「大綱引の恋」大綱引を軸に幾つもの人間模様を描きます。良い作品でした。地域活性化に繋がりそう。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「大綱引の恋」を観てきました。

 

ストーリーは、

35歳独身の有馬武志は、鳶の親方で大綱引の師匠でもある父の寛志から、早くしっかりとした跡継ぎになれとうるさく言われていた。ある日、ふとした事件から韓国人研修医ジヒョンと出会い、次第に心を通わせるようになる。その頃有馬家では、母の文子が定年退職を宣言し、家事を放棄したため、家族たちが頭を悩ませていた。年に一度の一大行事である大綱引が迫る中、武志はジヒョンから2週間後に帰国すると告げられる。

というお話です。

 

 

有馬武志は鳶職・有馬組の三代目だが、35歳にしてまだ独身。鳶の親方でもあり、“大綱引”の師匠でもある父親寛志から常々「早う嫁を貰うて、しっかりとした跡継ぎになれ。」と、うるさく言われている。仕事柄女性とめぐり合う機会が少ない上に奥手の武志には、交際している女性などいる訳もない。

同じ頃、武志の幼馴染・典子が実家に戻ってくる。自衛隊に所属し、結婚して子供もいる典子は、実は離婚をして娘と二人で近くの官舎に移ってきたのだ。典子の父親も”大綱引”の三役を務めた人であり、有馬家とは家族付き合いをしていた。

ある日、消防団員でもある武志が、川内駅のコンコースですれ違いざまに倒れた老人の救命措置をしているところに、甑島の診療所に勤務する韓国人女性研修医のヨ・ジヒョンが通りかかり、老人の命は救われる。



 

お互いに名前を名乗ることもなく別れた二人だが、後日韓国からの訪問団の通訳のボランティアで、偶然にも再会することに。大学で学んだ韓国語を得意とする武志は、ほどなくジヒョンと心を通わせるようになる。

年に一度、秋分の日の前夜に催される“大綱引”が近づき、その三役という大役を頼まれる事はその地域の男にとって重大な事だ。その決定の日、武志は自分が選ばれるか不安で逃げ出しジヒョンに逢いに行く。お互いの気持ちに気が付き始めた二人は付き合うように。

父親は国の違いにあまり良い顔をしていないようだが、突然に母親が主婦定年を言い出し家事を一切しなくなった為、そんな事を考える余裕も無くなってしまう。武志は”大綱引”も近いし、家事も仕事もジヒョンとの恋も、何とか誠実にこなしていたが、ある日、キッチンで母親が飲んでいる薬を見つけて・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

題名が、地域活性化映画っぽかったので、あまり期待をしていなかったのですが、この映画、面白かったです。ちょっと内容を膨らませすぎて、キャラクターも多すぎて、全体的な回収が出来ないで終ってしまいましたが、主人公の生きる道のようなものは描き切れていたと思いますし、詰め込み過ぎた内容も、観る方が想像してあげれば、それなりに結末が着くので良い作品だったと思いました。

 

まず、この映画の中心は”大綱引”という行事です。この行事は、文字通り綱引き大会なのですが、普通の綱引きとは違います。綱引きなので、上方と下方の2つに分かれて引き合いますが、3000人が引き合うのと同時に、引く人達を邪魔する為に綱の境で”押し隊”という人達がぶつかり合い、相手陣地に攻め込むんです。押し隊が強ければ、引き隊との間に距離が出来て引きやすいのですが、押し隊が弱ければ、引き隊とぶつかってワチャワチャしちゃって、引けなくなるという事らしいです。私も映画で観ただけなので、それくらいしか判りませんでした。あとね、輪っかになった部分をどこかに引っ掛けるとか、外すとか言ってたけど、そこは私には理解が出来ませんでした。その辺りは、もう少し説明して欲しかったかな。

 

 

で、この大綱引で、チームの監督という位置付けが”三役”という人達で、一番太鼓が総監督、大将が引き隊の監督、押大将が押し隊の監督という感じなのかな。武志は、父親が一番太鼓をやった人物なので、周りから一番太鼓をやれと期待されているんですけど、その自信がないんです。早稲田大学に行くために実家を出て、東京で働くと言っていたのですが、リーマンショックで会社が潰れて、故郷に帰ってきたという過去を持ちます。

