「行き止まりの世界に生まれて」を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので、内容は、
かつて栄えていた産業が衰退し、アメリカの繁栄から取り残された「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」に位置するイリノイ州ロックフォード。
キアー、ザック、ビンの3人は、それぞれ貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードに熱中していく。スケート仲間は彼らにとって唯一の居場所であり、もうひとつの家族だった。
そんな彼らも成長するにつれ様々な現実に直面し、少しずつ道を違えていく。低賃金の仕事を始めたキアー、父親になったザック、そして映画監督になったビン。
幼い頃からスケートビデオを撮りためてきたビンのカメラは、明るく見える3人の悲惨な過去や葛藤、思わぬ一面を浮かび上がらせていく。そんな彼らの姿を通して、親子、男女、貧困、人種といった様々な分断を見つめ、アメリカの知られざる現実を映し出す。
というお話です。
この映画ですが、アメリカの産業が衰退しアメリカの繁栄から見放された、通称ラストベルト(錆び付いた工業地帯)に暮らす青年たちのドキュメンタリー映画です。中国系アメリカ人のビンは、スケボ仲間をビデオで撮影し始めて、彼らと自分の青年期をずっと撮り続けていました。
まだ若い頃は無邪気に遊んでいる彼らでしたが、大人になるにつれ、少しづつ変わっていき、自分の生活環境が良くないことに気が付き、その場所から抜け出して行きたいと考え始めます。親からDVを受けたり、ネグレクトだったり、その辛い生活環境は様々で、簡単に抜け出したいと思っても、簡単には行きません。それに、まともな教育も受けられない為に、仕事に就こうと思っても出来るところがないんです。
キアーという黒人の少年は、子供の頃から、どんなに同じ地域に住んでいても、白人とは違うのだから気を付けなさいと親から言われ、理不尽な迫害があることを、嫌と言うほど叩き込まれてきました。仲間のザックは白人、ビンはアジア人、それぞれ一緒に育ってきても、同じではないというんです。キアーは地道に仕事を始め、この地域から抜け出す為に、都会の仕事を探し始めます。
ザックは、付き合っていた女性が妊娠し、子供が産まれます。しかし、ザックはアルコール依存症であり、酔っぱらうと暴力を振るうんです。女性は子供を連れてザックから去って行き、時々、ザックは子供に会わせて貰えます。ビンが、ザックにDVを受けているなら、ちゃんと訴えるべきだと助言するのですが、彼女は優しい時もあるからと言って、ザックを訴えようとしないんです。そういう部分が相手のDVを助長し、何も解決しないと話していました。きっと暴力を振るう方は、訴えられない限り、それが悪い事だと解らないのだと思いました。子供の頃から、自分も受けてきているので、悪いと感じないんです。それが、この町でした。
その後、ザックは、新しい恋人が出来て、屋根職人の仕事を得て、マトモに働き始めます。しかし、この地域からは出て行かないので、その良い状態がいつまで続くのかは、誰にも解りません。
ビンですが、彼は友人の映像ばかりを取っていたので、最後に自分の映像を撮り始めます。ビンは、子供の頃に母親が再婚し、その再婚相手に酷いDVを受けていました。今まで、母親に面と向かってその事を話したことが無いので、初めてカメラを向けて、自分がDVを受けていたと訴えます。母親は知らなかったと言い、今は悪かったと思っていると泣きながら話します。既に、その再婚相手とは別れ、新しいパートナーがいるようでした。ビンは、母親が幸せになる事に不満はありませんが、ずっと長い間、DVを受けていたのは辛かったと訴えます。
この衰退した地域で、夢を見ながら活き活きと暮らしていくなんて出来ず、どうしたらいいのかと考えながら青年期を過ごす彼らの映像を見ながら、色々と考えさせられました。日本でも、このコロナ禍で貧困層が増えているという報道がよく聞かれます。じゃ、働けばいいじゃないかと思いますが、その働く場所がないとなると、どうしようもないですよね。
彼らだって、向上心はあるんです。もっとこうなりたい、仕事をしたい、幸せになりたいって思っているのに、その地域から抜け出せない。それなら、ここでも出来る事をしてみようと動き出す彼らの姿は、何とも言えずに感動を与えてくれました。ただ、諦めて、飲んだくれて座っているのではなく、もがいて、もがいて、前に進み始める姿は素晴らしいと思いました。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。ドキュメンタリー映画なので、好き嫌いがあると思いますが、今の社会情勢とも被るような部分もあり、考えさせられる作品でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。