「青くて痛くて脆い」を観てきました。
ストーリーは、
コミュニケーションが苦手で他人と距離を置いてしまう田端楓と、理想を目指すあまり空気の読めない発言を連発して周囲から浮いている秋好寿乃。ひとりぼっち同士の大学生2人は「世界を変える」という大それた目標を掲げる秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げるが、秋好は「この世界」からいなくなってしまった。その後のモアイは、当初の理想とはかけ離れた、コネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルへ成り下がってしまう。そして、取り残されてしまった田端の怒りや憎しみが暴走する。どんな手段を使ってもモアイを破壊し、秋好がかなえたかった夢を取り戻すため、田端は親友や後輩と手を組んで「モアイ奪還計画」を企てる。
というお話です。
就職の内定を貰い、一段落ついた大学生の田端楓は、ある計画を実行しようとしていた。
カフェでお茶をしていた田端と前川は、同じカフェで忙しそうに動いている”モアイ”というサークルの人間を目障りそうに見つめている。「あいつらウザいよなぁ。」という前川に、「俺、モアイを潰そうと思ってる。手伝うか?」と田端が声をかける。
田端は大学に入学して直ぐに、授業中に空気の読めない質問などをして周囲から浮きまくっている秋好寿乃と出会う。田端は人付合いが苦手で、常に人と距離を取ろうとする性格であり、秋好もヤバい奴だと思い、近寄らないようにしていたのだが、一人でいるところに声をかけられ、逃げられなくなってしまう。
それから話をする内に、段々と彼女の言う「世界を変えたい」「暴力は根絶出来る」という考えに同調し、一緒に秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げる。ボランティアやフリースクールなどの慈善活動を始め、周りからは理想論と馬鹿にされながらも、モアイは田端と秋好にとって大切な居場所になっていった。
しかし、院生の脇坂がサークルへ参加してきたことによりサークルの活動に変化が現れ、その後、田端の前から秋好が消えてしまった。彼の秋好は死んでしまったのだった。
モアイは田端の手を離れ、学生たちが社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルに成り下がってしまった。
就活を終えた田端は、秋好を奪ったモアイを潰す計画を実行し始めようとしていた。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、凄く面白いとは思うんだけど、深くて簡単に理解出来たとは言えない映画だなと思いました。大学の頃って、大学受験に合格したって事で少し自信を持ち始めた若者が、理想をぶち立てて、無理に押し通そうとするようなところがあるのよね。オバサンから言うと、大学に受かったのは第一歩で、これから山ほど壁があるんだけどなぁって冷ややかな目で見てしまうんだけど、まぁ、理想は良い事だよ。
この秋好は、授業中に先生に質問があると手を上げて、聞いてくれるまで手を下げないんです。仕方なく質問を聞くと、「暴力は無くせる。世界は変えられる。」と言い放つんです。マジで空気読めねーなーって感じで、他の生徒たちの邪魔になっている事に気が付かないんです。こういう子がいると、本当に困るよね。そんな理想は、もう何千年も前から言われていて、今も実現してない事に気が付けよって思うけど、気付かないんだよねぇ。
この「キレイ事」って、誰もが願っているけど実現はしないんです。もし、実現させたいなら、全ての人間から感情を取り去るしかない。ロボットにすれば、実現することなんです。そんなキレイ事を掲げて「モアイ」というサークルを作るんですが、”争いを無くそう、暴力を無くそう”と活動をしているのに、サークルの中でのそれぞれの感情が怒りや憎しみを生んで、最終的にサークルを潰すことになってしまう。人間ならではの出来事なんだけど、それをこの若者たちが理解したのかどうかは、解らないなぁと思いました。
秋好という子は、空気が読めなくて理想を言い続けるのですが、観ていて、これは人に対しての感情が無いから出来るのかなと思いました。自分以外の人間を、あまり意識してない、同等の人間として見ていないのではないかと感じました。だから怒りも沸かないし、優しく出来るのは相手を下に見ているからだと思いました。実は、このキャラクターが一番曲者で、一番人間的ではないんです。最近の若い子で、相手の気持ちが一切理解出来ない子が実際にいるから、こんな子もいるんでしょうね。感情の無い人間は自分の事だけだから、関わりたくないですね。それこそ利用されただけって事になっちゃう。
そんな秋好に目を付けられ振り回されるのが田端で、彼は真面目な分、大きく彼女に傷つけられてしまったのだと思いました。普通の人間が、彼女のような感情が少ない人間に振り回されたら、全く理解が出来ないし、辛くなるだけだと思いました。だから、こんなにモアイに対しての憎しみが大きくなり、「駆逐してやる!」あ、間違えた、「潰してやる!」って思ったのだと思います。
この秋好以外は結構、普通の若者で、田端の友人の前川も素直に人を見ていて、前川の後輩の”ポンちゃん”は、見ていない振りをしながら、全てを理解している頭の良い子でした。モアイ幹部のテンも、普通の青年だったなぁ。見る人間によって、サークルがドス黒いモノに見えたり、清いモノに見えたりすることも描かれていました。まぁ、大学のサークルなんて、ほとんどがドス黒いんだけどね。
映画自体が、田端の心の中を描いているので、田端に憎しみがある時は何となく暗く、そうでない時は明るめに作ってありました。でも、映画の構成で、過去と現在が行き来する部分が、ちょっと解り難かったです。もう少し、シンプルに描けなかったのかなぁ。本だと、戻って読み返すことが出来るけど、映画は巻き戻しが出来ないので、少し考えて欲しかったと思いました。
田端役の吉沢くん、やっぱり上手いねぇ。やる事やっちゃって、怖くなる部分とかの表情がたまりませんでした。杉咲さんは、優しそうな顔で人の気持ちを全く理解していない秋好を、とってもウザく表現してくれていて楽しめました。マジでこんな女、ウザいわっ!岡山さんと松本さんが良かったなぁ。この二人、イイですよね。好きです。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。とても良い映画なのですが、構成がちょっと観難いのと、これ、秋好の人間性が欠けているという描き方で良いのかしら。私、この作品は、原作を読んでいないので、原作も秋好の人間性が欠けているなら良いのですが、映画だけロボット的だとどうなんだろうって心配になりました。映画としてはストーリーが面白いし、憎しみで周りが見えなくなっていく田端の姿が良く描かれていると思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。