「プロミシング・ヤング・ウーマン」を観てきました。
ストーリーは、
ある事件で医大を中退したキャシーはしがないカフェの店員として働いていた。だが彼女には、泥酔したふりをして、お持ち帰りする男たちに制裁を加えるという別の一面があった。ある日、小児科医のライアンがカフェを訪れたことで、キャシーの壮絶な復讐が始まる。
というお話です。
30歳を目前にしたキャシーは、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。
ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアンがカフェを訪れる。成績優秀だったキャシーが中退し、カフェの店員であることに驚き、ライアンは彼女に対して失言をしてしまう。悪かったと思ったライアンは謝り、学生の頃から好きだったことを告白する。
突然の告白に驚くキャリーだが、男性が信じられない彼女は、嘘のメールアドレスを教えて、その場をやり過ごす。しかし、後日、またライアンがカフェに現れ、少しづつキャシーとライアンの距離は縮まっていく。
キャシーは、男への制裁を続けていたが、ライアンへの気持ちが大きくなるにつれ、これを続けるべきなのかと考え始める。そして、自分の未来をみつめ直し、新しい生活を始めようとするのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白かったです。脚本がよく出来ていたなぁと思いました。医学部で一緒だったライアンが出てきたところで、ちょっと先の展開が予想出来てしまったのですが、最後の展開は予想を上回っていて、驚きました。よく出来ていたなぁ。キャシーの凄まじい思いの強さは、そこらの男には太刀打ちできないでしょう。マジで恐かった。これこそ、キチガイじみているという感じだと思います。
でもね、観ていて、彼女の怒り、本当に解りました。これ、能力が高く、男と対等に戦おうとしたことがある女性なら、彼女の怒りは解ると思います。どんなに能力が高くても、男には性欲の道具としか思われず、直ぐに”ビッチ”とか下品な言葉で嫌がらせをされる。相手は、からかっているだけと軽くいうが、それがどんなに女性を傷つけているのか全く考えていない。酒を飲んで連れ込まれたりすれば、酒を飲んだ女性が悪いと言われる。
この映画を観ていて、男性も敵だと思ったけど、女性も敵なんですよ。女って、夫や彼氏など自分を助ける男を手に入れると、もう、その男の力が自分のモノと思って、同性を傷つけ始めるんです。自分は安全な所にいるから、一人のあんたが悪いと責め始める。夫婦別姓を唱えた法律の時も、既に夫の性に変えた女性は、自分が変えたんだから、他の人が別姓なんて許せないという考え方で反対してますよね。
勘違いも程ほどにした方が良いと思うけど、横にいる男は他の女に手を出しているかもしれないし、変態レイプ犯かもしれない。酔った女をこれ幸いとレイプしているかもしれない。そんなもんなんです。だから、明日は我が身と思って、色々な被害に遭った女性がいたら味方になるべきだし、自分の娘がされたらどうだろうかと考えるべきなんです。想像力の無い女、頭の悪い女は、マジで敵です。そんな女にも、キャシーは復讐をしていました。
この映画の本当の凄さを評価出来るのは、男ではなく女だと思います。差別とかではなく、男はこういう目に遭った事が無いでしょうから。そこら辺を歩いているだけで卑猥な言葉を投げられたり、電車に乗れば痴漢に遭ったり、酒を飲んで酔っ払えばどこかに連れ込まれそうになるなんて、男性には経験無いでしょ。別に、特別に何かをしているからされる訳ではないですよ。女性だと言うだけで、そんな目に遭うんです。それをやる方は何も気にしていないんだろうけど、やられる方は殺したいと思うほど憎むんです。男性は、それ、自覚していないんでしょうね。
そんな怒りが、このキャシーから溢れてきていました。ある場面で、車を道路の真ん中に止めていたら、後ろから来た男性運転手に、またも酷い言葉を言われ、怒りが爆発して、相手の車をジャッキハンドルのようなモノでぶち壊すんです。キャシーの真剣な顔を見て男は逃げるのですが、その場面で、キャシーが男全員に怒っているという事が解るんです。それが凄かった。もー、マジで共感出来ました。
観ていて、マジで怒りが込み上げてきました。全ての男に制裁を加えて欲しいと思ったけど、そんなに上手く行く訳が無い。キャシーだって、この社会の中で生きているのですから、そう簡単には無理なんです。もちろん、キャシーは頭の良い女性なので、それを十分に解っているからこそ、最後の結末に辿り着いたのかなと思いました。全て先を読んでいて、自分でこの結末を選んだのだと思いました。
キャシーの気持ちを考えれば考えるほど、苦しくなります。だって、誰もがキャシーと一緒なんです。今まで、何度も何度も、周りで同じような事件が起こっていて、それを声を大にして訴えても、味方になる人は少なく、口を閉ざしてしまう女性が多いんです。
日本でも、伊藤さんという女性ジャーナリストがレイプを訴えたけど、反発する声もありますよね。酒を飲んで連れ込まれて、合意だったなんて、相手はよく言えるよね。酒を飲みに行ったのが悪いという女性の声もありましたが、仕事で行っているんですよ。対等の立場で話をしていて、なんでホテルに連れ込むの?それ、どう考えてもレイプでしょ。それを裁判で争わなきゃいけない社会ってなんなの?
私の怒りは収まりませんが、それくらい、この映画は、女性の怒りを表現していました。日本でも、女性全員が、キャシーくらい怒りを露わにしたら、性犯罪も減っていくんじゃないかと思いますけど、日本の女性は、難しいかな。まだまだ日本は男性社会だし、男に依存して生きる女が多いですからね。ムカつきます。
この作品、アカデミー賞にノミネートされたけど、ノミネートだけでしたね。やっぱり、アカデミーも男性が多いから、この内容、怖かったんじゃないかな。これだけ男性に牙を剥いていると、有名になられちゃ困るんじゃないの?
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。ぜひ、女性に観ていただきたい。どうしていつも女性ばかりが被害に遭わなきゃいけないのかっていう怒りが、この映画を観ると増幅されます。もっと、女性が団結するべきだと思うんですけど。映画でも現実でも、敵は男だけではなく、女もいるというのが問題かもしれません。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」