東京国際映画祭2019 10作目は、クロスカット・アジア「永遠の散歩」です。
ストーリーは、
50年前に母を死なせたことを後悔して生きてきた老人が霊力を授かって過去に戻る。果たして母の命をつなぎとめることはできるのか?
というお話です。
ラオスの貧しい家庭に生まれた主人公の少年。乾いた土地で少ない野菜を栽培して売っていたが、少しのお金にしかならない。ある日、少年は家に帰る途中で、気になる場所を見つける。何だろうと林の中に入ると、そこには女性が倒れていた。まだ、息があったが、長くないようだ。彼女は、一緒に居て欲しいと言い、少年は女性の手を取る。
その日から、少年に、その女性が付いてくるようになる。少年は最初は怖がるが、怖くはないことが分かり、彼女と一緒に行動するようになっていく。彼女の遺体のそばにあったバッグには、大金が入っており、少年はそれを手に入れ隠しておくのだが、具合が悪そうな母親に渡すと、父親に見つかってしまい、父親は金を持って出て行ってしまう。
母親は亡くなり、少年は成長し、既に50年経つ今も、あの時に出会った女性と一緒に歩いている。あの日から、彼には霊が見えるようになり、何かあると、彼に行方不明の人を探して欲しいと言ってくる人がいるが、彼は受け付けない。
彼は、彼女といると、突然に過去にタイムスリップする事がある。目の前に少年の自分と母親を見つけ、何とか母親を助けられないか考え始めるが、病気で死ぬことは曲げられない。苦しまずに逝けるようにと手助けをしてしまうと、現代の自分の状況が変わって来てしまう。何かをする度に未来が変わり、手の施しようが無くなった時、彼はある行動を取る事に・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、タイムスリップものと言って良いのかな。時間を渡って、過去を変えるんだけど、これが、良く出来ているんです。辻褄合わせがちゃんと出来ていて、あの場面で死んでいた人は誰かなと思っていると、その人が、後から生きて出てくるので、その死んでいた理由が分かるんです。
未来を変えて、死を止めようと思い、どこで間違ってしまったのかを調べていくのですが、どんどん先が変わって行ってしまうから、どーしよーって観ているこちらは思うんだけど、当の本人は、どう考えているのか分からないんです。だって、表情が読めないんですもん。全く予想が付かず、これ、今までとは違うファンタジーホラー映画だなって思いました。
ちょっとネタバレだけど、過去を変えたせいで未来が変わって、最後の方は、本人がいつの間にか女性誘拐大量殺人犯っぽくなっちゃうとこまで行っちゃうの。ええ~!どうすんのっ!ってなるんだけど、どうなるのかはお楽しみです。
雰囲気が凄く良く、湿気の多い空気が重く感じさせるので、内容に重厚さが増して、人物たちも肉厚に見えてくるんです。なので、観ていると、凄くのめり込んでしまうんです。霊が見える男性の話といえば、簡単に説明が出来てしまうけど、この映画は、そんな簡単なものでは言い表せないほど、重圧で面白くて、新しいものを見せてもらったような気持ちになりました。
最後の方で、主人公の男が「私は死んでいるのか。」というセリフに対して、女性が「あちらのあなたはね。」と言うんです。この一言で、もう、永遠にループしてしまうという事が表されていて、ゾッとして、感動するんですよ。何て美しくて残酷な話なんだろうって。ここで世界が、グーっと広がって、広い世界に一人取り残された男というイメージが広がって、恐怖と悲しさが襲ってくるという、素晴らしい作品でした。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画の良さ、日本人にはきっと伝わると思います。これ、日本公開して欲しいなぁ。これは、美しいお話だと思います。イケメンとかは出てこないけど、アジアの良さが存分に味わえると思います。公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
東京国際映画祭2019 「永遠の散歩」
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32CCA05