「茜色に焼かれる」社会問題を盛り込んだ作品で、観ているこちらも夕焼けに焼かれそうでした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「茜色に焼かれる」の最速試写会に行って、観てきました。Fan's Voiceさん( @fansvoicejp)の独占試写会で人数も限られていたので、緊急事態宣言中ながら、恐々行ってきました。会場などは心配ないのですが、行くまでの交通機関が恐いんですよね。でも、こんな中で、皆さん毎日通勤されているんでしょ。やっぱり会社も考えた方が良いんじゃないのかなぁ。電車の中では、ほとんど誰も喋りませんが、それでも混んでいますからね。本当にお互いに気を付けましょう。

「茜色に焼かれる」は、石井裕也監督作品です。

 

ストーリーは、

7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母と子。母の田中良子はかつて演劇に傾倒していたことがあり、芝居が得意だった。ひとりで中学生の息子・純平を育て、夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒もみている。コロナ禍により経営していたカフェが破綻し、花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめにあっている。そんな彼女たちが最後まで絶対に手放さないものがあった。

というお話です。

 

 

田中良子と息子の純平。良子の夫・陽一は、7年前、老人が運転する車にはねられ死亡してしまった。老人はアルツハイマーだったらしく、逮捕もされずに終わってしまい、今年天寿を全うした。老人は元官僚で豪華な葬式を開き、その葬式に良子は参列しに行くが、親族に嫌がらせは止めて欲しいと追い返されてしまう。被害者家族が加害者の葬式に行くのは誰が考えてもおかしい。

相手方の弁護士に呼び出され、二度と嫌がらせは止めて欲しいと言われ、賠償金を受け取らなかったのは、あなたがそう望んだからでしょと誓約書も見せられてしまう。そう、良子は夫の賠償金を受け取らなかったのだ。



 

息子の純平にもおかしいと言われたが、良子は納得していない様子。彼女は昔演劇に傾倒しており、芝居が上手なので、息子にも”あれは芝居だ。”と言って誤魔化すことが多い。今回も何となくはぐらかして終わらせてしまう。

良子は、中学生の息子・純平をひとりで育て、施設に入院している義父の面倒もみて、他にも、何故そこまでやるのかというほど、誠実に生きてきた。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。

社会的弱者、一般的に言えば良子はそうなるのだろう。しかし、それがなんだというのだ。良子はどんなに打ちのめされても、最後まで絶対に手放さないものがある。それが彼女を前に進ませるのだ。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、観ていて、私も文句を言いたくなりました。純平もずっと”お母さんはどうして怒らないの?”というのですが、私もどうして良子は怒らないの?と言いたくなりました。良き人であることは良いけど、人間、良い人だけでは生きられないんです。時には怒り、時には泣き、周りに何と思われようと関係無いくらい荒れても良いんです。人間関係なんて、どーせ薄いんですから。こんなに抑えていたら、自分が壊れちゃいますよ。

 

抑えて抑えて、周りに気を使い、間違った事はしないように生きているつもりなのですが、もちろんそんな事では生きて行けません。夫の賠償金も受け取っていないので、経済的にはとても大変です。なので、風俗でも働いているのですが、自分は汚い事はしていないと言い張るんです。でもね、息子は母親が風俗で働いている事でいじめを受けるんです。確かに風俗だってちゃんとした仕事だし、悪い事ではないけど、一般的な人から見ると、やっぱりあまりキレイな事ではないと思われていて、子供たちは、それをストレートに表現してしまう。難しいですよね。

 

 

母子家庭で、経済的に苦しく、社会的弱者と呼ばれる母子だけど、良ーく見ていると、これ、賠償金を貰って、夫の関係者は夫が亡くなったのだから切り捨てて、息子と二人で補助金を貰って生きて行けば、それ程辛くないんですよ。その上、風俗で働けば、結構、裕福な家庭になるハズなんだけど、それは絶対にやりたくないんです。それが、良子のプライドであり、こだわりなんです。

 

何故賠償金を受け取らないのかというのは、映画を観て確認して欲しいのですが、確かに良子の言っている事は間違っていないし、私なら、相手の家に押し入って、頭を掴んで床に押し付けていると思う。お金じゃないんですよ。この部分は、池袋の暴走母子死亡事故の事を描いていると思うけど、どう考えても、いつまでも車が悪いと言っているんじゃなくて、まず、被害者に公の場で頭を下げるべきでしょ。それに、こんな老人に車を運転させた家族が一緒に謝罪すべきですよね。私が加害者家族だったなら、父親を無理やりにでも被害者の前に連れて行って頭を下げさせるけどなぁ。アルツハイマーだろうがなんだろうが、悪い事をしたなら謝るのは当たり前じゃないの?自分たちは何様だと思っているの?

