「罪の声」を観てきました。
ストーリーは、
平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用していた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。その声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。
というお話です。
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社の社長を誘拐し、身代金を要求したのだが、誘拐された社長は自力で脱出する。すると今度は、食品会社のお菓子に毒物混入し、お金を要求してきた。犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。
大日新聞記者の文芸部に所属していた阿久津英士は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれてしまう。社会部の仕事であるこの取材を任され、渋々と社会部にいた頃のノウハウを使って聞き込みに回る毎日を過ごしていた。
一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、家族3人で幸せに暮らしていた。ある日、クリスマスツリーの飾りを探していて、父の遺品の中に古いカセットテープと手帳を見つける。テープには1984年と書かれており、何だろうと思った曽根はテープを聞いてみる。するとそこには自分の声で、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと同じものが録音されていた。
ショックを受けた曽根は、過去を必死で思い出そうとするが、録音したことなど覚えていない。かすかに伯父が動物園へ連れて行ってくれた事を思い出し、その時なのではないかと思いはじめる。手帳の方を見ると、中にはびっしりと英語で何かが書いてあり、伯父のものだと判った。ビール会社の社長誘拐についても書かれているようだった。真相が知りたいと思った曽根は、伯父の関係先を周り、調べ始める。伯父はある時からぷっつりと所在が判らなくなっているのだった。
阿久津は聞き込みをしていて、自分と同じように事件について調べている人間がいる事を知る。そしてテーラーを営む曽根を知り、彼を訪ねると、曽根は自分の声が事件に使われている声だという事を明かす。家族の事を思う曽根は、今更、真実を調べて、家族に害が及んだら困ると証言を拒むのだが、思い直して、阿久津に連絡を取り、真実を追い始める。
事件の真実を追う新聞記者の阿久津と、脅迫テープに声を使用され、知らないうちに事件に関わってしまった曽根を含む3人の子どもたち。
昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる。後は、映画を観てくださいね。
この映画、素晴らしかったです。本当に面白い映画でした。もちろん、原作も良いのだと思いますが、映画も良く出来ていました。久しぶりに邦画(アニメ以外)で、とても満足出来た作品です。このレベルまで来てくれたら、映画ファンも満足するはずです。
内容としては、”グリコ事件”を題材に、もし、あの事件の真相を追って行ったらどうなるのかという事が描かれています。何も解らない子供に脅迫の文章を読ませて、それを大人になった本人たちが知ったら、一体どうなるのか。そして、その声を吹き込むことにより、もしかしたら不幸なことに巻き込まれた子もいたかもしれないという事なんです。確かに、子供に吹き込ませるなんて、本当に外道ですよ。酷い人間がいたものです。
現代ならPCでいくらでも声の合成は出来るので、子供に読ませるなんて必要ありませんが、あの時代は、大人より、情報の少ない子供に読ませれば、声変わりもするし、判らないだろうという事だったらしいんです。でも、大人になった本人が聞いたら、ショックだろうと思います。それに、自分にそんなものを読ませたのは誰なのか、周りの人間、家族までも信用が出来なくなってしまうと思いました。
脅迫文を読まされた曽根は、ふとしたことでその事に気が付き、真実を追い始めます。そりゃ、そうですよ。周りが信用出来なくなるんですから。そんな時に、記者の阿久津と出会うんです。最初は、自分の家庭を壊すのは辞めて欲しいと言って決別するのですが、やはり事件が気になった曽根は、妻に真実を話して、阿久津と一緒に事件を追い始めます。
阿久津は、元々社会部にいたようですが、事件を追うことに疲れて
社会部から移動したんです。でも、この事件の担当に指名され、渋々と動き出す内に、真実を明らかにすることは、人を救う事にも繋がるという事に気が付くんです。阿久津は、とても優しい人柄で、誠実な人物のようでした。
本当にストーリーが面白いのですが、それ以上に、阿久津を演じた小栗さん、本当に上手くなりましたね。驚くほど成長していて、ビックリしました。ワザとらしくない表現の仕方というか、少しの動作と表情だけなのに、心に伝わってくるんです。上手く言葉で言い表せないけど、この阿久津という人物がどんな人なのか、どういう気持ちで動いているのかという事が伝わってくるんですよねぇ。久しぶりに彼の演技を観て、感動でした。ここまでレベルが上がっていれば、大河ドラマは凄いんじゃないですかね。今から期待しちゃいます。
もちろん、曽根を演じた星野さんも上手いです。彼は舞台も長くやって来てらっしゃるので、安心していられますよね。小栗さんの演技に合わせて、ピッタリと寄り添って、事件を追って行く姿は、素晴らしかったです。このコンビ、いいなぁ。お互いに尊重し合って相手を潰さないので、反対に、引き立て合うんですよね。「MIU404」の時の星野さんも良かったけど、今回は、また違った味で楽しめると思いますよ。
この映画は、内容、構成、キャストがピッタリしていて、本当に上手く噛み合わさった作品で、それほど派手な感じではありませんが、映画としては、トップクラスじゃないかしら。どの映画も、ここまでレベルを押し上げてくれたら、邦画全体の活性化になると思うんですけどね。
この映画が凄いのは、人気俳優を使って、単館系の映画ではないのに、このレベルになっているという事です。単館系の映画だと、こじんまりしたヒューマンドラマで感動作というのは多いけど、全国ロードショーで大手の映画館での上映ながら、このレベルに出来たということは凄いと思います。どうしても大手の映画会社が絡むと、利権の関係とかで、観る人に媚びた内容になる事が多いのですが、そうなってない所が、とても気に入りました。
実は、原作を読み始めているのですが、映画の公開に追いつかず、結局、映画の方を先に観てしまいました。でも、この映画は映画を先に観て正解だったかもしれません。先が見えない方が、楽しめました。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは面白い映画です。良く練られているし、構成も良くて、お話も面白い、キャストも上手いです。出来れば”グリコ事件”を知っている人が観た方が面白いかな。全く知らないと、あの時代の雰囲気や状況が想像出来ないけど、知っていると、あの時代はそうだったよねぇと考えながら観れるので、面白さが倍増します。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。