東京国際映画祭2019 2作目は、特別招待作品「アースクエイクバード」です。
ストーリーは、
東京で働くイギリス人女性に、ある日殺人容疑がかけられる。そこには日本人カメラマンとの恋、友人との三角関係が複雑に絡み合うのだった…。
というお話です。
1989年(1987年だったかも。)の日本。東京で働くスウェーデン出身のルーシーは、既に日本に来て7年。日本語も堪能になり、翻訳会社での仕事も順調だった。しかし、彼女は暗い影を背負っていて、あまり人と関わるのが上手くない。家族と住んでいたのだが、兄弟が1人亡くなり、その時から孤独となり、家族と離れ日本に来たのだった。
会社に行くと、警察が訪ねてきて、ルーシーに話しが聞きたいから同行して欲しいと言う。警察で、海で失踪していたリリーらしき死体が上がったと言われ、何か知っていることを話して欲しいと言われる。そして、ルーシーはそれまでの事を思い出す。
ある日、東京を歩いていると、カメラを手にした男性に写真を撮られる。勝手に撮られ、断りを入れるように申し入れると、彼は、突然でなければ本物が撮れないと言って取り合わない。何となくお互いに気になり、一緒に歩くことに。それから二人は何となく連絡を取り付き合うようになる。彼の名は禎司。蕎麦屋の店員だが、趣味でカメラをやっているらしい。
ルーシーは、外国人仲間から、日本に新しくやってきたイギリス人のリリーを紹介され、面倒を見てやって欲しいと言われてしまう。面倒臭いと思いながらも、部屋探しなどを手伝い、リリーと仲良くなっていく。リリーは、日本語はからっきしダメだが、人懐こく、誰とでも仲良くなれるような女性だった。そして、ルーシーが付き合っている禎司にも逢ってみたいと言い出す。
外国人仲間でハイキングをしていた時、ルーシーが捻挫をし、リリーが直ぐに足を見てくれる。リリーは、本業は看護士だったが、全て辞めて日本に来たらしい。リリーは手相で未来が見えると言い、ルーシーの手を取ると、おかしな顔をしてやっぱり判らないと言う。何かあるようだが、何も言ってはくれなかった。
ルーシーは、佐渡島に観光に行こうとリリーに言い、禎司も連れて行く事にする。しかし、そこである事件が起きて、ルーシーと禎司は疎遠になる。それからしばらく経って、リリーの失踪事件が起き、その後、海で死体が上がったという情報が入る。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
うん、この映画、面白かった。映画と言っても、ネットフリックスで配信される映画なので、大画面で観れるのは、この映画祭だけかなと思い、観に行きました。思っていたよりも、数段面白かったです。これ、1980年代の日本が舞台なのですが、良く調べたなぁと思うほど、ファッションや車などが、レトロにされているんです。だって、シャツは全てズボンやスカートにインされていて、まるで自分の若い頃の両親を見るような感じがしましたもん。もちろん携帯は無いし、不思議な世界でした。
緑の新幹線が既に走っていて、あれ?と思ったけど、上越新幹線って、1982年に開業しているんですね。ちょっとビックリしました。あんな昔に新幹線、走ってたんだなぁって感動しちゃった。
内容ですが、孤独な外国人女性が、殺人の容疑者にされてしまうというお話なのですが、この年代だと、外国人女性が、日本語を堪能に話し、仕事をしているというのは珍しかったのではないかと思います。映画の中で、いつも見られていて有名人になった気がするというセリフがあるのですが、確かに外国人は珍しくて日本人はチラチラ見ていたんじゃないかな。その辺りも、良く考えられて、表現されていました。
ルーシーは、明るくて人懐こいリリーが、禎司と仲良くなっていくのを見て、嫉妬していきます。ルーシーには、リリーが悪い人に見えていくけど、もしかしたらリリーは、ルーシーの未来を知っていたからこそ、お節介をしたのかもしれなくて、そこら辺も、凄く深いんです。名前が”リリー”というのも上手いですよね。天使ガブリエルは”リリー=百合”をもっ持っているんですから。このお話、考えれば考えるほど、凄く深いのよ。
そして、色々な事が起こるのですが、ルーシーは、昔の事があって、何か悪い事があると、自分のせいだと思ってしまうんです。周りの人たちが、”あなたのせいじゃない”と言っても、どうしても自分が悪いと思ってしまうのですが、ある一言で、それが溶けて行きます。
誰かが、何か被害に遭ったとしても、それは誰かのせいでも何でもない。それでも、誰もが、心に自分のせいだったかもという重荷を背負うんです。要因はいくつもあり、誰もが自分のせいだと思い込む。それは、あなただけじゃなく、みんなが思う事であり、生きていれば、必ず背負うモノだから、それで苦しむ必要は無いんだよって言う事なんです。みんなで背負って、助け合って行けばよい。そんなことが描かれていて、本当に救われる映画でした。最後にホロッと涙が出そうになりました。
このアースクエイクバード=地震鳥なのですが、地震と言えばキリスト教的に解釈するとハルマゲドンでしょ。ハルマゲドンの後には、天使が下りてくる=鳥が下りてくるので、鳥の声が聞こえるんだと思うんです。何か辛いことがあっても、必ず救済はあるのだという聖書の教えが、この話の根底に流れているんだなって思いました。
アリシアさん、外国人なのですが、日本的な雰囲気の女性を演じていて、上手いなぁと思いました。本当に女優さんって凄いですね。その相手役に、EXILEの小林さん、カッコいいんだけど、どこか不気味で読めない雰囲気が良かったです。この禎司も、凄く謎の多い男で、終わってから考えると、凄く深い役なんです。彼の過去は、映画の中では描かれませんが、そのセリフとか、彼の写真などから、凄く心に闇を持った男性だけど、もしかしたら純粋で素直な男性だったのかもというようにも思えて、深い役でした。リリー役のライリーさんも、良かったです。嫌な女っぽく見えて、本当は看護士ということで、天使だったのかもしれません。本当に、このストーリーは、よく出来ていました。原作は、有名なイギリスのサスペンス小説です。
この映画、私は、超!超!お薦めしたいと思います。でも、映画館上映は無いかな。ネットフリックスで配信されるので、そちらで観て頂ければ良いかなと思います。確か、月800~900円位だったかな。これだけ良い映画を配信するなら、私も契約しようかなと思い始めています。ただ、観る時間が無いなぁというのが問題で、映画館で上映される映画を少し減らして、ネットフリックスで観るしか無いかな。とにかく、本当に私は良い映画だと思いました。ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
P.S : 映画館上映があるようですので、ぜひ、観に行ってみてください。面白いですよ。
東京国際映画祭2019 「アースクエイクバード」
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32SPS04
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