東京国際映画祭2020で「足を探して」(ワールド・フォーカス)を観てきました。
ストーリーは、
ダンススタジオを営むチェン・ユーインと夫のジェン・ズーハン夫婦。夫が入院し、敗血症だと告げられ、足を切断しないと命の保証は無いと言われてしまう。夫は膝に骨肉腫が出来て、医者に大きな病院で診てもらうように言われて検査に行くのだが、時すでに遅く、酷くなっていて、敗血症を誘発していたのだ。足を切れば助かる可能性があるとの事で手術をして貰うのだが、術後の状態が悪く、挿管すれば生きるが植物状態となると言われたチェン・ユーインは、枕元で夫に相談し、挿管はしないことにする。
亡くなってしまった夫の葬儀をする為に、遺体を運ぼうとするが、足が無い事に気付く。葬式では、元々の綺麗な身体で送り出すという習慣があり、チェンは、担当医師に足を返して欲しいと頼む。しかし、切断手術時の契約書に、切り取った足が必要かという項目の必要無しにチェックを入れていたため、足は検体に回され、そのまま、破棄に送られてしまっていた。
契約書に破棄とチェックしていると主張する医師側に、手術は2日前で、検体に送ったら2週間は保管義務があるのに、それをしていなかったじゃないかと文句を言い、どうしても足を返してと詰め寄る。医師は、コッソリとメモを渡し、廃棄部署の担当と場所をチェンに教える。
チェンは、廃棄部の男に足を探している事を話し、ゴミの中から足を探し出すのだが、沢山の人体部分の中から、手探りだけで探すので、違う足を探し出して持ってきてしまう。これじゃないと騒ぐチェンに、院長がある提案をするのだが・・・。
そんな現状を描きながら、過去のチェンとズーハンがどのように出会って夫婦になり、何をしていて、どのようにダンススタジオを経営するようになったのか、その間に夫婦の間では、色々なすれ違いや問題が起こり、どう解決してきたのかという事が並行して描かれていきます。お互いに愛し合っていた二人。チェンが別れに際して、夫を敬って送り出したいと思った気持ちが過去を描くことで理解出来ます。
というお話です。
この映画、とてもよく出来ていて、主人公たちの現代を描くパートはコメディで描いているのですが、過去を描くパートは真面目なラブストーリーなんです。同じ人物が、一方ではとんでもないことを言い出して、医者に難癖つけて騒いでガードマンに連れ出されるような場面があり、一方では、出会って恋愛をして苦しんで、深いヒューマンドラマを繰り広げるんです。このギャップとバランスが良くて、面白いんです。
最初は病院の場面から始まります。ある男性が入院しているんですが、検査の結果、足の骨肉腫からの影響で敗血症を起こしていて、足を切るか、死ぬか、どちらかを選んでと言われます。それまでダンサーとして生きてきたのに、足を切断するなんてと思いますが、命には代えられないので切断を選択します。ま、当たり前ですよね。その時に、同意書を書くのですが、”切った部位は持ち帰らない”にチェックをします。死ぬとは思っていないので、切った部分を貰っても、処理に困りますよね。
手術をするのですが足の状態が非常に悪く、結局、意識不明の重体に陥り、人工呼吸器を付ければ生きますが植物状態になると言われ、死に至ります。チェンは悲しみますが、もう仕方ないと諦めて、遺体と共に帰ろうとするのですが、そこで、ハッと気が付き、足を返して欲しいとなるんです。香港では、切ったりした部分を修復して葬式をしないといけないという風習があるのかな?だから、足が無いと葬式が出せないというんです。
病院側は、足は要らないと書かれていたので検体に回して破棄となるのですが、2日前に切った足なら破棄してはいけないハズなんです。だけど、破棄されたらしく、病院の誰もが、知らない知らないの一点張り。そこでチェンが怒り、足を何処までも追うんです。面白かったですよぉ。足って言っても、切り取った人間の身体ですからね。他の人の身体の部位と一緒に捨てられちゃってたりして、もう、探すの、大変なんです。その大変さと面白さは、ぜひ、映画で堪能して貰いたい。
そんな事をしている間に、チェンとジェンの出会いから結婚、苦労、などなど、色々なことが描かれます。凄くロマンチックな出会いをして、二人で社交ダンサーとして有名になるんです。でもね、この夫・ジェンは、イケメンで優しい人なんだけど、クズなんですよ。ギャンブルにハマり、莫大な借金を重ねたり、女に手を出したり、まぁ、酷いんです。チェンは、ずっと耐えて、彼を許したり、許さなかったり、沢山の問題を夫婦で乗り越えてきたんです。まぁ、でも、私なら、このギャンブルにハマって、借金を背負った時点で捨ててますけどね。
大笑いしていると、このロマンス部分が入ってくるので、笑ったり、悲しんだりと、楽しめました。このチェンを演じている主演のグイ・ルンメイさんは、今公開されている「鵞鳥湖の夜」でヒロインを演じている女優さんで、本当に美しいのですが、コメディも最高でした。
コメディとシリアスを一緒の映画で描くと、大体、バラバラして失敗するのですが、この映画はバランスがとても良く、どちらも楽しめるように作られていました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。足を探して、人間の部位を漁る美女って面白いでしょ。ブラック・ユーモアなんです。でも、そこまでするのは、シリアスなラブストーリーバージョンで描かれている深い愛があるからこそなんです。それが、良いんですよ。日本公開して欲しい作品ですね。これはウケると思います。公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「足を探して」