「Arc アーク」SF短編小説を映画化。不思議な感覚を味わえると共に”生死”とは、と考えます。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「Arc アーク」のFan's Voiceさん (@FansVoiceJP) の独占試写会に行ってきました。

 

ストーリーは、

遠くない未来。生まれたばかりの息子と別れ、放浪生活を送っていたリナは、やがて師となるエマと出会う。リナは大手化粧品会社で、最愛の人を亡くした人のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術する「ボディワークス」という仕事に就く。一方、エマの弟で天才科学者の天音は、姉と対立しながら、ボディワークスの技術を発展させた不老不死の研究を進めていた。30歳になったリナは天音とともに、不老不死の処置を受け、人類史上初の永遠の命を得た女性となった。やがて、不老不死が当たり前となった世界は、人類を二分化し、混乱と変化をもたらしていく。

というお話です。

 

 

舞台はそう遠くない未来。
17歳で人生に自由を求め、生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送っていたリナ。19歳で、バーのダンサーとして働いていたが、態度が悪くてクビになってしまう。たまたまバーに来ていた黒田永真は、そんなリナに「興味があったらここに来なさい。」とエターニティ社の自分の名刺を渡す。

行くところもなかったリナは、エターニティ社を訪ね、エマが行っている<ボディーワークス>という仕事に興味を持つ。それは、それは最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事であった。その会社で等角を表したリナは、エマの後を引き継ぎ、仕事をしていく。



 

エマの弟・天音は天才的頭脳を持っており、姉の技術を発展させ、遂にストップエイジングによる「不老不死」を完成させる。DNA末端部のテロメアを操作することにより老化が止まるのだった。リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになる。

50歳のなっても見た目は変わらず、健康な生活を続けるリナ。世界は不老不死の開発により、永遠の命を手に入れる者と、死を受け入れる者とに二分されることとなる。リナと彼女の夫となった天音は、死を受け入れる人々の末期を看取る施設を、ある島に作るのだが・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、面白かったです。アメリカのSF作家、ケン・リュウさんの短編小説を映画化したものです。私は、まだ原作を読み終わっていませんが、映画を先に観てしまいました。

 

映画は、2部に分かれていると思って観た方が良いかと思います。第一部は、まず、ボディーワークス編かな。遺体を生きていた時の姿のまま保存できるようにプラスティネーション(施術)するという行為を、リナが始めるというものです。人間の剥製というと簡単なんだけど、内臓を抜いたりするのではなく、人間の身体に樹脂を浸透させていき、固めるという感じかしら。

 

 

私、以前に「人体の不思議展」で見たのですが、人間の身体に樹脂を浸透させて、輪切りにして展示してあったんです。衝撃的でしたが、あれを見てから、人間の身体は、そのまま保存出来るんだなって思いました。それと同じような感じです。

 

故人(ペットなども。)を生きたままの形で残して、愛おしむという行為が流行り、リナはエターニティ社のエマの元で勉強をしていきます。そして、エマの後を継ぐほどの実力を持つのですが、エマの弟が現れ、ボディーワークスはもう要らない。今度は”死”の時点で止めるのではなく、”生”のまま止めることになるんだ、と言うんです。

 

この不老不死編が第二部です。不老不死のメカニズムを天音が開発し、リナに最初に施術します。リナは年を取らず、死ぬことも無くなります。DNAの端部にあるテロメアに改変を加えることにより、DNAが活性化され、細胞が死なないということなんです。

 

 

リナは死ぬことは無くなり、天音の求婚を受け入れて結婚します。永遠の日々が始まった頃、エマが言っていた「死は生の先にあるのではなく、生の中にある。」という言葉を思い出し、考え始めます。確かに、死って、生きている中にあるものですよね。生きながら死に向かっている訳だし、死を感じるのは生きているからこそなんですから。

 

そして天音は、不老不死を人々に与えたけれど、反対に不老不死を受け入れなかった人々を最後まで看取るための施設も作ります。やはり対局にある人々も看るべきだと思ったのかもしれません。誰も死ななくなった世界で、老いること、死ぬことを選ぶ人々。これ、究極の選択ですよね。私も、これ、悩むだろうなぁ。だって、永遠に生きていたって、やる事は変わらないだろうし、それを永遠に続けて行くなんて、退屈で死にそうです。(笑)

 

 

日本では、綺麗な花は散るからこそ美しいと言うでしょ。私も、その感覚なんですよね。命って山のようで、段々と輝きを増して、一番頂点に行った時に一番輝いていて、そこから今度は下っていくからこそ、一番輝いていた部分が美しいと思えるんだと思うんです。ずーっと同じ顔で美しいなら、人形でイイですもん。

 

もし、不老不死が出来るようになったら、人体改造も進むんでしょうね。弱い身体なら強く、醜い容姿なら美しく、人間の欲求はどんどん進み、もう、人間という形成から変わっていってしまうかもしれません。情報社会も進むでしょうから、誰も会社に通うことなく、自宅に籠っているだけで生活が出来るなら、もう、身体なんてスライムでイイじゃんっていう考えになってしまう。(笑) ”転生してスライムになった”とかいうアニメかライトノベルズがあったような気がしますが、考えれば考えるほど、怖くなっていってしまいます。

 

 

芳根さん、綺麗でした。最初は17歳の少女なんだけど、35歳くらいで不老不死になるんだったかな。見た目は変わらなくても、ちゃんと年を取っているように見える演技をされていて、良かったです。話し方の抑揚とか、早さとかが違うのかな。ちゃんと年を取って見えました。

 

そして、リナの才能を見抜くエマを寺島さんが演じていて、カッコ良かったです。寺島さん、本当に好きなんです。どんな役でも出来てしまう、恐ろしい女優さんです。こういう方がいてくださるから、それを見て育つ若手が増えるんです。嬉しいです。天音を岡田さんが演じていて、岡田さんも、味が出てきて良くなりました。やっぱり舞台で鍛えられただけの事はありますね。今、ノリにのっているんじゃないかな。他にも、良い役者さんが沢山出ているのですが、説明しちゃうとネタバレになるので、書きませんね。重要な役の方が沢山出てきます。

 

 

年を取らないって、自分が若いまま追い越されていくって事なんですよね。なんだか、不思議な感覚を味わえる映画でした。だって、自分の子供が成長してきて、そこで不老不死になるから、同い年くらいでずーと生活を続けて行く事になるんです。うーん、なんかちょっと変な感じです。

 

この題名「アーク・円弧」なのですが、これが「サークル・円」じゃないのはどういうことなのかという事が、映画を観て解ると思います。どんなに不老不死になっても、人生は元に戻るのではなく、年月は重ねて行くので、螺旋状になっていくのだと思うんです。どんどん連なって、円弧が続いて行くのかなと思いました。それを永遠に続けるのか、途中で切ってしまうのか、それは、人それぞれだと思いました。私は、永遠に螺旋状の人生を生きるのは、退屈だし疲れそうだなって思いました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。私、こういうSFのお話、大好きなんです。私の好きな”レイ・ブラッドベリ”も短編集が良いのですが、このケン・リュウさんも、不思議な雰囲気のあるSF小説で、短編が面白いみたいです。まだ「円弧・アーク」まで読んでいませんが、他の短編は素敵な雰囲気でした。ただ、SFがあまり好きでないと、ちょっと敬遠する部分があるかもしれませんが、とても解りやすく描かれているので、大丈夫だと思いますよ。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「Arc アーク」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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