「ある女優の不在」を観てきました。
ストーリーは、
イランの人気女優ベーナーズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から動画メッセージが届く。その少女マルズィエは女優を目指して芸術大学に合格したが、家族の裏切りによって夢を砕かれ自殺を決意。動画は彼女が首にロープをかけ、カメラが地面に落下したところで途切れていた。そのあまりにも深刻な内容に衝撃を受けたジャファリは、友人である映画監督ジャファル・パナヒが運転する車でマルズィエが住むイラン北西部の村を訪れる。ジャファリとパナヒは現地で調査を進めるうち、イラン革命後に演じることを禁じられた往年のスター女優シャールザードにまつわる悲劇的な真実にたどり着く。
というお話です。
イランの人気女優ベーナーズ・ジャファリは、車の中でスマホの動画を観て、動揺している。監督のパナヒ経由で、ある少女から動画が送られてきたのだ。
その少女はマルズィエという名前で、女優を目指しており、結婚をしろという親に、芸術大学を受験させてくれたら考えてもよいと話した。もちろん彼女は、大学に合格したら通うつもりでいたのだが、両親は、まさか芸術大学に合格するとは思わず受けさせてしまう。すると彼女は大学に合格し、大学に行かせて貰えると思っていたマルズィエは、両親に裏切られ、結婚をしろと言われてしまう。自分の思う通りにいかないマルズィエは絶望し、自殺を考えて、村の近くにある洞窟に入り、動画を映しながら自殺を図る。動画は途中で切れており、自殺をしたのかどうかは判らない。
このまま自殺を図って、死んでしまっていたらと心配するジャファリは、撮影中だったにも関わらず、パナヒの運転する車に飛び乗り、マルズィエの居る村へ向かっているのだった。何時間もかけて、彼女の住むイラン北西部のサラン村を訪れる。マルズィエの家を捜し、行こうとすると、その村の人々は、マルズィエは芸人になりたいなどと言っている変な子で、村全体が迷惑していると二人に話す。とても保守的な村で、女は結婚して夫の世話をするべきだと思っているらしい。
ジャファリは、その考え方に驚いたが、まだ地方ではどこも同じように考えられているのだろうと思い、マルズィエも大変だったのだろうと気持ちを少し理解出来たが、とにかく自殺をしてしまっていたら困ってしまう。彼女の自宅を捜し、訪ねると、妹と母親がおり、マルズィエは家出をして3日程帰っていないという。まさか、本当に首を吊って、まだ見つけられてないのかもと心配するジャファリですが、パナヒは冷静に、では誰がビデオを送ったんだと言います。
マルズィエの友人に話しを聞くと、何も知らないと言われ、洞窟があれば教えて欲しいというと、近くにある洞窟を教えてくれます。そこに行くと、首を吊ったロープをかけたらしい木が見つかるのだが、ロープも、マルズィエも、スマホも見当たらない・・・。後は、映画を観てくださいね。
うーん、難しい映画でした。イランでも、TVや映画は人気で、俳優さんも女優さんも沢山いるようなのですが、女性の扱いは、やはり男性よりも低いようです。なので、地方では、もっと酷い状態なのだと解ります。この映画の中でも、マルズィエの村では、女性は10代で結婚させられて、夫に仕えるというのが当たり前とされていて、男性に文句を言うなんて許されないような雰囲気でした。
その上、俳優という職業は”芸人”と言われ、地位が低いように考えられているようでした。不思議でしたよ。だって、主人公のジャファリが村へ行ったら、沢山の人が集まってきて、サインを求めて、ワイワイしているのに、マルズィエの話を聞くと「あんなバカ娘に何の用だ!」と少し怒った声を出し、それまで周りに居た人たちがサーっと引いて行くんです。なんだか、怖いなぁと思いました。
この映画には、主人公のジャファリと、女優を目指すマルズィエと、昔女優だったというシャールザード、という3人の女優の話が核になります。シャールザードという人物は、姿はほとんど出てきませんが、昔は有名な女優だったらしいのですが、監督などから理不尽な抑圧を受けて引退に陥ったという事らしいんです。この3人の、それぞれの立場を考えていくと、今のイランの社会が、いかに女性を酷く扱っているかという事が、良く描かれていると思いました。でも、日本でもそうですよね。今も、「女のくせに。」という言葉を吐く人がいますが、マジで口に粘土でも突っ込んでやろうかと思います。
日本は男女平等などと叫んでいますが、世界的に見ると最下層らしいですね。どの国よりも差別が激しいというデータが出ているようです。イランの事を言っていられません。自分の国を変えて行かないとね。日本の女性って、どーも精神的に男性依存している女性が多くて、もう少し、一人で立ち上がれないのかしらって思ってしまいます。私は仕事でも、男性が出来るのなら自分も出来るはずと思って、ほとんどの事を自分でやりますが、やって貰うことが得だと思うのか男性に頼む女性いますよね。そういう姿を見ると、人間的に低いなぁ~と思ってしまいます。同等なんだから、何でも自分でやらなければね。力仕事で、どうしようもない時は、普通に手伝って貰えば良いんです。それは男性も女性も一緒でしょ。差別される女性の方にも問題ありですよね。
このイランでも、村の女性たちは、マルズィエの考え方に共感をする女性もいると思うのですが、一切、口を出しません。母親も父親に従うだけで、もし、女性たちが力を合わせて反発すれば、少しは変わっていくのですが、そういう姿はありませんでした。女性の考え方も変えていく必要があるのでしょうね。
パナヒ監督は、2010年から20年間、イランで映画製作を禁じられてしまいました。それでも映画を撮り続けていて、今回も、社会の不条理を訴えている映画を作り上げました。派手な映画ではなく、おいおい!って、ツッコミたくなるような場面もありましたが、性差別の問題を深く描いていて、考えさせられました。
最後に一つ。何か問題があって、好きな有名人に会いに来て欲しいと思っても、自殺フィルムを送り付けるなんて決してやってはいけません。きっと、日本でもアメリカなどでも、そんなフィルムが送られてきたら、直ぐに警察に届ける事になると思います。なので、誰もやってきません。来るのは警察だけです。そんなバカな事はしないようお願いいたします。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。但し、単館系でイラン映画なので、アクションやミステリーなどを好む方は、途中で眠くなるかもしれません。単館系映画が好きで、イラン映画に慣れている方には、お薦め出来ると思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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