東京国際映画祭2020で「遺灰との旅」(TOKYOプレミア)を観ました。
ストーリーは、
プネーに住むカルカニスの一族。その大黒柱である家族のプール-が亡くなった。プールーは、最後に立ち会った弟に、「自分の遺灰は、ある場所に撒き、先祖の土地に埋め、パンダルプールの川に流して欲しい。それが終わったら、クローゼットに入っている手紙を読んで欲しい。」と言い残した。遺族らはそれに従い、葬儀が終わると車に遺灰を載せてパンダルプールに向けて出発する。
プールーの息子は、あまり勉強が出来ず、結婚したいと思っている女性がいるにも関らず、定職についていない。叔母は見合いを進めてくる。悩んでいるうちに、彼女が妊娠してしまう。そんな時に父親が亡くなり、心ここにあらず状態で運転している。
プールーの上の弟は、厳しく、伝統を守る事に必死。下の弟は、既に少しボケてきている。妹は、裁判所に勤めており、どうも同性愛で悩んでいるようだ。アメリカから戻った上の弟の息子は、アメリカで成功しているのかと思ったら、事業に失敗しインドに逃げ帰ってきたようだった。
道中、それぞれが抱える問題がどんどん浮き彫りになって行く。しかし皆、プールーが残した遺産があるからどうにかなるだろうと思っていた。
一方、家に残ったプール-の妻は、夫が残した貯金を清算しようと銀行に行くと、通帳が自分と同じ名前で、番号も住所も変えられていることに気が付く。通帳名義の支店に行けば調べることが出来ると言われて、まず、通帳名義になっている住所に行ってみると・・・。
それまで知らなかった夫の秘密を知ってしまった妻は、どうするのか。そして遺灰を撒きに行った一向はどうなっているのか。
というお話です。
インド発のコメディ&ヒューマンドラマです。軽く笑って楽しみながらも、現代の色々な問題を含んでいて、考えさせられました。カルカニス一族の長男が亡くなり、その葬儀から始まります。遺体を火葬しに運ぶと、薪で焼くか、ガスなどで焼くか選ぶらしく、そこら辺でも結構笑える場面があり、楽しめました。ボケたことをやりながらも、何とか火葬をしてもらい、遺灰を貰いに行くと、それ、ホントに長男の遺灰なの?って感じで拾って渡されます。骨じゃなくて、本当に灰になっているんです。
灰を受け取って、故人の遺言により遺灰を撒くために、旅に出るのですが、ここでひと悶着。兄弟には一人妹がいるのですが、上の兄が”女は来なくて良い”と言って追い返そうとするんです。でも、彼女は、裁判所で働いており、法律にも強く、進んだ考え方を持った女性で、女にも権利があると言って、一緒に遺灰を撒きに行きます。その妹、実は、同性愛らしく、問題を抱えているようで、ここでインドにもジェンダー問題が強くなってきていると言う事を表しています。
もう一人の弟は、ボケているのか天然なのか、ぼんやりしていて、大丈夫なの?っていうような行動を起こしたりします。
次に、アメリカから帰ってきた次男の息子ですが、こちらも海外留学すれば裕福になれるという考え方が強いインドで、海外に行ったからってみんなが成功する訳では無いと言う事を描いていて、彼の問題も楽しめました。
そして最後に亡くなった長男の息子ですが、彼は勉強が出来ず、何の仕事にも就けず、ニートです。隣の家の幼馴染と付き合っていますが、仕事も無いのに結婚したいとは言えず、父親からも、親族からも出来損ないのように言われて、自信がありません。父親の葬儀の日、彼女から妊娠を聞かされて、どうしようとあたふたしてしまいます。結論を引き延ばして旅に出るのですが、彼の後を、彼女がバイクで追ってきます。それでも決断出来ない彼はどうするのか。
遺灰を撒きに行く旅なのに、何故か、みんなの問題の清算旅行のようになっていきます。そして、家に残してきたプールーの妻には、大変な事が起こります。この妻に起こったことが一番大きいんじゃないかな。旅に出てる人達なんて、考えてみれば大したことないんだけど、妻は大したことがあるんです。大変そうでした。
本当に笑えて、人を当てにするんじゃないって事が解って、楽しめました。私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。日本公開してくれるといいんだけどなぁ。これ、単館系映画館なら、結構、盛り上がる映画じゃないかなと思いました。もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。映画祭では、もう一度、上映すると思います。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「遺灰との旅」 https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP06