東京国際映画祭2019 17作目は、ワールド・フォーカス「ペインテッド・バード」です。
ストーリーは、
東欧のどこか。家を失った少年はひとり辺境の地を歩き始める。それは想像を絶する艱難辛苦の旅の始まりだった。
というお話です。
ある少年が両親と離れ、ある家に預けられている。外に出て遊んでいると、近所の少年たちに追いかけられ、酷い暴力を受けて、連れていたペットのフェレットを焼かれてしまう。怪我をして家に帰ると、叔母は外に出るのが悪いと言う。両親が迎えに来てくれるのを待っているが、いつまでも来ず、叔母は突然に亡くなってしまう。一人になり、そこでは暮らせなくなった少年は、一人、寒い中を歩き始める。
ある村に着くと、悪魔の子だと罵られ、またも暴力を受ける。話を聞いていると、彼はユダヤ人らしい。東欧では、ユダヤ人は迫害を受けていて、その黒い目で悪魔だと決めつけられてしまう。何処へ行っても、酷い暴力を受け、時には殺されそうになり、ある時は、首だけ出して土に埋められ、彼を食べようとカラスが寄ってくる。
そんな彼を、あるカトリック教会の司教が拾い、彼に聖書の教えを説いて生活をさせていると、信徒の男が、自分の仕事の手伝いをさせる代わりに面倒を見ると申し出る。それは良い事だと司教が預けると、男は少年を連れて行き、酒の醸造を手伝わせ、夜には自分の性の捌け口としてしまう。キツイ仕事に、夜は性の相手をさせられ、身も心もボロボロとなって行く。
ある日、森の中で空き家を見つけた少年は、そこでナイフを拾う。何かされたらそれで反撃しようと持っていたのだが、ナイフを見つけられてしまい、また折檻を受けてしまう。そして拾った場所に連れて行けと言われ、その空き家で、思い余った少年は、男を空き家の穴に突き落とし、ネズミの餌としてしまう。そこから必死で逃げた少年は、今度は小さな町に辿り着くが・・・。後は、映画を観て下さいね。
チェコ、ウクライナ、スロバキアの作品です。3時間近い大作なのですが、これが、凄い重い衝撃作で、全然、眠くならないというか、目が離せないような内容なんです。最初は、どこの地域の話かなどは、全く分からないのですが、何故か、その少年だけ、酷く迫害を受けて暴力を受けるんです。何だろうと思っていると、東欧で、彼はユダヤ人なのだと言う事が解って来て、驚くほどの暴力を、何処に行っても受ける事になります。
少年に対する暴力は酷いもので、これ、R指定が付くと思うけど、まぁ、酷かった。ユダヤ人だと言うだけで、こんなにも憎まれてしまう。人間の”悪”の部分をすべてさらけ出したような感じで、どの人々も少年に対して、毒を吐きまくります。もう、観ていると、人間に見えなくて、悪魔たちが小さな天使を殺そうとしているように見えました。
そんな彼が出会う人々は、それぞれに自分の欲望に貪欲であり、利用出来るものは全て利用してやるっていうようで、汚い部分ばかりが外に出ていました。恐かったですよ。ある村で少年を匿ってくれた家の男と女は、仲の良い男女だったけど、夫婦では無かったのかな。で、その村の女性たちは、彼女に”淫乱”と言って彼女の膣にガラス瓶を無理やり捻じ込み割って、女性を殺すんです。ゾッとしました。どうしてここまで人を憎めるのか、人間の恐ろしさが良く描かれていたと思います。
とにかく、他にも衝撃的な場面が多々あり、あまりにも人間の残酷さにさらされ続けた少年は、無垢だったのに、反撃するという悪の心を持ち始めます。やられたらやる返す、それが人間なのだと思い始めるんです。その経過が、あまりにも強く描かれていて、映像も美しく、カット割りも凄くて、これ、内容も芸術性も相当に高いと思いました。こんな凄い作品を朝から観てしまったので、脳が凄く疲れました。
この映画、日本公開して欲しいなぁ。これ、マジで凄いですよ。私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。でも、3時間くらいあるし、凄く暗くて、あまりにも残酷な映画なので、大人じゃないと、この映画の言わんとしていることを理解出来ないのではないかと思いました。子供には見せたくないけど、でも、現実はこういう事なのだと言う事が描かれています。公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
東京国際映画祭2019 「ペインテッド・バード」
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32WFC04