【TIFF2020】「悪の絵」芸術と作者の人格はリンクするのか。知ってしまえばリンクするよね。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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東京国際映画祭2020で「悪の絵」(ワールド・フォーカス)を観てきました。

 

ストーリーは、

 

服役中の受刑者に絵画の指導をする吃音者の画家シュー・パオチンは、若い死刑囚ジョウ・ジャンティンの描く絵の素晴らしさに魅了される。こんなに素晴らしい絵なら、沢山の人に見せる機会が欲しいと考えたシューは、それを世に出そうと思い、展覧会の開催に奔走する。

 

展覧会の開催にこぎつけたシューは、素晴らしい絵を世に出せて誇らしげな気持ちだったが、一転、大批判の的になってしまう。シューが良かれと思って絵の作者名を付けてしまい、描いたのが殺人犯とバレてしまったのだ。素晴らしいと感じた絵の画家ジャンティンは、猟奇的な無差別殺人犯だった。沢山の被害者がおり、3年前の事件なので、まだ傷も癒えていない。会場前でデモも起きて、展覧会は閉めることとなってしまう。

 

 

被害者の遺族やジャンティンの家族と接して、自分の行動への迷いが生じる。良いものは作者の人格とは関係なく良いと思っていたのだが、絵の良さを感じる前に人々は嫌悪感を覚えてしまうのだ。

 

しかし、絵の魔力に取りつかれた画家としての自分を否定することも出来ない。芸術作品の価値は、その作者を取り巻く背景から自立して存在することが出来るのか、出来ないのか。芸術の価値とは何なのか。問われることとなる。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

 

この映画、問題作でした。日本でも秋葉原で猟奇無差別殺人があったでしょ。この映画のジャンティンは、同様の事件を起こして、沢山の人を殺し、重傷者も出しているんです。そんな人間に絵を描かせたら、素晴らしい絵を描いたので、ぜひ、沢山の人に見て貰おうと言う事で展覧会を開くんです。

 

いくら素晴らしい絵でも、私はやっぱり受け入れられないと思いました。確かに、人殺しをするような人間は人と違った感覚を持っていることが多く、そういう違う部分が、人の心を動かすと言う事はあると思います。芸術とは、人と違うからこそ喜ばれるものですから。だからと言って、沢山の人を殺した人間に絵を描かせて、人前に出すのはどうなんでしょう。人間は感情のある人間ですから、ただ、芸術と割り切って絵を観る事は辛いと思います。

 

 

但し、その画家が亡くなって、何世紀も後に芸術と言われることはあるかもしれません。あのレオナルド・ダヴィンチだって、墓を暴いて死体を解剖していたし、今でいう死体損壊ですよね。人殺しだってしたかもしれない。でも、それは過去の事だし、既に被害者もいなくなっているから出来る事で、3年前の事件で、まだ被害者も治療中だったりしているのに、それはダメですよね。

 

どうしても世に出したいと思うなら、バンクシーみたいに、全く素性を明かさずに出して、ほとぼりが冷めたら、実はって言う事で名前を出すなら、本当の芸術的な価値が解るかもしれませんね。それで凄い価値が出るなら、本物なのでしょう。それなら、このシュー先生の見る目が正しかったと認めて良いと思います。

 

 

殺人犯の家族も、絵が話題になったことで、また注目されて、沢山の人に批判を浴びる事になってしまいます。3年経って、少し批判が落ち着いてきたのに、泣く子を起こす事になってしまって、父親は耐えられなくなってしまいます。もう、本当に、このシューは、自分の事しか考えてないと言わざるを得ないですね。まぁ、ジャンティンが猟奇無差別殺人犯だと知らなかったと言うんだから、何言ってんだよこいつって感じですよね。大ニュースだったらしいのに、世間のニュースは見なさいよって感じです。

 

もし、このジャンティンの絵を、作者名を付けずに飾ったらどうだったのか。一応、映画でも、その答えは描いています。うん、映画で描かれた通りの反応になると思います。心に響くもの、それは人間の感情とは切り離されたところにあるのだと思います。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画の内容は、日本人ならとても理解が出来るのではないかと思いました。そして、考えて欲しいんです、芸術って何なのかを。芸術というと、直ぐにお金と並べて考えられてしまうので、それは芸術とはかけ離れた部分だと理解して欲しい。そんな気持ちになりました。日本公開、して欲しいなぁ。良い作品でした。公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「悪の絵」