「僕が跳びはねる理由」を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので、内容は、
世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して、自閉症と呼ばれる彼らの世界が、普通と言われる人たちとどのように異なって映っているのかを明らかにしていく。そして、自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるかを、映像や音響を駆使して再現。彼らが見て、感じている世界を疑似体験しているかのような映像表現を紡ぎ、「普通とは何か?」という抽象的な疑問を多角的にひも解いていく。
というお話です。
この映画は、自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるか、また、彼らにとって自閉症という障害が意味するもの、そして彼らの世界が”普通”と言われる人たちとどのように異なって映っているのかを、世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿や、その家族たちの証言を追い、明らかにして行く、観たことの無い驚きと発見に満ち溢れている。
そして「普通とは?」「個性とは何か。」という普遍的な疑問、「会話の大切さ」「多重性の重視」など。他者と分断されている今を生きる誰もが、共感しうる、感動のドキュメンタリー映画です。
「まともじゃないのは君も一緒」という映画の感想の時にも、”普通”って何?って考えたと思うのですが、今作も、”普通”と呼ばれるモノって、何なんでしょうと思いました。この映画の原作に当たる東田さんのエッセイを私は読んでいませんが、ベストセラーとの事なので、その内、購入して読んでみようかなと思っています。
自閉症の彼らから見ると、自分たちが普通になるので、周りの人たちが”変”なんです。生まれてからしばらくは、自分が自閉症という事を理解しておらず、成長して、ある時、自閉症という病気で、人とは考え方が違うのだと知ります。彼らの親や周りの人たちは、障害者として生きるのは辛いだろうと考えているようですが、彼ら自身は、今のままで幸せを求めて生きているので、別に辛くはありません。普通に幸せで、普通に辛い事はあるんです。ただ、表現方法が違うだけという事を、他人に理解して貰うのが難しいだけなんです。
そんな当たり前の事なのに、一般的な人は、今まで、正面から向き合って理解しようとしてこなかったので、解らないんですよね。この映画の中には、5人の自閉症の人が出てくるのですが、みんな、それぞれに生きていて、表現方法は違うから周りが慌てることもあるけど、待ってあげることで、落ち着いて、また先に進めるんです。何てことは無い、一般的な人でも、悩んだ時は立ち止まっているのだから、同じ事なんですよ。
原作者の東田さんがインタビューで答えていらっしゃいましたが、自閉症の人は誤解されているのではないかと。現代の医学では、自閉症は生まれつきの中枢神経機能の障害だと考えられていますが、自閉症であることが悪い事だとは一概に言えないと思うと言われていました。私は、一般人が自分たちと違う彼らを区別する為に、悪い事だと思っているのではないのかなと思いました。人は、自分と違うモノを排除しようとする本能が働いてしまうからです。でも、本当は、自閉症だろうとなかろうと、同じ世界に生まれて、同じ時間を過ごしている。人種の違いと同じように、違う事を理解しながら、一緒に生きて行くことは出来ると思うんです。そこには、何の壁も無いと思うんです。
私は仕事の関係で、福祉施設に通ってくる自閉症の方などと接する機会があります。私も、彼らと初めて接した時は、本当の事をいって、恐いと思いました。どう接したらよいのか、もし興奮してしまったらどうしようかなど、彼らを知らないから恐怖を感じたんです。でも、少しづつ近づいて、彼らを理解しようとすれば、相手も歩み寄ってくれて、お互いに近づけるんですよね。ちゃんと向き合うと、何を言いたいのか理解出来るようになっていくんです。そうなると、もう、自閉症だろうがなかろうが、同じになるんですよ。会話も成立するし、怒ったり笑ったりも共有出来るようになるんです。
この映画では、自閉症の人々を追いながら、彼らの家族や周りの人々も一緒に撮影し、なんら普通の家族と変わらない事をフィルムに収めています。色々な事が起きるけど、それぞれに考えて、それぞれがしあわせになれる道を模索するのは、みーんな変わらないんですよね。
この映画を観ると、障害者だとか、自閉症だとか、そんな事で騒ぐ必要は無いんじゃないかって思えてきます。外国人とだって、直ぐに会話は出来ないでしょ。それと同じなんです。少しづつ理解して行けば良い、ただ、それだけなんです。そして、それは難しい事ではないと、この映画では教えてくれていました。
別に、何か凄い事が起きる訳でも無く、普通に生活をしている姿を追っているだけのドキュメンタリー映画です。そのコミュニケーションの取り方はちょっと独特ですし、時には癇癪を起したり戸惑ったりする場面がありますが、全てに意味があり、上手く人に伝えられない自分に怒っているんです。そんな彼らに伝え方を教えて、コミュニケーションが取れた時の感動は、映画を観て頂ければ解って貰えると思います。そんな映画でした。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。昨日に引き続き、素晴らしいドキュメンタリー映画を観る機会に恵まれて、とてもしあわせな時間でした。うんうん、そうなのよ。最初は恐かったり、可哀想と思ったりしちゃうのは仕方ないのよ。でも、コミュニケーションをとってみると、彼らが自分たちのしあわせをちゃんと持っていることが理解出来るし、お互いに幸せになろうねって話せる友人になれることも判るんです。ああー、感動でした。でも、ドキュメンタリーの感動を伝えるのって、難しい!ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「僕が跳びはねる理由」