舞台「渦が森団地の眠れない子たち」を観てきました。
ストーリーは、
田口圭一郎は、行った事も見たことも聞いたことも無い世界を想像しては、自分のノートに絵を描いている小学6年生。妹で小学4年生の月子は足が速く、全国小学生陸上競技大会の選手候補として練習に余念がない。
だが、大きな地震が起きた影響で、二人は母の景子と、渦が森団地に引っ越すことに。渦が森団地には景子の姉、佐山美佐枝が住んでいるが、美佐枝と仲の悪い景子は、圭一郎と月子に美佐枝に会っても無視するように言う。
引っ越し当日。近くの公園で遊んでいた圭一郎と月子は、家に帰ろうとして自分たちの部屋がどこなのかわからなくなってしまった。そこに自転車に乗った少年が現れる。二人が迷子だと知った彼はスピーカーメガホンで、団地内に迷子のお知らせを始める。それが圭一郎と、美佐枝の息子・佐山鉄志の出会いだった。
圭一郎が自分の従兄弟だと知った鉄志は圭一郎を親友として特別扱いする。圭一郎は、鉄志がキングとして君臨する集団に加わって遊ぶようになるが、鉄志のことは好きになれずにいた。ある日、公園で野球をしていた圭一郎は、ティーンモデルのダイアナの顔に打球を当ててしまう。予想外の事態にすぐに謝れない圭一郎。鉄志はほかの子供のせいにして、圭一郎を助けようとする。だが、自分がダイアナの顔に打球を当てたのに謝らなかったことを景子に問い詰められた圭一郎は、泣きながらすべてを鉄志のせいにしてしまう。
不安になった圭一郎は鉄志に内緒で、子供たちの遊び場になっている、団地の自治会長・安部久典の部屋にみんなを呼び集める。だが、そこに鉄志がやってきて一転ピンチに。その場はごまかしたものの、翌日から鉄志にイジメの対象にされ、空想した世界を描いたノートも奪われてしまう。
その後、圭一郎はダイアナに打球を当てたことを告白して謝るが、鉄志が現れて喧嘩になる。圭一郎が優勢なのを見て圭一郎に加勢する子供たち。そして家庭の秘密をバラされた圭一郎は鉄志を叩きのめし、やるせない気持ちで「もう、親戚じゃないから」と言うのだった・・・。その後・・・。
後は、舞台を観てくださいね。
このストーリーは、考えさせられる深いものでした。
主人公の圭一郎は、団地で迷子になり、それを助けてくれたのがキング=鉄志なんです。普通に出会って、普通の友達になっていれば、きっと何の問題も起きなかったと思うんだけど、鉄志が圭一郎の従兄弟だと分かり、母親同士が仲が悪いということがネックになって、それぞれの親があの子と仲良くしなくていいとか、負けるんじゃないとか、外からの情報を子供に入れるから、子供がお互いに意識してしまって、ギクシャクするのよね。きっと、圭一郎も鉄志も、母親に色々言われていて、仲良くしていながら、辛かったと思うの。
そんな彼らのグループ内で、ダイアナにボールをぶつけちゃうという事件が起きて、直ぐに素直に謝れなかった圭一郎は、自分が悪いと解っていても逃げたくて、母親に鉄志が悪いんだと言ってしまうんです。子供らしい嘘なのですが、鉄志は怒って圭一郎を虐めの対象にするんです。まぁ、良くある事ですよね。
大人しい圭一郎は虐められて逃げていたんだけど、とうとう反撃をしてしまいます。身体の大きい圭一郎は強くて、鉄志に勝ってしまい、そうなると、今度は鉄志の仲間だった子供たちがみんな圭一郎の側に付くんです。ここら辺は大人の社会と同じですよね。そうすると、圭一郎は、自分が力を持って、相手を虐めるのが気持ちよくなっていくんです。何処までも鉄志を虐め始めます。
ここら辺が、虐めの本質を描いていると思うのですが、一度、誰かを虐めて、優位でいる気持ち良さを味わってしまうと、何処までもやってしまうんですよね。で、この圭一郎のもう一つの問題は、地震の後に、怖いもの見たさで、友達と死体置場だった学校の体育館に忍び込んで、膨大な数の死体を見てしまうんです。そのショックで、生死の感覚が可笑しくなり、小さな生き物や猫などを殺して、それをスケッチに描いていたんです。
鉄志は、そんな圭一郎の危ない部分を見つけて、実は、とても心配しているんです。鉄志は、表向きはキングと周りに呼ばせて、エラそうに見せているけど、本当はとても優しい子で頭の良い子なんです。時々、調子に乗って、酷い事もしてしまうけど、元はとても良い子なんです。
こんな子供同士の関係性を繊細に描いていく事で、今の社会にある問題を描き切っていて、凄く考えさせられました。虐めは無くならないんです。虐めが大きくなったものが戦争なんですから。いつの時代も、子供も大人も、自分が生きる為と言いながら、麻薬のように気持ち良くなれる、”虐め”という行為を止められないんです。それを、子供の頃に理解させてやらなければ、人間を辞めなければならなくなります。圭一郎は、鉄志に止めて貰えたんです。団地という迷路の中で、狂って行くのを止めて貰えたんです。
凄く感動しちゃいました。藤原さんと鈴木さん、ちゃんと子供になっていて、凄かったです。子供としての素直さと難解さを良く演じられていました。子供だって、結構、良く解っているんですよ。大人は子供だからって、バカにしちゃいけません。考えさせられました。
私は、この演劇、超!超!お薦めしたいと思います。ここ最近、観ている演劇は、脚本が凄く良いので、とても満足しています。うーん、凄く良かった。そうそう、グッズのトートバックを購入したのですが、普通のトートバックの倍くらいの大きさがあって、エコバックとして使えるので、とっても便利だと思いました。いつもA4が入る大きさなんだけど、B4かA3くらいが入るんじゃないかな。野菜を全部突っ込んで帰ってこれるので、嬉しいわ。話を戻して、とても良い舞台なので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「渦が森団地の眠れない子たち」ホリプロ
https://horipro-stage.jp/stage/uzugamori2019/
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