やっぱり長い年月伝わってきたのだから、何か理由があるんじゃないかと思うんです。なので、私は、何でも平等にすべきとは思わないんですけどね。

 

ペトルーニャは十字架を返さず、何故か警察に捕まって連れていかれます。でも、逮捕ではないと言うんです。確かに犯罪じゃないですよね。でも、十字架を返せと言われ、理由は何ですかと聞くと、男性しか参加が出来ない行事だと言われ、どうして男性だけなのかと聞くと、誰も答えられないんです。神父さんも困ってしまいますが、彼はペトルーニャから取り返そうとはしません。何故なら、伝統行事であり、法律では何も出来ないからです。

 

 

村の男性たちは怒って、ペトルーニャに暴言を吐いて、暴力を振るおうとしますが、警察が守ります。警察は、彼女を拘束するというより守る為に外に出さない事が解ってきます。こういう集団心理というのは怖いですよね。誰かが襲ったら全員でやりますから。

 

ペトルーニャの家族も巻き込まれ、母親が彼女に会いに来るのですが、母親はとても周りの目を気にする人で、本当の娘の気持ちが解からないんです。ペトルーニャは十字架が欲しい訳じゃないのに、そういう事を理解しようとしないんです。ペトルーニャの辛い気持ちが痛いほど伝わってきました。

 

さて、ペトルーニャはどうするのかは、凄く書きたいんだけど、ネタバレは辞めます。至極真っ当な結論には落ち着くのですが、それまでの男性女性の考え方、何が間違っていて何が正しいのか、正しいだけで貫いて良いのか、そして自分の気持ちに向き合う女性の姿は、とってもイイなって思いました。

 

 

この映画、本当に面白かったので、感想が長くなっちゃった。だって、期待していなかったのに、面白かったんですもん。私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。楽しかったり、ハラハラドキドキがあったりする映画ではありませんが、性差別ってどこまで言うべきなのか、正当と常識の違いにどう納得すべきなのか、そんなことを考える映画でした。私は、とても楽しめました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ペトルーニャに祝福を」