「空に住む」を観てきました。
ストーリーは、
郊外の小さな出版社に勤める直実は、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいでタワーマンションの高層階で暮らし始める。長年の相棒である黒猫ハルや、気心の知れた職場の仲間に囲まれながらも、喪失感を抱え浮遊するように生きる毎日。そんなある日、彼女は同じマンションに住む人気俳優・時戸森則と出会う。彼との夢のような逢瀬に溺れていく直実は、仕事と人生、そして愛の狭間で揺れ動き、葛藤の末にある決断を下す。
というお話です。
郊外の小さな出版社に勤める直実は、交通事故により、突然、両親を亡くしてしまう。あまりの事に茫然とし、泣けもしないまま納骨も済まして、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになる。
長く飼っている黒猫ハルとの暮らしがタワーマンションで始まり、街を見下ろす生活に少し気後れしながらも、仕事に復帰する。ある日、マンションのエレベーターに乗ると、自分と同じように、花束を持っている男性が乗っていた。ふと顔を見ると、スター俳優・時戸森則だった。窓から見える看板が時戸の顔なのだ。動揺を悟られないようにしていると、いきなりオムライス作れる?と聞かれ、何故か、家に招いてオムライスをごちそうすることになってしまう。
その日から、時戸との夢のような逢瀬に溺れはじめる。先は見えないことはわかっていたが、何となくふわふわとした感覚で、とりあえずはイイかという軽い気持ちで続けていた。
仕事場では、ワケアリ妊婦の後輩の話を聞き、それなりにやりがいのある仕事を進めていたのだが、両親が亡くなってから喪失感を覚えて、それが消えることが無い。何となく現実から逃避したままの生活を続けていたのだが、ある日、直実にとって重大な事件が起こる。それは、両親が亡くなった以上に直実に大きな衝撃を与え、重くのしかかってきた。
以前よりももっと人を遠ざけ、ひとりで殻に閉じこもって、現実から逃避してしまう直実。しかし、ある人から、地球で平行線だった人と人でも、宇宙に進んで行けば交わる時が来るらしいですよ、という言葉を聞いて、涙が溢れだす。そして現実を見据え、自分が生きるべき場所を見つけて前に進む為に、ある決断をする。後は、映画を観てくださいね。
この映画、私は好きでした。いつも自分は一人なんだって思ってしまっていた直実が、沢山の人が周りに居て助けてくれていたことに気が付き、頑張らない生き方でイイんだと感じ、地に足を着けて生きて行く事を選んでいく姿が良かったです。
日常の中で、様々な驚くような事もあるけど、過ぎてしまえば思い出になるし、細かいことにいつまでもこだわる必要は無いと割り切って、新しい明日を生きて行くという感じが、とても気持ちを楽にしてくれる映画でした。
両親を交通事故で亡くし、突然に一人になってしまった直実は、自分が全く泣けないことに驚きます。考えてみれば、父親は仕事が忙しく、母親は父親の事ばかりを気にかけていて、一人っ子の直実は、いつも一人で何でも決めてきていたんです。私にとって、両親は何だったんだろうなんて思ってしまう直実ですが、叔父の言葉を聞いていると、父親は直実をとても思っており、ただ、伝えるのが下手な人だったのかなと感じました。両親は、直実を構わなかったのではなく、一人でも生きて行けるようにと育てたのではないかなと思いました。
タワーマンションに引っ越して、会社の同僚に羨ましがられる直実ですが、見ていると、イマイチ、住み心地が良くないように見えました。猫のハルも、タワマンに引っ越してストレスで病気になったのかもという事もあるんです。元々、マンションなどで生活していた方はそれほど気にならないのかもしれないけど、子供の頃から戸建などに住んでいると、それこそ、目の前が空で眼下に街が広がっているって、落ち着かないんですよ。だから、この直実の気持ちが良く解りました。でも、そのうち、住んでいるところなんて、どこでも一緒になっちゃうんですけどね。大体、外を見なくなるから。私もそうですもん。
直実の周りには、はっきり言って、クズだなって人が沢山いました。彼氏の子ではなく作家の子供を妊娠しているのに誤魔化して、彼氏の子供として出来ちゃった婚をしようとしている後輩。その後輩を妊娠させて知らない振りをしている妻子持ちの作家。直実と関係を持っていながら、何人もの女性とも付き合っているスター俳優の時戸。どれもクズでしょ。でも、それで幸せなら、別にクズでもイイんですよね。そんなもんだって思ってしまえば、それまでなんです。それこそ純血種である必要は無く、雑種で十分。野良犬のように、自分が生きる事で精一杯でいいんです。
それでも、やっぱり直実の後輩は酷いかなと思いました。結婚相手は知らない訳でしょ。最初から騙されているなんて可愛そうですよね。まるでカッコウに托卵されたような感じで、育ってくると自分と違うって気が付くんだろうなぁ。悲劇です。
時戸というスター俳優ですが、コイツが酷いのよ。映画の中では、それほど描かれていないけど、明日子さんが”あの子、いつも違う女の子を連れているのよ。”という場面があって、直実が時戸のクズっぷりを知るんですけど、原作ではもっと酷いクズらしいです。ま、こういう人って、そんなもんだと思って期待はしていないけど、それなら写真を出されてスキャンダルになっても文句は言えないわよね。自業自得ですもん。あ、もちろん、直実はそんな事はしませんよ。
なんか、ごめんなさい。感想もぼや~とした感じでしょ。映画自体が、こんな感じなので、どうしても感想もぼや~んとしてしまうんです。掴みどころがないというのかしら。でも、そんな映画の中に、一人の女性が、自分の足で前に進み始めるという姿が描かれていて、観終わると、なんか、肩の力が抜けて、イイ感じになるんです。力まなくていいよ、頑張らなくていいよって言われているような映画でした。
私、多部未華子さんの演技が好きで、彼女の映画やドラマは出来るだけ観たいと思っているんです。彼女を最初に観たのは、「ヒノキオ」という映画で、その時は男の子として登場して、実は女の子という役で、不思議な魅力の子だなって思っていました。そんな彼女が演技派となって、舞台でも活躍してくれていて、その自然な演技から目が離せなくなったんです。これからも観て行きたい女優さんです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。映画を観るぞ!って意気込んで観に行く映画ではなく、時間が空いたから観てみようかなという感じで観て欲しい映画です。良い人ではなく、正義ではないけれど、人は愛おしいんだよって思える映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。