「ファーストラブ」私は衝撃作でした。この感覚を理解出来る人と出来ない人で評価が分かれる映画です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ファーストラブ」を観てきました。

 

ストーリーは、

父親を殺害した容疑で女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女の「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉が世間を騒がせる中、事件を取材する公認心理師・真壁由紀は、夫・我聞の弟で弁護士の庵野迦葉とともに彼女の本当の動機を探り始める。面会を重ねるうちに、由紀はどこか過去の自分と似た何かを感じ、環菜の過去に触れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになる。

というお話です。

 

 

川沿いを血まみれで歩く女子大生が逮捕された。殺されたのは彼女の父親。勤め先の大学のトイレで包丁で刺されて死んだのだ。「動機はそちらで見つけてください。」という娘であり、被疑者・聖山環菜の挑発的な言葉が世間を騒がせていた。

 

公認心理士・真壁由紀は、動機を語らない環菜に興味を持ち、その心の内を知り、本にしたいと考え、取材を始める。環菜に付いた弁護士が、夫・我聞の弟・庵野迦葉と知り、気まずいと思いながらも、迦葉の事務所を訪ねて打合せをし、動機を探る取材を始めることになった。

 

 

ある時は純粋な女性っぽく、ある時は遊びなれた女性のような態度を取り、供述が二転三転する環菜に振り回される由紀と迦葉だが、由紀は、環菜の中に、どこか自分の過去と似たモノを感じ始める。

 

由紀は、心の奥底に隠したはずの「ある記憶」があり、その秘密を唯一知っているのは、夫の弟・迦葉だけだった。実は、由紀と迦葉は同じ大学の同学年であり、一時、付き合っていたことがあったのだ。由紀は迦葉には過去の違和感のある記憶を話しており、その過去の記憶が由紀の性格形成に影を落とし、二人の関係も上手く行かなかったのだった。

 

 

過去の記憶が呼び覚まされ、環菜の動機を探っていたはずなのに、過去の自分に向き合うこととなってしまった由紀は、事実を受け入れられない自分に苦しみながらも、環菜を救うために自分の心の内を明かし共感を与える事で彼女の心を開かせようとするのだが・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

この映画、私には衝撃的でした。でも、全くこの衝撃を感じない方もいらっしゃるんだろうなと思えるような映画でした。これは、観る人によって、全く違う感覚を受ける映画だと思います。この嫌悪感というか彼女たちの心の傷ですが、これを気持ち悪いと思う方と、これくらいの事って思う人と、2種類いると思うんです。私は、どうしようもなく気持ち悪くて叫び出したくなるほどでした。人の視線のヌルッとした感覚って、本当に気持ち悪いんですよ。

 

 

以前にも書きましたが、私がまだ幼稚園に入ったくらいだと思うのですが、変な男の人に電車の中で手を掴まれ、スカートの中を覗かれ、怖い思いをした記憶があります。母は居眠りをしていて、男は母に解らないように私に悪戯をしたのだと思います。さすがにスカートの中をあからさまに覗き始めた時は目の前に座っている人が変な目で見ていて、そしたら母が起きて、手を引かれて電車を降りたことを覚えています。他の記憶なんて残っていないけど、こういう恐怖は忘れないんです。

 

もちろん子供ですから、恐怖だけ覚えていて、その意味は成長してから理解したのですが、そういう恐怖を子供の頃に体験すると、もう、本当に嫌悪感しか抱かないんです。簡単にロリコンとか言うけど、被害にあった子供は、一生、忘れないんです。そしてそれがトラウマになる。

 

 

そんな嫌な思いは、何度もありました。小学校の帰りに全裸の男が目の前に出てきたり、痴漢に触られたりなんて数えきれないし、電車の中でスカートに精子をかけられたこともあります。今だから言えるけど、その時は怖くて誰にも言えないんです。我慢して、自分に大丈夫と言い聞かせるのですが、動揺して震えるんですよ。その怖さを克服したのが今の私です。今なら、私は相手を刺せると思うなぁ。もちろん正当防衛になるようにやりますよ。反撃のやり方を覚えると、貫禄が出るのか嫌な思いはしなくなります。相手は解るのかもしれませんね。(笑)

 

この主人公の環菜の心の傷も、周りの大人はそれくらいの事でと思っていたと思います。丁度良いからやらせてみようという、軽い感覚だったのではないかな。でも、子供にとって、その視線は嫌悪感の何ものでも無かったと思います。私も、子供の頃に男の人に舐めるように見られた感覚は忘れられません。吐きそうになります。

 

 

由紀の嫌悪感も同じなんです。なんか気持ち悪い怖いという感覚があって、その理由が大人になって理解出来てくると、もう嫌悪感しか浮かばないというか、まるで自分が汚いモノになったような感覚に陥るのだと思います。由紀は踏みとどまっていたのだと思いますが、自分が汚いモノになった感覚が、環菜が自傷してしまう理由の一つだと思いました。汚いから壊したくなるんです。

 

ネタバレ出来ないから、詳しくは書けないけど、そんな心の傷を共有した環菜と由紀は、それを理解してくれた周りの人によって、助けられていきます。心の傷は、周りの人達が理解することによって、やっと助けられる事が出来るんです。誰もが、自分が相手の立場だったらどう思うだろうという想像力を持っていれば、嫌悪感なんて減っていくんです。相手の嫌な事をしない、相手を理解するという想像をしない人間が多いことが、幾つもの事件を引き起こすことになるんです。周りの優しさって、凄く大切なんですよ。そんな事も描かれていて、救われる内容でした。

 

 

やっぱり堤監督の作品は、心にグッとくるなぁ。この微妙な嫌悪という感覚を、良く描いてくれました。この”気持ち悪い”という気持ちは、本当に伝えるのが難しいんです。”気持ち悪い”けど、伝えられない。もしそう言ったら、敏感過ぎるとか細かいとか思われて、今度は自分が避けられてしまうかもしれない。そんな事も考えてしまうんです。

 

今回も北川さんは上手かったなぁ。何でこんなに美しくて、演技も上手いんだろう。もー、ビックリしちゃいますよ。芳根さんも中村さんも、窪塚さん、木村さん、皆さんも凄くレベルが高いので、本当に良く出来た映画になっています。満足出来る映画でした。最後に一言、やっぱり窪塚さん、素敵です。もっともっと観たい!キング的な彼も、今回のような優しい彼も、どちらも好きです。

 

最後にもう一つ。この我聞と迦葉という名前、仏教用語から来ています。我聞は人の言葉をよく聞く、迦葉はただ一人理解する、というもので、この二人にピッタリの名前でした。この小説、良く考えられているなぁと思いました。素敵な名前ですよね。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。但し、最初に書いたように、この映画は、この”嫌悪”という感覚が解るか解からないかで、全く受け取る内容が違います。それくらいの事でと思うような方には、ちょっとこの映画の怖さと凄さは伝わらないのではないかなと思いました。観る人間を選ぶ映画だと思います。それを解かって、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ファーストラブ」