「幸せへのまわり道」を観てきました。
ストーリーは、
雑誌記者としてキャリアを築いてきたロイド・ボーゲルは、姉の結婚式に招待され、そこで長らく絶縁していた父ジェリーと再会する。家庭を顧みず自分たち姉弟を捨てた父を、ロイドはいまだ許せずにいた。数日後、仕事で子ども向け番組の司会者として人気のフレッド・ロジャースを取材することになったロイド。フレッドは、会って間もないロイドが抱えている家族の問題や心のわだかまりを見抜き、ロイドもそんなフレッドの不思議な人柄にひかれていく。やがて2人は公私ともに交流を深めていくが・・・。
というお話です。
ロイド・ヴォ―ゲルは、雑誌記者として華々しいキャリアを積んできた。今は愛する妻と生まれたばかりの子どもと暮らしている。
ある日、ロイドは姉の結婚式に招待され、式場で絶縁していた父・ジェリーと再会を果たす。ロイドは、家庭を顧みず自分たち姉弟と母親を捨てた父を許せずにいた。母親は病で酷く苦しみ、叫びながら死んでいったのだ。式を切り上げて帰ろうとするロイドの前にジュリーが現れ、話をしようとするが、どうしても父を許せないロイドは母親を思い出す事を言われ、ジュリーに手を上げてしまい、殴り合いになってしまう。
顔に殴られた傷を負ったまま、仕事に出なければならず、誤魔化しながら会社に行くと、子供向けの番組司会者・フレッド・ロジャースにインタビューをして、短い記事を書くようにと上司に言われる。こういう記事は自分の仕事ではないと文句を言うと、ロイドの記事が辛辣であり、誰もインタビューを受けたがらない。唯一、受けてくれたのがフレッド・ロジャースだと言われてしまう。
それから数日後、ロイドはピッツバーグのスタジオで撮影をしているフレッド・ロジャースに会いに行く。フレッドはロイドを一目見て、何か彼が家族の問題を抱えていることに気が付き、ロイドがインタビューをしているのに、反対に質問攻めにしていた。しかし、自分の家族の問題を他人に話したくないロイドは、誤魔化し、話したくないと拒絶する。
フレッドは、そんなロイドに少しづつ歩み寄り、どんなに酷い質問をされても怒らず、根気強く彼の問題を引き出していく。知らず知らず、フレッドに惹かれていくロイド。彼なら、自分の苦しみを取り除けるのではと思い始め・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、良かったなぁ~。人間、誰しもが怒りを抱えているけど、それを表に出さず、抑える方法を沢山しっているフレッド・ロジャース。周りからは、温厚で素晴らしい人物だと評されるけど、自分はヒーローではなくて、普通の人間と同じように怒ったり、苦しんだりするけど、それを抑える方法を知っているだけなのだと記者のロイドに話すんです。そんな最初のインタビューから、二人はどんどん距離が近づいて行きます。
ロイドは、母親と自分を捨てた父親を恨んでいて、どうしても許せないと思っているんです。まぁ、当たり前よね。女遊びばかりをして、家に帰ってこなくなった男なんて、誰が許せるかっつーの。妻なら、バカな男なんて忘れて次に行こうって思えばよいけど、子供は血が繋がっているから、簡単に縁は切れないですよね。二度と会いたくないと思っても、どうしても関わってくる父親に怒りが混み上げて、喧嘩をしてしまう。そんなロイドの気持ちに気が付いたフレッドは、怒りを抑えて、父親と向き合ってみると良いと思うよって話しかけるんです。直接は言わないけど、そう感じるように、上手く話すんですよ。
最初ロイドは、フレッドはキレイ事ばかり言っていて、実は心の中は貪欲な奴じゃないかと疑っていたんです。でも、どんなにインタビューしても、取材しても、悪い部分が出てこない。そんなロイドに、何故か、フレッドがどんどん近づいてくるんです。全国民に愛されるような男が、なんで俺なんかに興味を持つんだろうと不思議に思うロイドですが、それこそがフレッドという人、そのものなんです。
フレッドは、本当に聖人のような人に見えるのですが、実はいつも怒りを抑えている事が解ります。ピアノを叩いたり、ちょっとしたことで、自分の怒りを抑えているんです。映画の中盤で、ロイドがフレッドを怒らせようと、”息子さんたちは聖人の息子と言われて大変だったでしょうね。”みたいな嫌味を言うんです。それでもフレッドは怒らずに、息子と自分の関係を静かに話します。ここで、フレッドが人間で、子供と向き合って苦労してきたことが解ります。結構、この場面で感動しました。
誰だって、楽しそうに見えても苦しい部分を持っているし、美しく見えても心にドス黒いものを抱えていたりするし、完璧な人間なんていないんです。どこかおかしくて、壊れていて、汚くて、歪んでいて、狂っているんだけど、そのバランスを保つことで上手く生きていけるんです。だから、どこかで自分を許して、相手も許して行かないと、いつまでも怒りを抱えて苦しいだけになっちゃうんですよね。許しすぎるのも、問題だと思うけど。(笑)
凄く考えさせてくれる、温かい映画でした。このフレッド・ロジャースさんと雑誌記者のロイド・ヴォーゲルさんは実在の人物です。既にフレッドさんは亡くなり、ロイドさんはどうなのかな?この映画は、ロイドさんが雑誌「エスクァイア」に書いた記事を原作としています。有名司会者と記者の間に、こんな事があったなんて、素敵なお話でした。トム・ハンクスさんがフレッドを好演していますよ。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。心が温かくなる素晴らしい映画でした。あまり上映館が無いので残念です。この映画、出来たら小学校、中学校の子供にも観て欲しいな。怒りを覚える事は沢山あるだろうけど、怒るだけじゃない解決法もあるんだという事を知って欲しいです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S : 最後に一言。邦題が良くないですね。原題の「a beautiful day in the neighborhood」の方が良かったのに。以前、これと同じ邦題がインド映画でもあったような気がします。もう少し考えて欲しかった。良い映画なのに勿体ないです。