「劇場」を観てきました。Amazonプライムで観れるのは解っていたのですが、やっぱり映画館でやっているなら映画館で観ようかなと思って、お気に入りの映画館ジャック&ベティで観てきました。
ストーリーは、
中学からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田。しかし、永田の作り上げる前衛的な作風は酷評され、客足も伸びず、ついに劇団員たちも永田を見放し、劇団は解散状態となってしまう。
厳しい現実と理想とする演劇のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独と戦っていた。そんなある日、永田は画廊に飾ってある絵に惹かれ、同じようにその絵を見ている女性に気が付く。彼女は自分と同じスニーカーを履いていて、何となく気になり、彼女に声をかける。沙希は女優になる夢を抱いて上京し、服飾の大学に通っている学生だった。
こうして2人の恋ははじまり、お金のない永田が沙希の部屋に転がり込む形で2人の生活がスタートする。沙希は自分の夢を重ねるかのように永田を応援し、永田も自分を理解し支えてくれる沙希を大切に思いながら、理想と現実と間を埋めるかのようにますます演劇にのめりこんでいく。
永田はどんどん沙希のヒモ状態となり、遊んでいる訳ではないのだが仕事をせずに演劇の脚本を書くためと言って、ふらふらする毎日を過ごすようになる。沙希は学校へも行かなくなり、昼も夜もバイトを入れて働くようになって行った。そして自分の事しか考えない永田は、沙希が段々と壊れて行っている事に気が付かず・・・。後は、映画を観てくださいね。
行定監督作品なので、とっても心の動きを繊細に描いていて、じわじわと心に沁みてくるような、そんな雰囲気の映画でした。この映画、コロナの影響で単館系映画館での公開になり、Amazonプライムでの配信となったと思うのですが、結構、このパターンも良いのかもしれない思いました。
映画館だけだと、興味を持っても映画館まで行くのが面倒と言う方って結構多いんですよ。それに、これだけコロナ感染が広がっていたら、映画館は怖いと誰もが思うと思うんです。それなら、沢山の方に観ていただける配信が良いですよね。劇場以外でも映画の可能性を広げて行かないと、業界が死んでしまいます。なので、賛否があると思いますが、この映画の選択は、今後の映画界の為には良かったと思いました。
映画ですが、良かったです。原作は読んでいたのですが、何というか、行定監督の色が入ったおかげで肉厚になったというか、若い頃のもがいてももがいても抜けられないモヤモヤした時間が、よく描かれていたような気がしました。行定監督って、ちょっと湿気の多い暗くて落ち着く場所みたいな雰囲気を描くのが上手いんですよね。三浦さんが主演した映画「真夜中の五分前」や舞台「タンゴ・冬の終わりに」でも、静かな空間の中に、じっくり思いが伝わっていくような、そんな雰囲気で、今回も、相手を思いながらも、それを行動に移せない姿が、しっとり、じっくりと伝わってきました。
若い頃って、理想を描いて、それ以外の事が許せないんですよね。ある程度で手を打つなんて事が出来ないから、周りが見えなくなってしまう。きっと、誰もが若い頃に通ってきた道だと思うんです。年を取って、若い頃に書いたものとかを読むと、もう、恥ずかしくて、よくこんな事を書いていたなぁと思ってしまう。でも、そこには、若い頃にだけ見える風景が描かれていて、年を取ると、それが眩しく見えるんです。恥ずかしいけど、年を取ったら見ることが出来ないものが描かれていて、懐かしく思うんです。そんな感じが、映画で良く描かれていたと思いました。
永田は理想に燃えていて、自分はデキる奴だと思っているから、周りをバカにしてるんです。自分が裸の王様だって解ってないのよね。そんな彼を好きになっちゃった沙希は、彼を信奉していて、彼が書く脚本も演出する舞台も素晴らしいと思っているんです。でも、それは二人だけの世界で、外部と接触すると、全くと言って良いほど太刀打ちできないの。うんうん、よくありますよ。演劇やお笑い、映画でも、建築でも、若い時はこんなよね。私も自分が設計した建物は素晴らしいと思っていたけど、只のオナニーなのよ。目の前にはお客様がいるという事に気が付かないんです。でも、そんな時代を歩むことは大切な時間で、それがあったからこそ、今がある。自分の過去も大切にしないとね。
永田役の山崎さん、いつもの明るい青年役ではなく、斬新に見えましたが、上手く演じていたと思いました。本当に成長したんですね。上手かったです。その作品や監督によって、ちゃんと役を演じ分けて、素晴らしいものになっていました。役者って、どんどん上手くなっていくからビックリしちゃいますね。それに対して、松岡さんも良かったです。彼女は、優しくて可愛くて、儚い存在でした。バランスが良かったです。
ああー、良い映画だったので、感想も長くなってしまいました。私は、やっぱり映画館で観て正解だったと思います。家で観ると、集中して観れないので、感動がこれほど無かったかもしれません。でも、しばらくしたら、Amazonプライムでも観てみようかな。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。私は、こういう雰囲気の映画、好きなんです。というか、行定監督の作品が好きなのかな。出来れば大画面で観た方が、感動が大きいと思います。でも、配信で観ても良いと思いますよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()