 

他にも、人物が沢山出てきて、その背景も描かれるので、本筋にどう関わってくるのかしらと思いながら観ていたのですが、結局、周りの人々の話は回収されないんです。武志の妹、妹の彼氏で下方の一番太鼓の男、武志の幼馴染の典子、武志の同僚の吉留と家族、などなど、気になる人物が多数いるのですが、色々な出来事がありつつも、そのままスルーされてしまうので、あの人はその後どうなったの?とか、悪い噂があるって言ってたけど本当はどうなの?とか、頭の中にもやもや残ったままです。きっと幸せなんだろうなぁとか、本当は良い人なんだろうなぁとか、そう思えばよいとは思うけど、でも、もしかしたら本当は悪い奴かもしれないでしょ!やっぱり気になるわよね。

 

 

大綱引という行事が中心だけど、武志とジヒョンの恋が大筋なのかな。でも、映画を観ると、二人の国の違いで交際が問題になるという事は、ほとんど描かれていませんでした。今時、国際結婚なんて普通だし、ダメなら離婚すれば良いという時代でしょ。だから、最初のイメージとは変えたのかもしれません。お父さんもほとんど反対はしていませんでした。現代に合わせていて、良かったと思います。国籍が違うから結婚を反対されるなんて、今のご時世ではほとんど考えられないと思います。家族の不安はあると思うけどね。

 

気になっていたのが、武志の妹・敦子が下方の福元と付き合っていて、敦子は上方なので、ちょっとロミジュリ的になっていて、関係無い部分で盛り上がるなぁ~と思ったのですが、そちらもそのままスルーでした。その後、上手く行ったのだと思うけど、もしかしたら敦子が捨てられるとか、福元が悪い奴で追われるとか、そんな事は無いよね。変な映画を観すぎているので、ついつい、先を考えて楽しんでしまう私でした。

 

 

典子は、設定で正義感が強くて、いつも武志を助けてくれる姉御的な女性で、本当は三役をやりたかったとなっています。伝統では三役は男性しかなれないとなっているので、まだまだ男女同権とは言えないねという考えと、伝統にはそれなりの理由があるから変えられないという考えの対立も描いて欲しかったな。

 

日本には、まだまだ、女性が入れない場所などがあって、文句をいう人もいるけど、きっとそれなりの理由があってそうなっている事もあると思うんです。例えば、女性の神様だから女性が来ると怒るとか。でも、そうなるとLGBTの問題で女性だからって女性が嫌いとは限らないと言われてしまうでしょ。難しい問題ですよね。私は、伝統というのは、性別云々ではなく、それなりの理由があったから決められたのだろうし、今、それを無理に変える必要は無いと思うんです。天皇制だって、男系というのは、もしかしたら近親相姦を心配して、全く関係無い血をこっそり入れて、産むのは女性だから解からないだろうという想定でしていたのかもしれない。色々な理由があるのかもしれません。そんなに問題が無ければ、今のまま、変える必要は無いのかなと思いました。

 

 

そんなことを、色々と考えさせてくれる映画でした。面白かったですよ。三浦さんも、朴訥な感じがとても良かったです。彼は食べ方が良いですね。鳶という設定なので荒っぽい食べ方をしていましたが、育ちが良いからどんなにしても食べ方が綺麗です。食べ方が綺麗な人って好きなんです。演技も上手いですよね。知英さんも良かったですよ。最近、あまり見ないですが、韓国で頑張られているのかな。

 

佐々部監督が突然に亡くなられて、本当に残念です。監督の作品は、心に響く作品が多く、「夕凪の街 桜の国」「八重子のハミング」など、良い作品が多かったです。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

私は、この作品、超!お薦めしたいと思います。ちょっと題名で遠慮してしまう若い方もいらっしゃるかもしれませんが、良い映画です。若い人も楽しめるように作られています。それに九州の川内市の観光案内的になっていて楽しめますよ。最初、センダイって言っているから仙台かと思ったら、九州の川内(センダイ)市なんですね。頭の中の地図がぐるぐるしちゃいました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「大綱引の恋」