「やすらぎの森」をオンライン試写会で観ました。coco(@coco_official)さんのサイトで当選しました。
ストーリーは、
カナダ・ケベック州、人里離れた深い森にある湖のほとり。その場所にたたずむ小屋で、それぞれの理由で世捨て人となった年老いた3人の男性が静かな暮らしを営んでいた。そんな彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。80歳の女性は、少女時代の不当な措置により精神科療養所に入れられ、60年以上も隔絶した生活を強いられていた。世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードは新たな名前で第二の人生を踏み出した。しかし、そんな森の日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られるようになる。
というお話です。
カナダ・ケベック州、人里離れた深い森。湖のほとりにたたずむ小屋で、年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを営んでいた。それぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となった彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。
その80歳の女性ジェルトルードは、16歳の時にに不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていたのだった。彼女は、森近くのホテルの管理人スティーブの叔母にあたり、スティーブの父であり彼女の弟の葬式の為にスティーブが療養所から連れ出したのだった。
葬式も終り、療養所に送っていくのだが、ジェルトルードは帰りたくないと言い出し、スティーブも彼女の不幸を理解して、管理をするホテルに連れ帰った。しかし、ホテルで匿ったのでは警察に連れ戻されてしまう。スティーブは仕方なく、森で暮らす老人たちを頼ったのだった。
世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードは、マリー・デネージュという新たな名前で新たな人生を踏み出し、澄みきった空気を吸い込みながら、日に日に活力を取り戻していく。
ホテルに戻ったスティーブは、美術館の依頼で昔にこの辺りであった大火事の生存者を探しているというラフという女性と出会う。森の住人の事は黙っておきたかったが、結局、スティーブと一緒に老人の所に行くようになる。
その穏やかで温かな森の日常が続いていたが、ある日、日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていくのだった。後は、映画を観てくださいね。
この映画、邦題が「やすらぎの森」で、以前、テレビ朝日の昼ドラで「やすらぎの刻」っていうのがあったでしょ。どーも、それと混同してしまい、あまり興味が無かったんです。でも、試写の記事を読んだら、カナダの森で世捨て人として暮らす老人のお話とあって、洋画なんだと解かり、興味を持ちました。邦題をもう少し考えてくれれば興味が持てたんだけど、似通った題名は二番煎じくらいに思ってしまって、私でさえそうなのだから、若い人は興味が薄れちゃいますよ。
そんな状態で観始めた映画ですが、これが素晴らしい内容で、私は感動でした。色々、考えさせられて、最後まで観て、また最初から二度観してしまいました。考えれば考えるほど、奥深い作品だと思います。
まず最初に、美術館が、その昔にカナダ・ケベック州で起きた森林火災の被害に遭った人々の痕跡を集めているということ。家族全員が焼け死んでしまったりして、誰も、その記憶を残していないことを憂いてなのか、美術館が記録をしているんです。こういう事って、大切だよなぁと思って。日本だって、震災後、家族全員が誰も居なかったりしたら、誰が記憶を残しているのか、とても心配になりました。誰かが、こんな方々がいたという記録を残しておかないと、やっぱり寂しいと思うんです。そういう事って、大切でしょ。それをカナダでは美術館がやっていて、写真家のラフが協力をしているんです。
そして、ラフが記録を頼りに訪ねて行くと、森林に老人が暮らしているんです。彼らの中には、森林火災で心に傷を負った老人も居て、時間が経っても、どうしてもその傷は癒えず、苦しんでいるんです。その苦しみを絵にぶつけている人物がいました。言葉で吐き出せない分を、絵に吐き出していたんです。それが強烈でした。目の前で家族が焼け死に、彼はどうしても日常に戻ることが出来なかったんです。心の傷は時間が癒してくれるというけど、それが当てはまらないほど酷い傷もあると言う事です。辛いなぁと思いました。