 

 

最近、日本も大陸思想が増えてきたのか、本当に謝らない人が増えてきましたよね。どう考えても、悪い事をしているのに、”あー、そうかもしれませんね。”なんて言って、誤魔化して謝らないの。そういう人間って、もう付き合いたくないですよ。悪い事をしたら”ごめんなさい”と謝るって、幼稚園で教わったでしょ。常識です。外国の方って、謝ったら負けだと思っているのか謝らない人が多いけどね。でも、謝るのって、人間の基本だよ。

 

息子の純平は、とっても純粋でバカ正直というか可愛いんです。良子の風俗店の友達のケイちゃんに憧れて、彼女の電話番号のメモでオナニーしている姿は、もー、可愛くてギューってしたくなりました。だって、電話番号の文字だけですよ。面白いでしょ。こんな子が息子だったら、絶対に守ろうと思うだろうなぁ。

 

 

死んじゃった夫の陽一は、段々と解ってくるのですが、結構、クズと言っていいような男だったんじゃないかな。最初は、良さそうな夫だったのかなと思ったけど、実は死んじゃって良かったのかもなんて思ったりしました。やっぱり、ちゃんと賠償金は貰うべきだよ。相手にムカついたとしても、それは貰おうよ、息子の為だし、貰ってよいお金だと思うよ。

 

今の社会の問題を一身に背負った女性・良子の叫びのようなものが描かれていて、こちらまで、一緒に焼かれるほどでした。社会にはルールがあって、もちろん誰もが守るべきだけど、時々は、緩める部分があってもいいと私は思っています。人の物を盗んだり、人を傷つけたりは良くないと思うけど、生きる為には、何事も良い塩梅があって、”遊び”が必要なんです。そういう余裕が無くなったら、社会は崩れてしまうと思いますよ。

 

廃棄する花はどこかに寄付すれば良いし、コンビニとかの弁当は廃棄するなら食べるのに困っている人に分けてもイイじゃないですか。食中毒おこしても責任は取れないという約束であげれば良いでしょ。それに1~2時間消費期限が切れても大丈夫でしょ。貰う方だって、そんな事は解って貰う訳でしょ。いいじゃないですか、それくらい。

 

 

風俗を見下しているガキは、親がそういう態度をしているからそうなるんです。あのね、日本は風俗があるからレイプが少ないの。それでも事件が起こるんだから性欲って凄いよね。海外と比べてみれば解ると思いますよ。風俗の彼女たちが頑張ってくれているから、女性が守られている部分もあるんです。あまり表立っていうのは恥ずかしいとは思うけど、現実を見ることも大切だと思いますよ。綺麗事だけでは世界は動かないんです。だから私は風俗の女性は胸を張って良いと思うよ。女性を助けているんだから。

 

いやぁ、もう、社会問題が目一杯詰め込まれていて、感想を書いていたら、一晩かかってしまいそうな程の内容の映画でした。風俗店のケイちゃんや、かっこいいラスボスの店長、実は味方かもしれない弁護士などなど、もっと書きたい人物が沢山いるんだけど、終わらなくなるからやめます。でも、永瀬さんが風俗店店長を演じているんだけど、カッコ良かったなぁ。彼のおかげで、映画がビシッと締まって、まとまったと思いました。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。これは面白いというか、凄い社会問題を盛り込んだ映画で、とても考えさせられます。石井監督、これ、撮っていてしんどくならなかったのかしら。心が抉られるようでしたよ。尾野さんが上手いのもあるんだろうけど。うーん、良かったです。ぜひ、観に行ってみて下さい。5/21に公開予定です。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「茜色に焼かれる」