「17歳の瞳に映る世界」を観てきました。
ストーリーは、
友達も少なく、目立たない17歳の高校生のオータムは、ある日妊娠していたことを知る。彼女の住むペンシルベニアでは未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができない。同じスーパーでアルバイトをしている親友でもある従妹のスカイラーは、オータムの異変に気付き、金を工面して、ふたりで中絶に両親の同意が必要ないニューヨークに向かう。
というお話です。
ペンシルベニア州に住むオータムは、愛想がなく、友達も少ない17歳の高校生。学校のイベントで歌を歌うのだが、男子生徒から酷い言葉を投げかけられ怯んでしまうが、それでも歌い切る。イベントの後に家族で食事に行き、母と二人の妹そして義父と共に食事をするのだが、義父はオータムをあまり好いておらず、歌を褒める言葉も言わず、母親が言ってあげてと言い、やっと褒める始末。
ある日、オータムは、気分が悪い事が多く、妊娠しているのではと考えます。そして病院に行き、診察をしてもらうと、予期せず妊娠していたことを知ります。ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることが出来ません。焦ったオータムは、流産するようにお腹を叩いたり、サプリを沢山飲んだりと、噂で聞いたような堕胎方法を試すのですが、流産する訳がありません。
一緒にスーパーで働いている、友人でいとこのスカイラーは、オータムの異変に気が付き、相談に乗り、妊娠を知ります。このままでは、中絶する時期を逃してしまうことになってしまうので、ペンシルバニア州ではなく、親の同意なしに中絶が出来るニューヨーク州へ行こうと考えます。
スーパーのお金を少し抜いてお金を工面し、二人は長距離バスに乗って、ニューヨークへ向かいます。オータムは、小さな胎児の心音を聞いて母性を感じますが、外へ出て現実を目の当たりにし、子供を育てるのは無理だと確信します。ニューヨークで中絶出来る病院を見つけ、まず、カウンセラーの診断を受けます。未成年の中絶なので、カウンセラーは優しく、その中絶理由などを聞いて行きます。
妊娠から日が経っているので、中絶に2日かかると言われ、1日目の処置をして、明日来るようにと言われて、病院を出ます。ニューヨークには知り合いもおらず、お金も底をついてしまい泊るところもありません。二人は困ってしまい・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、色々な物語を紡ぐことなく、淡々と現実を描いて行き、17歳の女性が妊娠という問題を抱えた時に、どうやって、何が出来るのかという事を描いています。普通の映画だと、17歳で妊娠しちゃったけど、相手は誰なの?無理やりなの?合意なの?などなど、色々な問題を描いて行くと思うのですが、その部分は、この映画、一切省いています。なので、本当に、主人公のオータムが、妊娠に気が付いて、中絶するまでを描いているんです。
でも、妊娠に至るまでが、全く分からない訳ではありません。オータムは、中絶をしにニューヨークへ行き、病院を見つけて、カウンセラーの診断を受けると、ニューヨークという場所柄なのか、カウンセラーの質問は適格でした。まず、自分の意志で中絶をしたいのかと聞かれ、そうですと答えます。色々な質問があり、大体が、4つの言葉で返事をするように言われます。
例えば、SEXを強要されてすることはあるのかと聞かれると、いいえ、稀に、時々、いつも、という4つの言葉で返すんです。オータムは、幾つかの質問に答え、この強要されてという質問に、”いつも”という所で涙ながらに頷きます。誰かに強要されたということで、望んでのSEXでは無かった事を示していました。
そこで考えたんですけど、映画を観ていて、オータムに関係する男性は3人、イベントで嫌がらせをした男子、スーパーの上司、そして義父なんです。どうもスーパーの上司は無いかなぁと思い、学校の男子が義父だと思うんですよね。私は、もしかしたら義父なんじゃないかなぁと思いました。だって、ニューヨークから母親に電話をする場面があるのですが、何か言いたそうだったけど、大丈夫だからと言って電話を切るんです。何かを我慢しているように見えて、これ、もしかしたらと思ったんです。
それなら母親に話せないことも解るし、誰にも相談が出来ないというのも理解出来るでしょ。それに、この義父、とても変な男なんです。イベントの後に、家でくつろぐ場面があるのですが、その時に、ワザと飼っている犬に”メス犬”と呼び掛けることがあり、その”メス犬”というのは、オータムがイベント中に男子にかけられた言葉なんです。凄い嫌がらせでしょ。何となく、黙らせようとしたように思えて、こいつ、怪しいと思いました。
それにしても、カウンセラーの診察は、結構、グッとくるものでした。この診察は、実際に行われている事に近いようなのですが、若い子が親の同意も無く、必死で病院に辿り着き、中絶をしたいというなんて、深い訳があると解っているのでしょう。ホント、17歳の子が、一人で悩んで中絶なんて、助けてあげられるならと思いますよ。日本では、どうなのかしら。
オータムには、スカイラーという友人でいとこが一緒にいてくれて、いつも守ってくれていました。スカイラーがいなければ、オータムは何も出来ずに産んでいたかもしれません。スカイラーという少女は、頭も良く、素敵な子でした。彼女なら、きっと望まない妊娠などしないのだろうと思いました。
17歳で妊娠中絶、壮絶だけど、彼女には狭い田舎町しかなく、そこから逃げ出す考えも無くて、ただ、おろおろするばかりでした。それが、現実の17歳なのだと思います。たまたま、スカイラーという頭の良いいとこが居てくれたおかげで、外に出れて、問題解決も出来たけど、普通は狭いコミュニティで、大騒ぎになるのでしょうね。そんなことが描かれていました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。ベルリン映画祭や、サンダンス映画祭で賞を貰った作品です。でも、私は、それほど、感動することはありませんでした。ワザと感動を誘うようには作っておらず、淡々と出来事を描いて行く形を取っているので、それが良いと評価されているのだと思いますが、うーん、こういう女子高生を実際に知っている場合は、それほど驚きはないんですよね。ま、でも、良い映画だったと思います。でも、驚くほどの感動は無いと思うので、あまり期待しないで観に行った方が良いと思いますよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「17歳の瞳に映る世界」