「37セカンズ」障害者を子供に持ったからって母親が苦しむ必要は無いんです。自由に幸せになれます。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「37セカンズ」を観てきました。

 

ストーリーは、

脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい・・・。

というお話です。

 

 
脳性麻痺という障害を持ったユマ。生まれた時に、たった37秒息をしていなかったことで、障害を抱えてしまった。既に成人した彼女だが、母親の手厚い介護の元、リハビリをしたり、仕事をしたりしていた。
 
ユマは、漫画を描くのが上手く、自分で作品を描いていたのだが、障害があると言う事で表に出れず、友人のゴーストライターとして漫画を描いていた。しかし、ユマは自分の名前で出したいと思っており、不満を抱えていた。ある日、アイドル系の漫画ではなく、ジャンルの違う成人向け漫画なら友人と被らないだろうと考え、成人向け編集者へ作品を持ち込んでみる。すると、編集長の女性に、SEXの経験が無いのに成人漫画を描くのは難しいと言われてしまう。
 
 
自分の経験の無さを感じたユマは、風俗店に行きSEXの経験をしてみようとするのだが失敗。帰ろうとするのだが、そこで障がい者相手のデリヘル嬢と介護士に出会う。障害があろうと、同じように接してくれる彼らとの出会いが、ユマの認識を変えていく。ユマは、自分だけで出かけて、行きたいところへ行くという、今まで母親の過保護の為に出来なかったことをやり始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、良い映画だったなぁ。本当に感動しました。障害者を主人公にした映画ですが、これまでのようにお涙頂戴の内容じゃないんです。主人公の彼女の心情も描きながら、その母親がどんな気持ちで育ててきたのか、過保護過ぎるように見えるけど、愛しているからこそ守らなきゃという気持ちが強くなってうるさく言ってしまうという事が、とても良く描かれているんです。

 

 

ユマは、母親と二人で生活をしていて、全て母親がユマの面倒を見ているんです。何処へ出かけるにも母親が付いて行くか、または携帯で連絡をして近くのバス停までの送り迎えをしてくれています。なので、ユマは、いつも監視されているような、息苦しさを感じていました。それに、成人した女の子なので、それなりに性にも興味があり、それを母親には言えない苦しさもありました。

 

そして、とうとう一人で出歩くようになるのですが、沢山の危険が付きまといます。誰もが良い人ではないし、当たり前ですよ。でも、そんな時に、障がい者向けのデリヘル嬢に出会うんです。運が良いですよね。それで、新しい世界を知り、大きな冒険に繋がっていくのですが、いやぁ、本当に良かった。このユマを演じている佳山明さんは、初めての演技らしいのですが、上手かったと思います。

 

 

あの「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のザックさんも初めての演技で、あの素晴らしい映画が出来上がっているんだけど、この映画も、佳山さんの演技があり、周りをベテランの素晴らしい役者が固めているので、こんな奇跡のような映画が出来ているのだと思いました。佳山さんも素晴らしいけど、周りの役者さん、ハンパない人が集まってましたね。今、トップクラスの役者さんですよ。

 

母親役の神野三鈴さんと言えば、もう舞台女優としては大ベテランで、彼女が出演すれば舞台は成功すると言うくらいの人物ですし、渡辺真起子さん、板谷由夏さん、大東駿介さん、渋川清彦さんなど、主演を張れる人に加え、ちょっとだけの出演で、奥野瑛太さん、石橋静河さん、尾美としのりさん、宇野祥平さんなども出ていて、驚くのが、あの映画「パーフェクト・レボリューション」の実話の本人である熊篠さんが出演されていました。”特定非営利活動法人ノアール”の代表でもある熊篠さん、今も頑張ってらっしゃるようで嬉しくなりました。

 

 

この作品の素晴らしい所は、障がい者本人だけを描くのではなく、その母親の気持ちもキチンと描いているという事です。セリフなどで説明するのではなく、動きや仕草で解るんです。ユマを生んだ時に37秒、息が出来ずに脳性麻痺になってしまったのは、自分の責任だと自分に言い聞かせているように、母親はユマの面倒を見るんです。自分がしっかり産めなかったせいでと悲鳴を上げているようで、それはユマも辛くなりますよ。でも母親は、どうしてもそう思ってしまうし、自分だけが面倒を見なければと思っている。でも、違うんですよね。もう、障害も受け入れて、それで自由に楽しく生きる道があるのだから、表から逃げる必要は無いんです。そういう事にユマが先に気が付いて、母親から離れて行動するようになるんです。

 

 

父親はおらず、ユマは出て行ったと思っていたのですが、実は、最後の方で、キチンと理由が描かれていました。それに、他にも色々な事実があるのですが、それは、映画を観て欲しいかな。母親と二人なのは、父親に捨てられたからと思っていたことは間違いだったことを知り、その上、母親がどんな気持ちで一人でユマを育ててくれていたのかという事も解明されて、本当に感動しました。あまりにも深い愛のお話で、言葉が出なくなるほどでした。

 

この映画、本当は東京国際映画祭で上映されたので、その時に観たかったのですが、時間が合わずに、公開を待って、やっと観れました。私、この映画に出演されている渡辺真起子さんが大好きなんです。オールマイティの方ですよ。彼女が出演している映画で、酷い作品は無いですもん。素晴らしいです。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。ここ最近では、最高の映画でした。母親の思いが痛いほど伝わってきて、本当に素晴らしかったです。日本映画も、こんなに良い映画があるのに、どうして、こういう素晴らしい映画を日本ア〇デミー賞とかに取り上げないのかしら。映画会社の取り決めで全て決まっているから、外から入ってくる作品は全く取り上げられないのだろうけど、まぁ、酷いですよね。何が映画賞だっつーの。持ち回りで賞をとっかえひっかえするなら、何の意味も無いと判らないのかな?日本の映画業界も、もう少し成長して欲しいものです。恥ずかしいです。ぜひ、この映画、観てみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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