「愛と闇の物語」を観てきました。
ストーリーは、
1945年、英国統治下のエルサレムで父アリー、母ファニアとともに暮らす少年アモス。一家は、ほかの多くのユダヤ人同様に、迫害から逃れるためヨーロッパから移住してきた。しかし母のファニアは、戦争の恐怖と、その後に続く日々の退屈さによって心に影を落としていた。さまざまな不安や不満が鬱積する中、ファニアは持ち前の想像力で冒険物語を創作しては、息子のアモスに語って聞かせていた。そしてアモスにとっては、母から教わった事が、後の人生に大きな影響を与えていく。
というお話です。
老人となったアモス・オズは、かつての幼少期を振り返る。
ときは1945年、英国統治下のエルサレム。幼少期のアモスは、父アリーと、母ファニアと共に暮らしていた。一家は、その時代の多くのユダヤ人と同様に迫害から逃れるためにヨーロッパから移住してきた。
希望の光を求めて彷徨ってきた一家。しばらくは、パレスチナ問題が解決せず戦争が続いており、英国がイスラエルの統治を諦め国際連合の勧告に委ねたことから、1948年にイスラエルは独立宣言を行った。
独立により、戦争の恐怖が去り、そのあとに訪れた平穏な日々の暮らしの退屈さはファニアの心に暗い影を落としていた。結婚生活への不満、息苦しく鬱積を募らせる日々のなか、彼女は持ち前の想像力を働かせて、砂漠をまたぐ冒険物語を創作しては息子のアモスに聞かせていた。
アモスにとって母親から物語を聞かされること、詩を詠んでもらうこと、言葉や言語を教えもらったことは、のちの彼の人生に多大な影響を与えることに。そんな日々を淡々と過ごす中、母は段々と病んで行き・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、暗いお話でした。うーん、確かにイスラエル建国の前は、こんな感じだったと思います。ユダヤ人の方々は、故郷に帰るという名目なんだろうけど、元々エルサレムに住んでいたパレスチナ人などは、追い出されちゃった状態になっている訳でしょ。ドイツで迫害され、逃げてきたユダヤ人は、イスラエルを自分たちの国にしたかったんだろうけど、パレスチナ人からしたら侵略者だからね。戦争だから、勝ったもん勝ちだろうけど、さすがに片方からの見方だけが正しいとは言えないと思うけど、今回は、ユダヤ人側から観た視点なので、これで良いんだろうけど。
エルサレムが建国されるまでは緊張状態が続き、いつどうなるのかという事があって、ファニアは、子どもの頃は穏やかで静かな場所で可愛い娘として愛されて育ち、結婚してイスラエルへ来たら緊張の毎日が続き、その極端な生活だけでもPTSDを発症していて良い状況なのに、その後、イスラエル建国で穏やかになった生活だけど、義母に嫁虐めされて、そりゃ、もう、頭の中はぐちゃぐちゃで、完璧にPTSDになっていたと思います。
この時代、誰もがそうだったと思いますよ。だって、昨日まで命の危険があったのに、今日は義母にスープの味が薄いとか言われて、何言ってんだよって思っちゃいますよね。私ならキレて、「じゃぁ、自分で作りなよ。」って言ってしまうと思うけど。でも、この時代は、そんな事は言えない時代だっただろうから、ファニアは辛かったと思います。
ここで、父親のアリーがファニアに寄り添って、妻の気持ちを毎日聞くとか、労わるとかしていれば良かったけど、この父親も想像力が無い男で、全くそういう事をしないんですよ。夫婦に関しては、今の時代と一緒ですよね。もう少し、想像力を持てよ、脳を使えよって言ってやりたいと思いました。
そして、この映画の語り手のアモスは、そんな壊れて行く母親を見ているしかなくて、耐えられなくなったんだろうなって思いました。時代に振り回された母親を思いながら、父親の元を飛び出し、一人で行き始めたアモスは、年をとっても母親の影を追い続けているという感じでした。ファニアの経験が、そのままアモスにも受け継がれ、アモス自体もPTSDを持っているのかなと思いました。経験していなくても、見ていたことで、それを受けてしまうんです。
うーん、暗かったなぁ。ナタリー・ポートマンが監督出演をしているという事だったので、観に行ったのですが、ちょっと辛い映画でした。暗くて、言っている事は解かるけど、それはユダヤ人側からの考え方だよと言ってあげたくなりました。あなた達に追い出されて難民となった人々は、もっと辛い日々を過ごしているし、ユダヤ人はドイツに迫害されて本当に悲劇だったと思うけど、だからと言って、他人も同じ目に合わせてよいと言う事ではないと理解すべきだと思います。何処までもユダヤ人だけが悲劇の人々ではないんです。ユダヤ人だって、同じことをしているんですから。そんな事を思う映画でした。
私は、この映画、まぁ、お薦めしても良いかなぁという感じです。一方的な映画なので、世界情勢を理解してこの映画を観れる方の方が良いと思いました。ナタリー・ポートマンは美しいです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「愛と闇の物語」