東京国際映画祭2020で「悪は存在せず」(ワールド・フォーカス)を観てきました。ベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた作品です。
ストーリーは、
1話目:ヘシュマットは、よく整えられたあごひげと冷淡な顔をした中年男性です。彼は学校の教師である妻のラズィエと暮らしており、今日も、仕事の後に妻を迎えに行き、帰りに銀行によって、その後に娘を迎えに行きます。彼には、面倒を見なければならない年を取った母親がおり、家族で掃除をしに家に行きます。ごく一般的な生活を送っているヘシュマットと家族たち。給料以外にも、沢山の食糧の配給を受けている彼は、いったい、何の仕事をしているのか。
2話目:軍の新兵であるプーヤは寮に入っており、ある夜、パニック状態で目を覚まします。プーヤは、実は、翌朝、仕事として、囚人の絞首刑を命じられていたのでした。首に縄を点けられた囚人が乗っている台を外す係です。プーヤは、どうしても死刑を執行するのは嫌で、どうしようか悩んでいたのです。しかし、兵士となったら、命令と法律に従わなければならず、選択の余地はありません。もし、拒んだ場合、彼が命令違反で犯罪者になってしまいます。悩んだ末に、プーヤが出した答えとは・・・。
3話目:兵役についているジャバドは、3日間の休暇を貰い、婚約者のナナとその家族に逢う準備をしています。澄んだ川で水浴びをして、身綺麗にして、彼女の元へ向かうことにします。ジャバドは、軍人としてとても真面目で、命令に背くような事はしません。どんなに辛く、嫌な仕事でも、しっかりと受け止めて仕事をするタイプです。それでも、心には引っかかるモノがあり・・・。
4話目:バーラムとザマンは空港に、大学生である姪のダリヤを迎えに行きます。彼女はドイツで暮らしており、イランに住む叔父を始めて尋ねました。初めての地に興味を持つダリヤですが、バーラムとザマンは、どこか暗い部分があるようでした。バーラムは、街から遠く離れた砂漠の中腹に住んでおり、養蜂家をしていますが、元々は医者だったらしく、妻は元薬剤師のようでした。どうして病院をやらないのかと聞くダリヤに、出来ない理由があると話します。身体を悪くしているらしいバーラムは、ダリヤに話さなくてはならない事実があり、ここに呼んだのでした。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
1話から4話までのオムニバス形式ですが、話は繋がっていると思って良いと思います。私は、1話目の娘が、4話目のダリヤになったのかなと思ったのですが、ドイツに住んでいて、初めてイランに来たというので、あれ?違うのかな?と思ったり、ちょっと微妙でした。
だって、映画は2時間半以上だし、とっても眠くなるのよ。途中、何度もウトウトしちゃって、これだけ理解しただけでも、私って凄い!って思うくらいなんですもん。例えば、車に乗っているシーンで、ずーっと音楽が流れていて、演歌のようなテンポなのよ。それがね、曲を最後まで全部流すので、何分もあるわけ。もう、それだけで眠くなっちゃって、辛くて辛くて、大変でした。(笑)
ですが、覚えていた内容をこうやって並べてみると、あら、ちゃんと話が繋がっているじゃないですか。もしかして違うかもしれないけど、1話目で、幸せな一般家庭が描かれるけど、そこに”死”というものが隠されていて、可愛い娘と夫婦がいる。2話目で、軍が処刑を行うのだけれど、どうしても死刑の実行をしたくない新兵がいて、そこから逃げ出すというもの。3話目が、同じく新兵だけど、軍の規律に向き合っていて、命令は実行するという兵士。でも、やはり罪悪感があって、身体を清めなければ、彼女に逢えないという男性。4話目は、色々あった兵士が行きついた先の話、となっていました。
死刑制度を反対する為の映画なのですが、日本でも死刑制度は廃止されていないのよね。実際に行われている訳だし、この映画を観て、考えました。どうなんでしょうね。死刑にしないで、終身刑とか、100年とか200年の刑期とか、海外ではそうなっているんでしょ。死刑は残酷に見えるかもしれないけど、もしかしたら、死ぬまで刑務所で同じことをくり返して生きているよりも、死ぬ方が、犯罪者には楽かもしれないですよね。どうなのかしら。
これ、本当に考え方だと思うけど、でも、反対に、死刑を執行する方の立場を考えると、仕事で人を殺さなきゃいけないんでしょ。いくら仕事と言われても、精神的に辛い仕事ですよね。それに、あまり人に言いたくない仕事だと思います。そういう事を考えると、いくら国家公務員で仕事だと言っても、死刑執行をやらせるのは可愛そうなのかなと思いました。犯罪者は悪い事をしたんだから、仕方がないって感じもありますが、執行する方は、正しい事をしていながらも、罪悪感がハンパなくなるという事でしょ。うーん、これ、問題だと思いました。
私は、死刑制度はあっても良いと思っていたんです。悪い事したんだから、罪を償うのは当たり前と思うのよ。だって、今までの犯罪者だって、全く罪を反省していない人がいっぱいいるでしょ。再犯が多いって事は、反省していないって事ですから。それなら、やっぱり、累計で刑を加算していって、最終的に死刑もあって良いと本当に考えていたのですが、この死刑執行をする方の心の負担を考えたことが無かったんです。誰もがやりたくない仕事ですよ。
マンガで「イノサン、イノサンルージュ」というのがあるのですが、フランス革命時代に実際にいた、処刑一族のお話です。それを読んでも、誰もが嫌がる仕事を引き受けるという一族の心の葛藤というか、罪悪感的なものが、とても深いという事が描かれています。
この映画でも、死刑執行だって殺人なのだという事を描いていました。映画としては、ちょっと繋がりが難しくて、本当に繋がっているのか、話は少しづつリンクしているけど、人物は違うという事なのか、そこら辺が、とっても曖昧で、監督に教えて貰いたかったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。この映画、ベルリン映画祭金熊賞受賞作品なんです。確かに、凄い訴える事は深いと思ったのですが、何とも、眠くなる長さというのが辛かったかな。良い映画だと思います。日本公開はあるかなぁ。金熊賞だから上映してくれるかしら。もし、上映するようなら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「悪は存在せず」