舞台「常陸坊海尊」を観てきました。
ストーリーは、
常陸坊海尊は、源義経の忠臣として武蔵坊弁慶らとともに都落ちに同行し、義経最期の場所である奥州平泉での衣川の戦いを目前に主を見捨てて逃亡して生き延び、その後、不老不死の身となり、源平合戦の次第を人々に語り聞かせたと言われる伝説の人物です。荒唐無稽ともいえる東北の貴人伝説を背景に、戦中戦後の学童疎開と、人間の“生”や“性”、そして格差や差別といった問題を描いています。

ある村に東京から疎開してきた小学生の男の子たち。親には会えず、戦争はどうなって行くのか分からない中、不安が募っていきます。そして二人の少年が疎開先の施設を飛び出し、歩いていると、若く美しい女性が、二人に声をかけます。「ミイラを見たい?」二人は、怖いと思いながらも、彼女についていくと、ある古寺の中に、坊主のミイラ=”即身仏”がありました。驚いた二人は恐れおののきますが、その女性は笑いながら”海尊さま”と呼びなさいと言います。
美しい女性は雪乃と言い、そのミイラの妻という巫女のおばばの孫娘らしい。ミイラは海尊であり、おばばは夫を守っている。雪乃に魅入られてしまった少年の一人は、ある日、おばばのところへ行ったきり、戻ってく無くなってしまう。神隠しにあったという噂のまま、20年の歳月が過ぎ、疎開していた少年たちは、大人になっていた。
東京に戻っていた伊藤は、神隠しにあった安田を探すために、またこの地へ戻ってきていた。そして、ある神社に立ち寄ると、そこには20年前と全く変わらぬ姿の雪乃が立っていた。驚く伊藤だったが、安田もこの神社で暮らしていることが判る。懐かしいなぁと話しかけるが、安田は様子がおかしい。精神を病んでいるように見える。そして、あの頃に見たミイラを思い出すと、雪乃がはミイラが2体になっているという。そう、今は”つがい”であるようだ。そして、また新しい海尊のミイラが必要になるようで・・・。後は、部隊を観てくださいね。
海尊の妻と称す巫女のおばば役は、白石加代子。
おばばの美しい孫娘で、その魔性で男を翻弄する雪乃には、中村ゆり。東京からの疎開児童で、おばばと雪乃とともに生活し、最後に自らが海尊となり、罪を償う懺悔の旅に発つ安田啓太を演じるのは、平埜生成。啓太とともに疎開し、後にサラリーマンとなって啓太を訪ねる伊藤豊には、尾上寛之。また、東京から疎開に来た小学校教師役に長谷川朝晴。疎開者たちを預かる旅館の主人・寿屋役に高木稟。白石演じるおばばにつきまとう山伏・登仙坊玄卓役に大石継太。
さらに、本作のタイトルでもある伝説の人物・常陸坊海尊は、劇中、三人の異なる海尊として登場します。第一の海尊と第三の海尊には、大森博史と真那胡敬二。第二の海尊には、平原慎太郎。
というキャストでした。
凄く恐ろしいお話でした。長く生き続けていた海尊という言い伝えになっていますが、生き続けていたのは、雪乃という”八百比丘尼”のような女で、彼女が何世代にも渡り、海尊を作り上げていたという事なんです。妖怪ですよね。それが解かった時には、ゾーッとしました。観ていると、一番怖いのは、ミイラとおばばのような気がするのですが、本当は、傍にいた雪乃が一番の怪物だったんです。こんなホラーを寒い中で見てしまった後は、まじで凍えそうでした。でも、面白かったなぁ。こういう伝説って沢山あるけど、どこからどこまでが本当で、誰が核となっているのかというのは、決して判らないですよね。でも、もしかしたら、こういう事だったのかもしれないというお話は、とても衝撃的でした。本当に面白かったです。
そこにいるだけで恐ろしい白石さんのおばばと、美しく優しい雪乃。誰がどう見ても、おばばが悪い奴だと思っちゃいますが、本当は、横にいる害のなさそうな女性なんですよ。現実でも、これ、いっぱいありますよね。美しくて、何もわからなそうに見えて、本当は、全てその人が操っているという事。見抜ければ良いのですが、まず見抜けないし、ほとんどが、後から気が付くんですよ。もー、恐ろしい事です。
私は、この舞台、凄く面白かったので、超!超!お薦めしたいと思います。地味な作品だし、チラシなどに俳優の写真などは無かったので、あまり人気が無かったのかな。後ろの方ほ席がぽろぽろ空いていましたが、内容は素晴らしいものでした。勿体ないなぁ。こんなに面白いお話なのに、沢山の人に観て貰えないなんて、勿体ないと思いました。こういう昔の伝説的なお話で、ゾーっとする怪談のようなお話は、若い人にも観て欲しかったなぁ。もう、横浜は終わっちゃったけど、地方があるかな。もし、このお話を再演するようでしたら、今度は観に行ってみてください。面白くて、ゾッとしますよ。
ぜひ、楽しんでくださいね。

常陸坊海尊