「博士と狂人」をオンライン試写会で観ました。Fan's Voiceさん(@fansvoicejp)の独占最速試写会でした。
ストーリーは、
貧しい家庭に生まれ、学士号を持たない異端の学者マレー。エリートでありながら、精神を病んだアメリカ人の元軍医で殺人犯のマイナー。2人の天才は、辞典作りという壮大なロマンを共有し、固い絆で結ばれていく。しかし、犯罪者が大英帝国の威信をかけた辞典作りに協力していることが明るみとなり、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込んだ事態へと発展してしまう。
というお話です。
19世紀、独学で言語学博士となったマレーは、オックスフォード大学で英語辞典編纂計画の中心にいた。今まで彼は、貧しい家に生まれ、大学にも行けず、学士号を持っておらず、いくら実力があると言ってもと周りから言われ、需要な仕事には就かせてもらえなかったのだ。辞典の編纂に任命され、自分の一生の仕事だと考えて取り組んでいた。
少人数での辞典の編纂では、膨大な資料を調べるのに時間がかかってしまい、何百年かかってもまとめられる訳が無い。マレーは、一般の人々にも言葉を集めて貰い、それをまとめて行けば、言語を探す時間が短時間で済むと考え、辞書の言葉を公募することにする。
同じ頃、ある町で殺人を犯したアメリカ人・マイナーが精神病院に収監されていた。彼はエリートで軍医だったのだが、戦争時に心を病み、町を歩いていた男性を自分の敵だと思い、撃ち殺してしまったのだ。マイナーは、自分が殺してしまった男性の妻と子供たちに償いをしたいと思い、看守のマンシーに頼み、お金などを送るのだが断られてしまう。それでもと食べ物などを送り続け、彼に根負けした妻イライザは、彼からの贈り物を貰い始める。
ある日マイナーは、新聞の記事を読み、辞典の言葉を送り始める。彼はとんでもない数の書籍を読み、そこから言葉を拾い集め、大量の手紙をマレーに送った。
マレーは大量の資料に喜び、マイナーの協力を受けながら、順調に辞典の作成に取り掛かっていた。しかし、こんなにも多くの素晴らしい資料を誰が書いているのか、全く知らなかったマレーだが、ある時、殺人犯で精神病院に収監されているアメリカ人であることを知る。そして、その事実が新聞に載ることになり・・・。後は、映画を観てくださいね。
日本でも「舟を編む」という辞書を編纂する映画が作られましたが、そのもっともっと昔、最初の辞書というモノを創った方々のお話です。辞書って、オックスフォード大学が最初に作ったんですねぇ。この映画で知りましたよ。言葉を集めて、その意味を集めてって、考えただけでも気が遠くなるような気がする。何か解らないと、直ぐにスマホを出して調べられるって、本当に幸せなんだなぁ。でも、今、ヴィキとかがあるのは、このオックスフォードの辞典が最初に作られたからなんですよね。凄い事だなぁと改めて思いました。
このマレーさんという方は、大学に行かず、学士号も持っていないのに、博士になれたというのが凄いなぁと思いました。この時代の博士号の取得に何が必要だったのかは判りませんが、学会での発表や論文の発表は必須でしょ。大学に在籍していないで博士になるって、どうやったんだろう。想像がつきません。
で、博士として大学で働いていたのだと思いますが、そりゃ、他の博士たちは、大学に通い、論文を書いて、地道に活動をしてその地位を確立したのだろうから、外からやって来たマレーに反感の目を向けるのは当たり前ですよ。この大学を卒業もしていないのに、なんでお前が大学の辞書の編纂の責任者になるんだよって思われるわよね。それでも、頭の良かったマレーは、着々と辞書の編纂を進めていきます。もちろん、マイナーの協力が無くては終わらなかったと思うけどね。
マイナーは、それこそエリート一直線だったんじゃないかと思います。軍での服装を見ると凄くカッコいいし、まして軍医でしょ。頭が良かったんだと思いますが、戦争で、軍の中で起こっていた色々な問題が彼の精神を壊してしまったんです。人を助けるのが医者なのに、殺す現場に居たんですから、おかしくなって行きますよ。戦後も、誰かに追われている、誰かが殺しに来ると思っていて、いつも脅えて暮らしていたんです。そして、自分を殺しに来た男だと思って銃で撃ち殺したら、普通の人だったんです。この頃は、まだ、PTSDなどの認識が無かっただろうから、精神を病んでも、そのまま放置されたようです。もし、カウンセリングなどをしていれば、もう少し、よかったかもしれないのにね。
このマイナーのお話には、マイナーに殺された男の妻と子供が深く関わってきます。結構、この部分が私は感動でした。自分の夫を殺した男を許せないのが当たり前なんだけど、マイナーが献身的に謝罪し、補助をして、段々と、距離が縮まって行きます。決して、許しを請うような態度はしないんだけど、悪いと思っている気持ちが凄く伝わるんです。これこそが謝罪だと思いました。ここまでしたら、被害者の家族も許さざるを得なくなるんじゃないかなと思いました。
内容はとっても良いんだけど、映画としては、ちょっと観難いと思いました。辞書を編纂しているマレー側と、協力するマイナー側がずーっとバラバラに描かれていて、いつまでもリンクしないんです。お互いの事件が解決してから、やっと近づき始めるのですが、それが長いので、ちょっと疲れます。映画館で観ていたら、ウトウトしちゃうかもしれません。でも、近づいてからは、色々な展開をして、少しネタバレになるけど、ロボトミー手術らしきものも出てきたりして、驚きました。この時代、そんなことがあったんですね。ロボトミー手術というと、「カッコーの巣の上で」や「時計じかけのオレンジ」を思い出して、ワクワクしちゃいました。
世界で初めての辞書編纂作業であり、驚くような出来事が重なって出来たという事が解り、そりゃ、この原作がベストセラーになるのは当たり前だなって思いました。お話としては、とても面白いです。映画としては、ちょっと観難いけど、最後まで見ると、スッキリしますよ。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。但し、単館系の映画なので、難しい事をじっくり観ていくのが苦手な方には、大変かもしれません。でも、こんな事があったんだと思うと、何事もスマホで調べられる現代は素晴らしいと思いますよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。