舞台「月の獣」を観てきました。
ストーリーは、
穴の開いた奇妙な家族写真を見つめる紳士が語りだす。
「私は二人の証人」と。
第一次世界大戦の終戦から3年が経った1921年、アメリカ・ミルウォーキー。
生まれ育ったオスマン帝国(現・トルコ)の迫害により家族を失い、一人アメリカへと亡命した青年アラムは、写真だけで選んだ同じアルメニア人の孤児の少女・セタを妻として祖国から自分の元に呼び寄せる。
新たな生活を始める為、理想の家族を強制するアラム。
だが、まだ幼く、心に深い闇を抱える少女・セタは期待に応えることが出来なかった。二人の間に新しい家族ができぬまま年月が経ったある日、彼らの前に孤児の少年・ヴィンセントが現れる。少年との出会いにより、少しづつ変わっていくアラム。
やがて彼が大切に飾る穴の開いた家族写真に対する思いが明らかになって行く。
というお話です。
故郷を追われたアルメニア人のお話です。一見、普通の難民としてアメリカに逃げて来て、やっと平穏な日々を手に入れたように見えるのですが、アラムの心の傷は深くて、顔の部分に穴が空いた写真を処分することが出来ないんです。
幸せな家庭を築ければ、きっとその写真の代わりに、自分たち家族の写真を飾れるのでしょうが、子供は生まれず、妻との距離も縮まらないんです。セタは、アラムが嫌いな訳では無く、トルコで家族を失ってまだ傷が癒えていないのに、幸せな家庭のようにふるまおとするアラムに付いて行けないんです。そして、段々とセタの心がアラムから離れて行き、夫婦なのに、心がバラバラになって行くんです。
そんな時に、セタが孤児のヴィンセントの世話をするようになるんですね。お使いを頼んだり、家でお菓子を食べさせたりする内に、良い友達になって行くんです。アラムは、何処の誰ともわからないヴィンセントを家に入れることに反対しますが、ヴィンセントも、この二人と同じように孤児となって、施設にいるんです。
何処に行っても同じような不幸があり、家族は無理やり作るものじゃなく、生きて行く中で、自然と出来て行くものなのかなと思いました。家族写真はいつの日か、自分たちで撮るもので、元からある写真に当てはめていくもんじゃないんです。それが、凄く心に刺さってくるような作品でした。
本当に良いお話で、眞島さんと岸井さん、そして彼らが必死で新しい場所で生きて行く姿を見ている子供ヴィンセント役の升水くん、この3人のお芝居は素晴らしかったです。感動してしまいました。最後の方は泣けましたもん。それを語っている老紳士の久保さんの語りも、安定していて良かったです。本当に良い舞台でした。
こういう良い作品を舞台でやってくださると、本当に嬉しいです。観た後に、とても感動して、幸せな気持ちになるんです。この作品、本当に観れて良かったと思いました。
もう公演は終わってしまいましたが、もし、再演するようなことがありましたら、ぜひ、観てみて下さい。素晴らしいです。もちろん、眞島さんと岸井さんの演技があっての事かもしれませんが、内容も素晴らしいので、ぜひぜひ、お薦めしたい作品です。
「月の獣」 https://www.tsukinokemono.com/