他の老人にも色々な過去があるのですが、まぁ、それは映画の中で色々考えて欲しいです。それぞれに理由があって、彼らは世捨て人になったんです。ホームレスという言葉でみんな一緒にされてしまうけど、それぞれが考えた末に世捨て人として生きている。それを否定する権利は誰にもないんだよなぁと思いました。
そんな世捨て人の前に現れるジェルトルード。この女性のお話は、本当に酷いし、現代も考えなければいけない事だと思いました。ジェルトルードは、16歳の頃に、厳格な父親に精神病扱いされて、療養所に入れられ、60年以上も隔離されたままだったんです。
彼女は、一般の人と変わらず、精神障害もありません。ただ空想がちな娘で、霊と話したとか、ファンタジー系の事を思い描いていただけなんです。とても勘の鋭い娘で、それを口に出してしまったから、厳格な父親がおかしい娘だと思って療養所に入れたんです。こんな事で病院に隔離とか言っていたら、私だって、TVに出ている占い師だって、入れられちゃいますよ。そういう時代だったのかもしれませんが、家族が違うからと言えれば、病院から出れたと思うんです。それなのに、誰もしなかった。酷い話しでしょ。
病院内での話しもジェルトルードが話すのですが、彼女は若くて美人だったので、病院内で病院職員や患者の恰好の獲物であり、レイプなど日常茶飯事だったようです。それで妊娠もしたらしく、酷い話しでした。現代でも、時々、障がい者の方が職員に性的虐待を受けているというニュースを聞きますが、本当にそういう施設では気を使って、国も査察に入って欲しいんです。そして、もしかしたら隔離なんて必要のない人もいるかもしれない。精神の病気は確実な事ではないと思いますので、一人の医者の考えだけで決めないで欲しい。ジェルトルードのお話は、とても考えさせられました。時代がそうでも、家族ならもう少し本人を見てあげるべきですよね。対話が無いというのは、おかしいです。
そんな深い内容を内包した映画で、こんな問題を抱えた人々が、世捨て人として、このカナダの森で暮らしているんです。そしてそこに人が住んでいるだろうと知ってはいても、誰も、それを咎めようとしない空気は素敵だなと思いました。何か起きると、警察が来て、彼らを追い出すようでしたけど。特に、この森では、昔、大きな森林火災があり、危険なこともあるので、老人たちも周りの人々も、何も問題が無ければ、静かに見なかったことにしているようでした。でも、映画なので、問題が起きてきちゃうんですよねえ。
映画の始まりで、一人の老人が森で亡くなります。その人も世捨て人で、持病を持っているようでした。彼らは、もし、自分の命が尽きそうになっていたら、自分から死ねるように、”ある瓶”を持っているんです。中身は何かなぁ。私は青酸カリかなと思ったんだけど、周りに迷惑をかけないよう、自分で静かに逝く事を選べるようにしているようでした。それも、ある意味、潔い生き方というか、死に方というか、自分の命に自分で責任を持つというのは、私は素晴らしいと思いました。自殺は良くないというけど、人に迷惑をかけて、苦しんで死ぬくらいなら、自分から死にたいと思うのは自然ではないでしょうか。出来れば自殺はしない方が良いかもしれないけど、自分で決着をつけることを、私は反対しません。自殺肯定派です。
そんな場面から始まる映画ですが、とても深い映画でした。「やすらぎの森」という邦題からは想像が出来ないほど、奥深く、素晴らしい内容の映画でした。これ、若い人にも老人にも観て欲しいです。命の意味や、生きる事の意味を、遠回しながら描いていて、それは感動を与えるものでした。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。昨日の映画とは違い、素晴らしい感動作でした。知っている俳優さんはいませんでしたが、ジェルトルード役の方は、ケベックのドヌーブと呼ばれる女優さんだそうです。確かに美しい方でした。大自然の美しい映像の中で営まれる人々の生き様は、長い年月を生きてきた彼らだからこそ表現出来るものなのかなと思いました。あー、もう一度、観ちゃおうかな。これで邦題がもう少し違ったら、もっと良かったのになぁ~。ぜひ、観に行ってみてください。5/21に公開予定です。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「やすらぎの森」