舞台「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」を観てきました。
ストーリーは、
フランツ・カフカの晩年に、ある有名なエピソードがある。公園を散歩中のカフカと人形をなくした幼い少女の交流だ。
現代、かつての少女は今や100歳の老女となり、孫息子は祖母の手元に残されていた、フランツ・カフカの未発表原稿を出版社に持ち込もうとしていた。出版されれば「失踪者」「審判」「城」と並ぶカフカ第4の長編小説という事になる。若い女性が主人公の愛と受難の冒険物語だ。
主人公カーヤは出兵間近の婚約者ラバンと旅に出た。結婚後の暮らしを夢見る幸せそうな二人だったが、不穏な空気に飲み込まれるように旅の途中で生き別れてしまった。やがてカーヤのもとにラバンの戦士の報せが届く。
2人の兵士に付き添われ戦地に赴くカーヤ。ラバンの生死を自ら確かめたいカーヤだったが・・・。人々の誤報や裏切り、欲望が渦巻き、カーヤの前に立ち塞がる。果たしてカーヤは、恋人を探し出すことが出来るのか。
物語はいつしか、現在、カフカの居た過去、カフカの小説世界とが、互いに影響し合ってゆき・・・。
というお話です。
とても不思議なお話で、例えば、本を読んでいたら、いつの間にか本の中に居たという感じなんです。カフカが書いたとされる小説の主人公・カーヤは、婚約者と旅行に出たのに、途中で彼は居なくなってしまう。本当に旅行に行ったのかどうかも、定かでなくなっていく。確かに電車に乗ったんだけどと思うけど、もしかしたら違うかも・・・。
そんなカーヤは、ラバンを諦めきれずに、戦地まで探しに行くのですが、世間を知らないカーヤは、誰が本当の事を言っているのか解りません。騙されたり、襲われそうになったりと、大変な目に遭うのですが、それでもラバンを探し続けます。
そんなラバンとカーヤの姿は、1924年のカフカと恋人のドーラに重なっていきます。カフカとカーヤは、ドクターホフマンのサナトリウムに入っており、自分たちの未来はどうなるのか、不安に思いながらも、先へ進もうという気持ちで未来へと進んで行きます。
そんなカフカから手紙を貰った少女は、今では年を取り、少し記憶もあやふやになっています。手紙をくれた人がカフカだというけれど、本当にカフカであったのかどうか、それはよく解りません。でも、カフカだと信じている老女の孫たちは、その小説を出版社に持ち込みます。
何が本当なのかよく解らない世界で、小説だけはそこに存在し、その中の人々は生き続けている。それは、誰にも代えられないし、真実はそこにあるというような感じの舞台でした。雰囲気が素晴らしく良かったなぁ。何となくセピア色の世界で、カーヤがラパンを探していく先には、もやがかかっていて、誰も、真実は解らない。でも、真実なんて必要ないのかもしれない。ただ、そこにいる彼らは、未来に向かって生きているんだからという感じがありました。
私は、この舞台、とても好きです。気に入りました。超!お薦めしたいと思います。でも、もう上演は終わってしまったので、もし、再演があったら、ぜひ観てみてください。不思議な世界に連れて行ってくれる舞台でしたよ。
ぜひ、楽しんでくださいね。
ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~
https://www.kaat.jp/d/DrHoffman
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