東京国際映画祭2020で「兎たちの暴走」(TOKYOプレミア)を観てきました。
ストーリーは、
重工業が盛んな四川省攀枝花市。17歳の高校生シュイ・チンは、父親とその再婚相手と弟の4人暮らし。継母はシュイ・チンの事をよく思ってなく、家族の一員として認めていない様だった。家に帰っても居場所が無いシュイ・チンは、遠方にいるだろう本当の母に、食事だけでも一緒にしたいと連絡する。
ある日、彼女が生まれて間もなく出て行って、音沙汰が無かった実の母チュー・ティンが突然に戻ってくる。憧れていた母の帰還でシュイ・チンの生活は一変する。最初はぎこちなかった母娘の関係は徐々にほぐれていく。母親にベッタリになり、家にも帰りたくないと言いだすシェイ・チン。
ある時、母親が借りている部屋に男が訪ねてくる。母は、ある男から金を借り、返すことが出来ずに逃げてきたのだった。小指を差し出して、一時はしのいだが、あと2日でお金を返済しないと殺されてしまう。
隠れて話を聞いていたシェイ・チンは、母親を助ける為に、とんでもない事を思いつく。そんな事は出来ないという母親だが、シェイ・チンは、以前もやった事があるから大丈夫だと言い、裕福な同級生の誘拐を計画する。しかし同級生は、シェイ・チンの母親が同級生の男子に化粧品やお金をたかっていた事実をしり、シェイ・チンを信用しなくなる。もう少しというところで、裕福な同級生は逃げてしまい、父子家庭の貧しい友人しか残らず・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、大人に振り回される子供たちの姿がいじらしくて、可哀想でした。生まれて間もなくいなくなった母親だから、チンにとって自分の母親は素晴らしい女性だと思っていて、現実とは全くリンクしないんですよ。現実は酷いクズ女なのに、チンにとっては、理想の自分だけの母親だから、必死で自分のそばにいてもらおうと頑張るんです。
まず、主人公のチンは、父親と継母と弟と4人家族で暮らしているのですが、継母は、自分の親族が遊びに来ると、「家族だけで過ごしたいから、解るでしょ。」と言って、チンを家から追い出すんです。酷いでしょ。そんな継母なので、普段から酷い扱いをしていのだと思います。だからチンは、本当の母親は自分を愛してくれて、優しくしてくれるのだろうと、理想の母親像が頭の中で大きく広がってしまっているんです。そんな時に、母親のティンが帰ってきたので、もう、舞い上がってしまうんですね。
友達にも、私の母親なのって紹介して、一緒に放課後に遊びに行ったり、本当に嬉しそうなんです。チンの友人は、裕福な家だけど親が構ってくれない子と、貧困な父子家庭で父親の束縛が酷い子の二人なんです。二人とも母親の愛情を貰っていないので、チンの母親が帰ってきたのを一緒に喜び、羨ましく思っていたのではないかと思います。
でも、チンの母親が高校生に金を無心したりという事が解ってきて、友人たちから軽蔑の目で見られるようになります。化けの皮が剥がれてきて、憧れから軽蔑へと変わるんです。それでも、娘のチンだけは母親を信じて、どんなことをしてでも、母親を助けようと動き出します。
うーん、母親が凄いクズだったなぁ。でも、こういう女性って、結構、日本にもいますよね。お金にだらしないというか、お金を借りたら返さなければならないという事を解ってない人。返す当てがないのに、よく借りれるなと思うのですが、それがこういう人間の不思議ですよね。脳が劣化しているのかな。
話を戻して、どんなにクズでもチンにとっては、たった一人の母親だから、どんなことをしても、助けたいと思ったのだと思います。そして強硬手段に出て、友達の偽装誘拐を考えつくのですが・・・。まぁ、どうなるかは、映画を観て欲しいのですが、高校生と母親が考える計画だから、成功する訳が無いわよね。なんだかとっても可哀想でした。でも、一応、ティンにも娘への愛があったのだという事が解って、それは良かったのかな。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。母親のクズさ加減に、ちょっとイライラしますが、展開があまり予想が付かない感じで、楽しめました。借金取りのオジサンがピエール瀧さんに似ていて、ちょっと笑ってしまいました。日本公開は、どうかなぁ~。ちょっと微妙だとは思いますが、もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「兎たちの暴走」