「トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング」を観てきました。オンライン試写会(@FansVoiceJP)でも観たのですが、やっぱり大画面で観たい映画だと思いまして、再度、観てきました。
ストーリーは、
貧しいアイルランド移民の家庭に育ったネッド・ケリーは、頼りにならない父に代わって母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母は生活のために幼いネッドを山賊のハリー・パワーに売りとばし、ネッドはハリーの共犯者として10代で逮捕される。出所したネッドを横暴なオニール巡査部長、警官のフィッツパトリックらは、難癖をつけ、家族ともども投獄しようする。家族や仲間への理不尽な扱いに、ネッドは弟らや仲間たちとともに「ケリー・ギャング」として立ち上がる。
というお話です。
19世紀、オーストラリア。貧しいアイルランド移民の家庭に育ったネッド・ケリー。頼りにならない父の代わりに、幼い頃から、母と6人の姉弟妹を支えてきた。母親は子供を守る為と言いながら、男に身体を売って金を得ていたが、どちらかというと利己的な人間のようだった。ある日、食料を手に入れられなかった父に代わり、ネッドが家畜を盗んでくる。しかし家畜を盗むのは重罪で、ネッドの代わりに父親が逮捕されてしまう。しばらくして父親は亡くなり、山賊のハリー・パワーという男が、母親の情夫となる。
ネッドは、ハリー・パワーに少額の金で母親に売られ、彼の下で強盗
などを手伝わされることになってしまう。嫌がりながらも彼と行動を共にしていたが、ある時、ハリーが警察に逮捕されてしまう。ネッドは、ハリーの共犯として10代にして逮捕・投獄されることに。
何年か後に出所したネッドは、母親の元に帰らず、格闘などで金を稼ぎ友人と放浪していたが、娼館で暮らすメアリーと恋に落ちて、実家に帰ることにする。娼館で知り合った警官のフィッツパトリックは、ネッドの事を気に入り、何かと関わってくるが、ネッドは相手にしない。
しかし、権力者の貧しい者への横暴や、警官の酷い仕打ち、そして何より、ネッドの家族や仲間への仕打ちに耐えかねたネッドは、とうとう警官のフィッツパトリックに手を出してしまう。警官を撃ったネッドはお尋ね者となり、兄妹、仲間と共に逃げて”ケリー・ギャング”という名前で立ち上がり、社会への反乱を始める。そして、ネッドたちの代わりに逮捕投獄されてしまった母親の奪還を計画する。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、オンライン試写会で観たのですが、オーストラリア壮大な荒地や、美しい引きの映像が多く、これは大画面で観たいなぁと思いまして、映画館で、再度、観てきました。
オーストラリアで有名な盗賊なのですが、彼が襲うのは権力者や警察など力を持った人々のみで、銀行などから盗んだ金は貧しい人々に分け与えたり、債券などを燃やしたりなど、義賊的な部分が大きかったために、人々から英雄と崇められ、「ケリーのように勇敢に」という言葉は、オーストラリアでは有名な表現だそうです。この映画は、そんなネッドによって、自伝が書かれていたらという想定の元、ストーリーが展開していきます。
オーストラリアで、貧しいアイルランド系の移民として生まれたネッドは、その国の底辺の人間として虐げられて育ちます。イギリスの犯罪者の流刑地となっていたオーストラリアでは、その時代、ゴールドラッシュで急速に植民地としての経済社会が整って行き、支配層と労働者の差が極端に大きくなっていったようです。そんな時代に、流刑された犯罪者の血をひくとされるネッドは、最下層の労働者として暮らしており、貧しく、仕事も無くという感じでした。いつも警察に監視されており、母親は身を売って生計を立てていました。
そんな家庭に生まれながらも、正義感を強く持っていたネッド。でも、成長するにつれ、悪に手を染めて行きます。というか、悪い事をしなければ生きて行けなかったのだと思いました。食べるものなんて何も無く、どこかの家畜を盗むしかなかったんです。豊かな土地なら、農業を営んだりとか出来たのでしょうが、酷く荒れた土地で、何も育たなそうでしたから。
ネッドにも、もしかしたら良い方向にというチャンスがあったんです。ある日、ネッドが川で溺れた少年を助けてあげたら、その少年はお金持ちの息子で、その母親が、お金を出すから寄宿学校に入れてみないかと話をしてくれます。もし、その時に教育を受けていられたら、もしかして、下層からの反乱ではなく、支配層からの改革が出来たかもしれないのに、利己的な母親のせいで、そのチャンスも潰されて、早死にをすることになってしまったと思いました。
このネッドの母親ですが、子供の為と言いながら、酷い母親だったと思います。子供の為を思ったら良い教育を受けさせるべきだし、息子と離れたくないから寄宿学校に入れないと言いながら、その後、強盗ハリーに15ポンドかなんかでネッドを売り飛ばすんですよ。信じられませんでした。勉強の為だと言ったけど、強盗に勉強って、あり得ないでしょ。こんな酷い母親に育てられていながら、弱い者は助けなければという考えを持っていたのは素晴らしいと思いました。頭の良い人物だったのだと思います。
この時代に、防弾チョッキなる鋼鉄の鎧を着けて戦ったという歴史があって、その写真がネットに出ていましたが、本当に映画に出てきたような、鉄板を筒にして被ったようなものでした。凄いですよね。確かに西洋の歴史に甲冑というのはありましたが、銃を想定していた訳ではないので、このネッドの防弾チョッキが初めてなんじゃないかしら。面白いなぁと思いました。戦い方を、よく考えていたと思います。
この映画、色の使い方が面白いんです。モノクロではないのですが、褪せたような色合いを全体に使っていて、時々、ビビットな赤とか緑を、印象的に使うんです。その色が付いたものは、その後のネッドの生き方に関わってくるモノであったりして、よく考えられているなぁと思いました。
最初に出てきた印象的な赤は、父親が着ていたとされるドレスです。何故男性がドレスを着て馬に乗っていたのか、その謎は、後々になって解かってくるのですが、ネッドは男がドレスを着て身体を売っていたと警察に嘘を教えられ、父親を軽蔑するんです。でも、その意味は全く違っていて、それがネッドの反乱の原動力となって行くんです。上手いなぁと思いました。
そして、映画ならではの、引いて行く映像です。遠くに敵が見えたり、ネッドが小さくなっていったり、広い世界にいる事を実感させて、引くことによって、もっと他の見方があったのかもしれないという思いにもさせてくれる映像で、感動的でした。だって、ネッドは英雄とされているけど、支配層から見たら犯罪者でしょ。それに、もしかしたら支配層の仲間入りをしていたかもしれないチャンスもあったんです。色々な運命が彼を作ってしまったという事が、よく理解出来ました。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。本当は超を2個付けたい位です。私は、好きな映画なのですが、これは観る人を選ぶと思いました。歴史ものですし、こういう人物や歴史に興味が無いと、あまり面白いとは思えないかもしれません。ちょっとマニア向けっぽい作品だと思いました。映像や、構成など、一般的な映画として観てしまうと、そんなに魅力的ではないかもしれませんが、ちょっとマニアっぽく観ると、見どころが沢山ある映画でした。面白かったです。上映館が少ないのが問題ですね。勿体ないと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S : ケリー・ギャングの映画は、2004年にヒース・レジャーとオーランド・ブルームで作られています。そちらも良いかもしれません。私はまだ観ていないので、何とも言えませんけど。
「トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング」