「ベイビーティース」限りある時間を精一杯生きようとする主人公と見守る両親の姿が素晴らしいです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ベイビーティース」を観てきました。この映画、本当はFan's Voice独占オンライン試写会に当選し、大喜びで待っていたのですが、当日に体調を崩してぶっ倒れてしまったので観る事が出来ませんでした。Fan's Voice様(@FansVoiceJP)にもご迷惑をおかけしたりして、本当に申し訳なかったです。そして公開されて、やっと観る事が出来ました。

 

ストーリーは、

重い病に冒された16歳のミラは、孤独な不良青年モーゼスと出会い、自分を特別扱いしない彼に惹かれていく。モーゼスは不器用ながらもミラを優しく包み込み、ミラは彼との刺激的な日々を通して命を謳歌する。しかしミラの両親は娘を心配するあまり、モーゼスとの交際に猛反対。ミラの命の期限が迫る中、それぞれの感情をぶつけあう彼らだったが・・・。

というお話です。

 

 

病を抱える16歳の女子高生ミラは、駅のホームで電車を待っていた。身体の具合も悪く、ちょっと良くない考えが頭をよぎった時、ふいに、後ろから男性が飛び出した。その勢いで転んだミラを助け起こした男は、いかにもというような不良青年の身なりだったが、悪い人間には見えなかった。勢いで鼻血を出してしまったミラを介抱してくれた彼はモーゼスと名乗る。何故か、モーゼスと離れがたく思えたミラは、彼を引き留め、髪を切って欲しいと頼む。

 

モーゼスは自宅へとミラを連れて行き、母親が使っている、犬用のバリカンを使って、ミラの髪の毛を切り始める。そこへ、母親が帰ってくると不法侵入で警察を呼ぼうとする。モーゼスは勘当されているようだった。モーゼスをつれて自宅へ帰ったミラに、両親は驚き、慌ててしまう。

 

 

ミラの父親ヘンリーは精神科医であり、母親アナは専業主婦なのだが情緒不安定であり、安定剤を飲んでいた。モーゼスを連れてきたミラに、初めて男性を連れてきたと喜んだ顔をしながらも、見るからに危ない男のモーゼスに問題があるからとミラに話す。しかしミラは、初めて病気の自分を見ないで、自分自身を見てくれたモーゼスに好意を抱き、それが初めての恋となっていってしまう。

 

ヘンリーとアナは、ミラの初めての恋を心配し猛反対するが、ミラは怖いもの知らずで自分を特別扱いせずに接してくれるモーゼスに惹かれ、彼との刺激的でカラフルに色づいた日々を駆け抜けていく。しかし、彼女の病気は待ってくれなかった。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

 

とっても切ないお話の映画で、ミラとモーゼスの初恋も切なかったけど、私は、病気の娘を壊れ物のように大切に育ててきた両親の気持ちを思うと、哀しくなりました。大切な一人娘が病気になって、いつ病状が変わるか判らないという状態で、本当に娘を溺愛しているんです。これこそ、目の中に入れても痛くないという言葉が当てはまるような感じで、いつもいつも、娘の事を大切にしているんです。

 

なので、モーゼスという、不良青年が転がり込んできた時には、母親のアナは、ちょっとおかしくなってしまったような状況に陥ります。慌てちゃって、安定剤を飲んでいたので変にハイになっちゃって、ヘンリーが慌ててフォローをするという感じで、笑えました。気持ちは凄く解るんです。だって、病気で未来がどうなるのか分からないから、娘には、出来るだけ沢山の経験をさせてあげたいし、恋もさせてあげたい、青春を謳歌して欲しい、あれもこれもして欲しいと思っているんです。反面、何かをすることによって、病気が悪化してしまうのではないかとか、娘が苦しむのではないかと心配でしょうがない。ご両親の心配する気持ちが伝わってきて、本当に可哀想でした。

 

 

ミラは、自分の身体の状態を知っていて、両親が凄く心配しているのを解かっています。だからこそ、心の中では両親に申し訳ないと思っていて、自分を責めているんです。そんな時に、何も考えずに、まっすぐ自分に向ってきてくれるモーゼスが眩しくて、自分の助けになってくれる、ギリシャ神話のイカルスみたいに見えたのではないかなと思いました。実際は、ドラッグ中毒だったり、盗みを働いたりするようなモーゼスですが、心は真っ直ぐだったんです。

 

 

そんなミラの心を理解して、ヘンリーとアナは、二人を見守ることにします。二人にも凄い葛藤があるのですが、それを抑えて、裏でモーゼスを呼び出して話し合いをしたりして、ミラとモーゼスの交際を見守り続けます。もちろん、二人はそのまま、ミラが病気も回復して、しあわせに生活を続けられることを願っているのですが、そう簡単には病気は無くなりません。

 

内容的には「きっと、星のせいじゃない。」に似ている部分があると思いますが、この作品は、病気の娘を見守る両親を良く描いていて、病気の本人と、周りの人間との関係性の描き方が素晴らしいと思いました。どちらかというと、あの映画よりもストイックな雰囲気があったような気がします。自由に明るくというよりも、こんな世界で、精一杯頑張っていた少女がいたという感じかしら。

 

 

ベイビーティースというのは、乳歯の事のようですが、ミラの最後に残っていた乳歯が抜けた時、ミラは両親の手を離れて、自分の道を歩き始めたのだろうと思います。そして、両親も娘を手放して、自分たちの籠の中から飛び立たせたのだと思います。

 

そうそう、色使いが美しかったです。全体的にはペールトーンを使いながらも、時々、グッと強い色を入れてきたりして、印象付けをしていました。ミラがカツラを被るという事を利用して、髪の色を変えてモーゼスの雰囲気に近づこうとしているという気持ちを表していて、面白い演出だなと思いました。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。優しい映画でした。誰もが、誰かの事を思っていて、その中に、悪意のようなものが無いんです。ちょっと、”不倫?”と思うような場面もあったりするのですが、そういうドロドロしたモノではなく、ふと綺麗だなと思っちゃったとか、そんな感じで人々の絆が生まれて行くんです。見た目だけで判断しないで、心を見て欲しいという事を訴えているような映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ベイビーティース」