「哀愁しんでれら」王子様が現れたと思ったけど、ウサギの飼育員のままの歪んだ子供でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「哀愁しんでれら」を観てきました。

 

ストーリーは、

市役所に勤める小春は平凡な毎日を送っていたが、ある夜、不幸に見舞われ全てを失ってしまう。人生を諦めかけた彼女の前に、8歳の娘を男手ひとつで育てる開業医・大悟が現れる。優しく裕福で王子様のような大悟に惹かれた小春は、彼のプロポーズを受け入れ、不幸のどん底から一気に幸せの絶頂へと駆け上がるが・・・。

というお話です。

 

 

児童相談所で働く⼩春は、⾃転⾞屋を営む実家で⽗と妹と祖⽗と4 ⼈暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎⽇を送っていました。


ある夜、祖父が倒れ、車で病院へ連れて行く途中で交通事故に遭い、その時父親は飲酒しており、父親は警察へ、祖父は救急車で病院へ搬送される途中で、自転車屋の自宅が蚊取り線香の火で火事になるという、とんでもなく不幸な出来事に見舞われ、どん底に突き落とされます。

 

あまりにも酷い出来事に茫然とし、疲れて警察近くの彼氏の家に泊まろうと訪ねると、そこには彼氏と自分の先輩がベッドに入って・・・。不幸の上の不幸で、ぼんやりと歩いていると、踏切の中に男性が倒れている。酔っぱらっているらしいが、起きる気配が無い。関わりたくないという気持ちもあったが男性を助けると、助けてくれたお礼をしたいと名刺を渡される。

 

 

助けた男性は開業医の大悟。8 歳の娘・ヒカリを男⼿ひとつで育てていた。優しく、裕福な⼤悟は、まさに王⼦様。祖父を知り合いの病院に無償で入れて、父親には仕事を世話し、妹の家庭教師までしてくれる。小春は、大悟の娘・ヒカリとも仲良くなれて、しあわせを感じていた。「ただ幸せになりたい」と願っていた小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受け⼊れ、不幸のどん底から⼀気に幸せの頂点へ駆け上がりました。シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”。しかし小春の物語はそこでは終わりません。

 

大悟は優しいのだが娘を溺愛しており、我が儘を言い、段々と幼児退行していくヒカリを心配する小春に気にしすぎだと言い、しつけをしようと強く言うと、小春に母親失格だと言い始める。どこか理想とは違うと感じながらも、大悟に何も言えない小春は・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

この映画、超恐かった。いやぁ、ホラー映画とは思っていなかったので、追い詰められていく小春がどうなっちゃうのかドキドキして観ていて、最後の方でゾーッとしてしまいました。これ、どう考えてもホラー映画だよね。恋愛映画でも、ヒューマンドラマでもないよね。私は、ホラー映画だと認識しました。

 

 

最初、小春が市役所の仕事で、子供の虐待を心配して個人の家を訪ねるのですが母親に拒否られ、興奮して手を握ったら傷害で訴えられるという話があります。この母子が虐待をしていたかは判りませんが、この最初の出来事が、母親とはどうあるべきなのかという事に繋がっていたのだと思います。子供が学校に来ていないから虐待じゃないかと疑うけど、子供は笑っているんです。子供の言いなりになるのが母親なのか、ある時は躾として強い言葉で叱咤することも必要なのかという事を描いていたのかなと思います。

 

不幸の連続の後、大悟と出会い、シンデレラストーリーのように幸せな結婚をして、連れ子のヒカリとも仲良くなり、もう望むことは無いという生活に入るのですが、暮らしてみると、段々と大悟やヒカリの不思議な部分に気が付き始めます。

 

 

大悟は裕福だし、頭も良いし、優しいのですが、価値観が小春とは違うんです。大悟の母親の育て方がそうだったのだろうと思わせる場面があって、例えば大学は何処じゃなきゃいけないとか、仕事はどういうものでないと働く意味がないというような感じなんです。それを大悟も受継いでいて、自分の妻はこうあるべきだという考え方があるんです。その大悟の理想から少しでもハズれると、いきなりキレて怒ったりという男性でした。

 

理想の王子様だったし、自分の家族も世話になっているし、大悟に口答えが出来ない小春は、段々と、彼の考え方に付いて行けなくなる自分に気が付きます。あれ?これは大悟の言っている事が正しいのかな?と考え始めるんです。小春は、自分でしっかりした価値観を持っていたのに、大悟に合わせることによって、正常な判断が出来なくなっていくんです。

 

 

このお話、凄く良く理解が出来ました。夫婦だと、どちらかの価値観に引っ張られる事って多いですよね。今までは、自分の考え方が正しいのだと思っていたのに、相手にこうでしょと言われると、あれ?自分が違っていたのかな?と考え始めて、相手のいう事に従い始めてしまうんです。夫婦が段々と似ていくというのは、こういう事なのだと思うんですよね。もちろん、それが平均的なものなら良いのですが、極端な考え方に行ってしまうと、”モンペア”になったり、”騒音おばさん”的になったり、恐い方に行ってしまいます。

 

小春と大悟の子供に対しての接し方ですが、凄く甘いんです。子供が王様状態になっていて、親が従っているような感じなんです。酷いでしょ。このヒカリという子供は、凄く極悪で、どうしてこんな性格になってしまったのかというほど歪んでいます。もう、言葉では伝えられないほど、恐い子供でした。あんまり可愛い子供でも無かったし、突然にダミアンのように襲ってきそうでした。

 

 

そして大悟。結婚するまでは、本当に王子様で、優しくて、何の問題も無さそうなのですが、暮らし始めると、キモい部分が全開になります。いやぁ、よく小春さん、その家を出て行かなかったね。私なら、キモっ!と思って、直ぐに実家に帰らせてもらいますよ。でも、小春は家族の事もあって、それが出来なかったんだろうなぁ。だから、我慢して我慢して、大悟に合わせるようになっちゃったのかなと思いました。私は、まず、この男、ダメです。ネタバレ出来ないから、大悟のキモさは書けないけど、イヤだったなぁ。母親の教育によって、歪んだのだと思うけど、父親はどういう人だったのかな。

 

うーん、そんなこんなで進みまして、衝撃のラストにたどり着きます。これは凄かった。”名も無き世界のエンドロール”のように、最後の20分ではなく、最後の10分くらいで、すんごい展開をします。この場面は夢に見そうだったな。恐かった。ゾンビやら幽霊よりも、人間がよっぽど恐いというのが、この映画で解ります。本当に恐かった。この映画を観た後に”樹海村”を観たから、全然怖くなかったのかも知れません。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。衝撃作で、万人に薦める映画ではないように思うけど、私は好きです。人間って、どこかでボタンを掛け違えると、こういう方向に行ってしまう事ってあるんじゃないかと思いました。自分だって、ストレスを受けすぎて、どこかでプチっとキレてしまったら、こうなりそうな気がするんです。あー、危ないと思ったら、直ぐにストレス解消をしなくちゃ。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「哀愁しんでれら」