「ばるぼら」悪魔の餌であるばるぼらに惹かれてしまった男は、もう狂気に落ちて行くしかないんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ばるぼら」を観てきました。

 

ストーリーは、

異常性欲に悩まされている耽美派の人気小説家・美倉洋介は、新宿駅の片隅で、酔っ払ったホームレスのような少女ばるぼらと出会い、自宅に連れて帰る。大酒飲みで自堕落なばるぼらだが、美倉は彼女に奇妙な魅力を感じ追い出すことができない。彼女を近くに置いておくと不思議と美倉の手は動き出し、新たな小説を創造する意欲が沸き起こるのだ。あたかも芸術家を守るミューズのような存在のばるぼらだったが・・・。

というお話です。

 

 

ある日、美倉洋介は新宿駅の片隅でホームレスのような酔払った少女ばるぼらに出会い、思わず家に連れて帰る。大酒飲みでだらしないばるぼらに、美倉はなぜか奇妙な魅力を感じて追い出すことができない。彼女を手元に置いておくと不思議と美倉の手は動きだし、新たな小説を創造する意欲がわき起こるのだ。彼女はあたかも、芸術家を守るミューズのようだった。

その一方、異常性欲に悩まされる美倉は、あらゆる場面で幻想に惑わされていた。あるショップで美しい店員に誘惑され、連れ込まれた美倉をばるぼらが救い出す。ハッと気が付くと店員はマネキンだった。そんな不思議な事が何度かあり、その度にばるぼらに助け出される。



 

混乱する美倉だが、いつもばるぼらが救ってくれるので、彼にとってばるぼらは必要不可欠な女性になっていく。しかし、いつになっても彼女が現実の女性なのか、幻なのか、その感覚がつかめない。どんどんばるぼらの世界に引き込まれていき、美倉の生活は荒れて、小説もおろそかになっていく。

ばるぼらとの生活だけが美倉の生きる世界になっていき、ばるぼらに結婚しようと話す。ばるぼらもそれを望み、ばるぼらの母親らしき女性・ムネーモシュネーに逢いに行くと、契約書にサインをするように言われる。その契約書は、まるで悪魔との契約書のようで・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

 

昨年の東京国際映画祭でチケットが取れずに観れなかったのですが、やっと、観ることが出来ました。初日に観に行ったら、映画館、いっぱいでしたよ。アート系の映画に、こんなに人が入るというのは、稲垣さんが主演だからですかね。

 

本当にアート系の映画と言って良いような映画でした。もちろん、ストーリーはあるし、考えさせられる内容なのですが、映像が美しくて、感覚で繋いでいくという感じの映画でした。私は、こういう感じ、好きです。ここ最近の邦画って観客にコビる映画が多くて、こういうアート系の映画は減っていたのですが、久しぶりに出てきましたね。アート系は、内容が解りにくい映画が多いのですが、この映画は理解出来るし、その上、美しいので、とても満足が出来ました。

 

 

このお話は、なんとなく「ファウスト」なのかなと思いました。ばるぼらは悪魔が餌として撒いていた女性で、それに引っかかったのが美倉。餌にかかった男に契約させ、手に入れたと思ったら失くすように仕向けて、絶望に落とし、魂を手に入れる。悪魔が喜びそうな事です。なので、なんどもばるぼらは現れる。悪魔の撒く餌として、そこら辺に転がっているんです。その餌に引っかかったら、美倉と同じ運命を辿ることになる。うーん、面白いです。

 

美倉という男は、ファウストに引っかかる男のように成功したいと思っているのではなく、既に成功している男なんです。小説家として成功していて、容姿も良いのでチヤホヤされていて、欲しいモノはほとんど手に入れているような、そんな男です。でも、心に空虚感があり、何かを求めているんだけど、自分でもそれが何か解っていないんですよね。

 

 

そんな美倉の前に、ボロボロの女が現れる。原作では”ルンペン”って書いてあったけど、今でいうホームレスかな。誰も相手にしていないんだけど、美倉は、その女・ばるぼらの美しさに気が付いて、拾っていくんです。我が儘で、汚い言葉を使い、酒をラッパ飲みする女なんですけど、いまどきラッパ飲みはしないよぉ~!(笑) あまりの酷さに、一度は美倉も追い出すんだけど、やっぱり家に入れちゃうんです。どこか魅力的な女で、彼女といると、この世界の秩序のようなものを捨てられる感じなんですよね。成功していて何でも思い通りになるけど、人の目を気にしなければならなかった美倉にとって、そういう正しいとされるものを気にしなくて良い女といると楽だったんじゃないかな。

 

周りを気にしなくなっていく美倉に、担当の甲斐は戸惑います。それまで、我が儘は言っても仕事はこなしていたし、それなりに常識的な行動をしていたので、献身的に尽くしてきてくれていたのですが、その関係もおかしくなっていきます。美倉は、恋人だった里見志賀子にも興味が無くなって、志賀子は怒り、美倉を潰しにかかります。

 

 

んー、でも、ばるぼらみたいな女に引っかかってしまったら、こんな風に狂って行ってしまうのかもしれません。蜘蛛女みたいだよね。蜘蛛の糸に引っかかったら、もう離れたくても離れられないんですから。こんなに魅力的な女性が現れたら、狂っても幸せなのかもしれません。

 

それにしても、驚きました。主演のお二人とも、よく演りましたね。内容がこういう内容なので、お二人ともヌードで出ていて驚きました。綺麗だったなぁ。本当に綺麗でした。とってもエロいんだけど、それが美しいんです。特に、山荘のシーンのお二人は、もう、この世のモノとは思えないような世界で、ドロドロしているんだけど、綺麗なんです。私、ボキャブラリーが足りないから、この美しさを表現出来ません。うーん、本当にギリシャ神話の中の狂った神々のようで、その狂気が美しいんです。凄かった。二階堂さん、身体、本当に美しかったです。彼女の身体は芸術品と言って良いほどでした。もちろん稲垣さんも美しかったですよ。お二人とも、神々しかったです。

 

 

四谷役の渋川さんは「半世界」でも稲垣さんと共演されていましたね。イイ味を出す役者さんで好きな方です。また舞台でも観てみたいな。そして、担当の甲斐役に石橋さん、上手いですよね。ばるぼらに対して、全く正反対の役で、その対比が面白かったです。他にも、美波さん、大谷さん、渡辺えりさんと、個性的な方が周りを固めていて、楽しかったなぁ。

 

この映画、ある場面で美倉が薬物で逮捕されるという場面があるのですが、もしかしてこれがネックで、直ぐに公開出来なかったのかなと思いました。昨年って、薬物で逮捕された芸能人が凄く多かったでしょ。現実と映画の中と、同じような光景があったので、公開が引き延ばされたのかなぁとちょっと思いました。違ったらごめんなさい。

 

 

待った甲斐がありました。良い映画でした。アート系の映画って好き嫌いがあるので、そんなに一般的に評価はされないのが多いけど、私は、この映画、好きです。堪能させていただきました。私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。とても感覚的な映画だけど、このぬるい水に浸かって、たゆたっているような感じがイイなぁ。「綺麗は汚い、汚いは綺麗」という”マクベス”の魔女のセリフが合うような映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ばるぼら」