東京国際映画祭2020で「二月」(TOKYOプレミア)を観てきました。
ストーリーは、
ある男の人生の、8歳、18歳、82歳の3つの時期を見詰める。
8歳のペタルは、祖父と暮らしており、毎日、森を歩き、動物と戯れ、自然に親しんで遊んでいた。何か目的がある訳では無く、ただ、森と一体となり、遊んでいたのだ。
18歳になり、結婚したペタルは、兵役に行き、何年か海兵として働くこととなる。真面目で勤勉な性格のペタルは上官にも気に入られ、兵役が終わっても軍に残れば、将校への道が開けるぞと言われるが、戻って羊飼いになるんですと言い、上官に呆れられてしまう。
82歳のペタルは、一人で山の中に暮らしており、昔からの祖父の生活をそのまま引き継いでいた。何も変わることなく羊を飼い、暮らしていた。しかし高齢になり、姉から電話がかかってきては、町に戻って暮らした方が良いと言われている。しかし、彼の日々は変わらない。
後は、映画を観てくださいね。
この映画、どう感想を書いていいモノやら、困ります。美しい風景の中に、少年が一人、青年が一人、老人が一人、と移って行き、その日常生活を描いているだけなのです。セリフもほとんどなく、まるでドキュメンタリーのように、彼の生活を追っていて、これを、どう伝えてよいのやら。
この2月という題名は、その季節が82歳になったペタルに似ているという事なのかなと思いました。人間の一生を1年間に例えて、春が来たら木々は芽生えて、人間も生まれて元気に成長し、色々な初めてのモノに触れあって生きて行きますよね。そんな初々しい子供時代が春である4月頃なのかな。そして、青年期。結婚をして、家族を養うために軍で仕事に就きます。元気で力強く、未来を夢見ながら、頑張っているという姿が、8月とか9月なのかなと思いました。そして、冬の2月。雪が吹雪いて乾燥して、老人の身体も衰えて、衰弱していく。動きも鈍くなり、周りには倒れていく木々もあるという感じかしら。
そんな人間の一生を、僅かなセリフと、音楽を使い、後は、素晴らしい映像のみで表現していくという映画でした。最初、観始めた時は、セリフも無く、何をやっているのかもわからず、これ、このままで2時間以上続けるのかなと思って、寝ちゃうかもって思ったのですが、観ていると、段々、引き込まれていき、何をするんだろうと観ちゃうんですよ。でも、全く、普通の生活を映しているだけなんですよ。朝起きて、食事をして、仕事をして、家に帰って、寝るという、ごく普通の人間なんです。なんだけど、映像の美しさとか、切り替えの間とか、そんなのが、どこか観ている方に問いかけてきているようで、観ちゃったんですよねぇ。不思議でした。
主人公のペタルは、動物が大好きみたいで、沢山の動物を飼っているんです。子供の頃に、犬を飼っていて、猫も飼っていて、同じ皿のミルクを飲まそうとするのですが、猫が怖がって飲まないんです。だけど、82歳の時に、今度は、沢山の犬と、1匹の猫を飼っていて、バケツ一杯の餌を撒くと、そこに沢山の犬と1匹の猫が走りこんで来る。それは、もちろん同じ犬と猫ではないだろうけど、でも、人間が年を取ると、動物たちも同じように時間を経て、逞しくなって、一緒に餌も食べるようになれるんだなと思いました。猫ちゃん、カッコいい!
この映画、私は好きなタイプで、お薦めしたいと思いますが、この映画の良さって、解る人は少ないだろうなぁ~。まるで環境映画なんです。部屋にずーっと流しておいても邪魔にならないような映画なんですよ。だから、一般的な起承転結の映画を良しとする人は、一日の人間の生活を映しているだけだから、面白いと思ってくれないんじゃないかと思って。でも、人間の生活が一番面白いんですけどね。なので、日本公開をしてくれるかなぁ~って思っています。もし、上映してくれるようでしたら、ぜひ、観に行ってみてください。これ、DVDとか配信で出してくれないかなぁ。カンヌ2020の選出作品です。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「二月」