東京国際映画祭2020で「鈴木さん」(TOKYOプレミア)を観てきました。
ストーリーは、
現人神「カミサマ」を国家元首にいただき、美しく輝ける某国の某市。少子化にあえぐその街では、市長投票により、45歳以上の未婚者は市民権を失うという条例が制定された。市民権が無ければ、町を出て行かなければならない。それか、軍に入って国の為に働くという道も残されていた。
45歳を目前に控えた未婚の女性ヨシコは、その町の廃ラブホテルで介護施設を営んでいる。この土地から排除される不安を抱えているが、施設に入居している老人たちを捨てて、町を出ていく事は出来ないと考えていた。
そんな折、この施設に身元不明の中年男性が迷い込む。ヨシコは”鈴木”と名乗り、行くところも無いようで、施設に居ついてしまう。ヨシコは、困ったと思いながらも、仕事を手伝ってくれる鈴木に好意を持ち始める。
とうとう、ヨシコは45歳となり、出ていくのか、結婚するのか、軍に入るのかという選択を突きつけられる。私は出て行かないと頑張るヨシコだが、町民はそれを許そうとはしない。ヨシコは仕方なく、鈴木に結婚して欲しいと話し、鈴木も了承する。そんな時、町に工作員が入り込んでいるとの噂が流れ、施設に身元不明の男性が隠れているらしいと言われてしまう。ヨシコは鈴木を匿うが、町の青年たちは施設に無断で入り込んできて・・・。
一方、政府は逃亡した「カミサマ」を秘密裏に捜索していた。
というお話です。
荒唐無稽なSFのお話なのですが、なんか、日本人って、こんな事をしてしまいそうに思えて、怖いと思いました。この現人神「カミサマ」というのが天皇の事だと思うのですが、戦争の時は、こんな感じで人々が締め付け合っていたんですもんね。恐ろしい事です。映画の中では、45歳以上で独身の場合は市民権喪失すると法律で決まっているんです。そんなおかしい法律制定に誰も異を唱えないというのが、「みんな一緒」というのが好きな日本人っぽくて、あり得るかもって思ってしまいました。
この45歳以上で結婚してないとダメってなっているけど、この法律、少子化が引き金になっているから、これでダメなら、今度は45歳までに子供が出来ない夫婦は市民権喪失とかになるんでしょうね。恐ろしい事です。
私を市長にしてくれたら、結婚なんてしなくても、妊娠、出産してくれたら国が子供の面倒を見ますから、安心して子供を産んでくださいって言うんだけどな。母親が育てても良いし、無理そうなら国が責任をもって育てるようにして、仕事として”養育親”というのを作って、母親が育てない子供を育てさせるようにするけどね。もちろん虐待などが無いように監視も必要だけど。
話を映画に戻して、そんな某国で、老人たちのグループホームを経営しているヨシコ。このグループホームは、廃墟となったラブホテルを使っているんです。ちょっと不思議だけど、部屋はたくさんあるから良いのかな。そこで老人たちの世話をしているヨシコは、もうすぐ45歳になるので、追放されたらどうしようって思っているんです。
なんか、酷いんですよ。だって、ヨシコは結婚したいと思っているのに、町には若い男性は少ないし、合コンのようなものを町で開催しているんだけど、その対象年齢は若い人たちだけ。45歳目前の人たちには、全く、出会える場が無いんです。あまりにも45歳独身という人間に対して、まるで人間ではないような扱いで、ムカつきました。結婚したからって、全然、偉くないからね。
そんなヨシコの所に、鈴木さんという男性が転がり込むのですが、この男、何故か、IDが身体に付いていないんです。国民にはIDがあるはずなのですが、それが無いので、工作員ではないかと疑われます。この映画も、結構、粗い作りなのですが、工作員って何処の?敵がいるの?何で戦いになっているの?って感じなんです。まぁ、45歳以上の独身が軍に入るという話があったので、何処かと戦っているのでしょうが、そこら辺も、全く解りませんでした。
で、まぁ、ヨシコは、この鈴木さんと結婚すれば、このままこの場所に居続けられるということで、結婚しようとするのですが・・・。この鈴木さん、イイ人なんですよ。ヨシコにそう言われれば、状況を見て、結婚してくれようとするんです。ちょっとキモい男だったけど、良い人なんだろうと思います。でも・・・。
ちょっと不思議な映画だけど、楽しめましたよ。いとうあさこさんが主演で、全く笑わない役を演じていて、面白かったです。でも、ちょっと設定が荒唐無稽すぎるのと、現実とリンクする部分があって、冷ややかに見てしまう部分もありました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。この映画は邦画なので、きっと全国の単館系映画館で上映するんじゃないかな。ロードショーするほどは、受け入れられないかもしれないけど、まぁ、楽しめるので、良いと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「鈴木さん」 https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP23