東京国際映画祭2019 7作目は、コンペティション「アトランティス」です。
ストーリーは、
2025年、戦争直後の世界。深いトラウマを抱えた元兵士の男は、身元不明の死体発掘に携わる女性と出会い、自らの過去と向き合う。
というお話です。
2025年の戦争直後のウクライナ東部。そこは、人間の居住には適さない砂漠となってしまっていた。PTSDに苦しむ元兵士のセルヒーは、バラバラになった人生、廃墟に成り果てた土地という現実を受け入れることが出来ずにいる。今日も、友人と必要も無いのに射撃訓練をし、その心の空虚を埋めていた。
勤め先の精錬所がついに閉鎖となり、友人は自殺をしてしまう。仕方なく、彼は戦死者の死骸を掘り出すブラック・チューリップというボランティア活動に参加し、同僚のカーチャとともに活動に従事することとなる。
それは、自分たちが行っていた戦争という行為に向き合う事となり、この先、未来の見えないこの地で、どうしていくべきなのかと考え始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
うーん、この映画は、とても観念的な映画でして、ウクライナという、今も内戦が続く地域だからこそ、こういう映画が出来てきたのだろうと思えるような映画でした。
その地は、もう荒廃してしまって、人が住めるような地域ではないのですが、そこで暮らしてきた人々は、簡単にその地を捨てて出ていく気持ちになれず、この主人公のセルヒーは、ずっと悩んでいるんです。でも、この地にいれば、戦争の事は忘れられないし、PTSDも消えることは無い。
これね、Q&Aの時にも出ていたんだけど、福島の原発事故の地域といっしょだなって思ったんです。もう、その地には住めないと解っていても、やっぱりそこから離れられないという気持ち、凄く解るんです。自分が今まで生きてきた地域を、簡単に忘れられる訳が無いですよね。捨てられる訳が無い。どうしてもこだわってしまう。このセルヒーも、同じだったと思うんです。
そんな地域で、カーチャという女性と出会い、愛を感じていくのですが、二人で一緒にいる時だけは、何となく温かさを感じて、人間的な表情も出て、生きている感じになるんです。映像も、その時だけ、サーモグラフィーみたいな映像になっていて、人間が生きているんだという事を印象付けるんです。
未来が見えない状態でも、そこに愛は存在して、その愛によって、もしかしたら、その地も蘇っていくのかも知れないという感じに思える映画でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。但し、映画の内容に波が無く、大きなことが起こる事も無いので、ちょっと眠くなります。戦争があった地域ということで、空気は乾いているし、冷たいし、静寂なので、ちょっとウトウト来てしまうと思います。それでもなんとなく観て、感じて欲しいという感じです。日本公開は決まっていませんが、もし、機会があったら、観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
東京国際映画祭2019 「アトランティス」
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32CMP02