「楽園」誰が悪いのか何があったのか、何処にもぶつけられない怒りを一身にぶつけられた人間は・・・。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「楽園」の試写会に行ってきました。舞台挨拶があり、綾野剛さん、佐藤浩市さん、瀬々監督がいらっしゃって、トークをしてくださいました。

 

ストーリーは、

ある夏の日、青田に囲まれたY字路で少女誘拐事件が起こる。事件は解決されないまま、直前まで被害者と一緒にいた親友・紡は心に深い傷を負う。それから12年後、かつてと同じY字路で再び少女が行方不明になり、町営住宅で暮らす孤独な男・豪士が犯人として疑われる。追い詰められた豪士は街へと逃れ、そこである行動に出る。さらに1年後、Y字路に続く限界集落で愛犬と暮らす養蜂家の善次郎は、村おこし事業を巡る話のこじれから村八分にされてしまう。追い込まれた善次郎は、ある事件を起こす。

というお話です。

 

 
青田が広がる、ある地方都市。
屋台や骨董市で賑わう夏祭りの日、一人の青年・中村豪士が慌てふためきながら助けを求めてきた。偽ブランド品を売る母親が男に恫喝されていたのだ。母親は日本人ではなく、中国か東南アジア系から渡ってきたようだった。そこは何とか収まり、仲裁をした藤木五郎は、友人もおらずに母の手伝いをする豪士に同情し、職を紹介する約束を交わす。
 
約束の日、青田から山間部へと別れるY字路で五郎の孫娘・愛華が忽然と姿を消し、その約束は果たされることは無かった。小学校からの帰り、愛華の友達の紡とY字路で別れた後、姿を消したようだった。必死の捜索空しく、愛華の行方は知れぬまま。赤いランドセルだけが見つかったのだった。紡は、自分が一緒に行っていればと、罪悪感を抱えたまま成長する。
 
 
12年後、紡は祭り囃子の稽古の帰り道、後方から迫る車に動揺して転倒してしまう。慌てて運転席から飛び出してきた豪士に助けられたが、笛が壊れてしまっていた。豪士は、笛が破損したお詫びにと、新しい笛を弁償する。彼の優しさに触れた紡は心を開き、二人は互いの不遇に共感しあっていくが、心を乱すものもいた。
 
紡に想いを寄せる幼馴染の野上広呂と、もう一人は愛華の祖父・五郎だった。そして夏祭りの日、再び事件が起きる。12年前と同じようにY字路で少女が消息を絶ったのだ。住民の一人が愛華ちゃん失踪の時に、ランドセルがあった場所から豪士が遠ざけようとしたと言い出し、疑念は一気に豪士に浴びせられる。追い詰められた豪士は街へと逃れるが、惨事へと繋がってしまう。
 
 
その惨事を目撃していた田中善次郎は、Y字路に続く集落で、亡き妻を想いながら、愛犬レオと穏やかに暮らしていた。しかし、養蜂での村おこしの計画がこじれ、謂れのない事で村人から拒絶され、村八分とされてしまう。村人からの嫌がらせが続き、次第に正気は失われ、想像もつかなかった事件が起こる。
 
Y字路から起こった二つの事件、容疑者の青年、傷ついた少女、追い込まれる男。三人の運命の結末は。後は、映画を観てくださいね。
 

 

この映画、凄いお話でした。ここ最近、本当に心を抉られるような映画や舞台が立て続けにあって、衝撃と感動しっぱなしです。弱い者虐めをした人間たちがみんな逆襲に合うんです。群衆心理によって、一人の人間を追い立てていく=狩るという悪が、今度は、自分たちを追い詰めていくという、それこそ「罪と罰」のような感じですかね。現代ではSNSなどで、一人の人物を追い詰めていくという事が問題になっていますが、SNSが無い時代でも、同じことが起きていたんです。みんなで誰かを追い詰めて、実はその人は悪くなくても、その場所に居られなくなるという、コミュニティの中で良く起きる事が描かれています。

 

確かに、何か事件があれば原因があるはずだし、それが誰かの仕業か事故か、どちらかですよね。でも、小さなコミュニティで、疑いだしたら、誰もかれも怪しいじゃないですか。良さそうに見える人でも、何を考えているか分からないし、悪く見えても本当はとても良い人かもしれません。それは解りませんよね。だから、最近は防犯カメラやセンサーなど、セキュリティが重要になってきている訳ですが、そもそも、なんでそんなに人を疑わなければならなくなったのかという事が問題だと思います。

 

 

情報文化が進み、知識が増えた分、色々な事に興味を持つ人が出てきて、今まで繋がらなかったような人々とも繋がるようになってきた。こんな事考える自分はおかしいのかもと思っていたのに、同じような人がいると思うと、大胆になって、やってみようと思う人も出てきているのだと思います。だから、気を付けなくちゃと思うのですが、でも、やっぱり人を信用したいですよね。誰もが悪い人だなんて思いたくないんです。

 

この豪士という青年は、母親と他国から渡ってきて、日本で随分と虐めを受けて、人を避けるような性格になってしまったんです。母親に、日本は楽園だからと言われて渡ってきたのに、地獄だったんです。楽園って何なんでしょうね。私は、楽園って、自分で作って行かなければ出来ない場所だと思うんです。ただ、そこに行けば楽園だなんて、そんな場所ありませんよ。自分が居心地の良い場所を作れば楽園になるし、失敗すれば地獄なんです。

 

 

狭いコミュニティは辛いですよね。町のみんなが自分の事を知っているし、いつも誰かに監視されているようで、息苦しい気持ち、よく解ります。そこから抜け出して、東京など都会に来る方も多いと思いますが、都会でも、結局、SNSなどにハマるのなら同じじゃないですか。SNSの中のコミュニティで、叩かれたりされるのでしょ。何処でも人間って愚かな動物だと思います。

 

そんな事を考えさせられる、重厚感のある素晴らしい映画でした。豪士を演じた綾野さん、紡を演じた杉咲さん、善次郎を演じた佐藤さん、凄かったです。この追い詰められていく感じを、ここまで演じてくださると、観ている方も追い詰められて、苦しくなります。こんなに悲しいこと、辛いこと、何もかもが押し寄せてきて、人間が壊れてしまうという事が、本当に伝わってきました。瀬々監督、素晴らしかったです。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。これは心を抉られると思いました。吉田先生の原作「犯罪小説集」も良いのですが、これだけの凄い人が集まって映像にすると、もっと凄くなるんだなという事が分かりました。感動しました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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