舞台「死と乙女」を観てきました。
ストーリーは、
独裁政権が崩壊し、民主政権に移行したばかりのある国では、反政府運動に対する旧政権の弾圧や人権侵害の罪を暴く調査委員会が発足した。かつて反政府側で闘っていてジェラルドは、新大統領からその中心メンバーとして指名を受けている。妻のポーリーナも共に学生運動に身を投じていたが、治安警察に受けた過酷な拷問のトラウマに苛まれ、心身共に苦しんでいた。
ある嵐の晩。
岬の一軒家でジェラルドを一人松ポーリーナは、見知らぬ車の音に怯える。車の故障で立ち往生したジェラルドは、偶然通りかかった医師ロベルトに助けられ、ロベルトの車で家まで送られてきたのだ。
家に招き入れられたロベルトの声を聞いたポーリーナに戦慄が走る。その声はかつて自信を監禁し、美しいシューベルトの「死と乙女」の調べと共に繰り返し屈辱した男のものに違いない!
そしてポーリーナのロベルトに対する追求と復讐が始まった。潔白を訴えるロベルトと妻を思いとどまらせようとするジェラルド。
三つ巴の心理戦があぶり出すのは、人間の狂気か、真実か・・・。
というお話です。
この舞台は、先日観た「ジョーカー」の映画に匹敵するような、気持ちが滅入る作品でした。宮沢さん、堤さん、段田さん、と3人の芝居なのですが、まぁ、宮沢さんが凄いんです。宮沢さん演じるポーリーナが、ジョーカーのように悪にどっぷり漬かりそうになるのを、堤さん演じる夫のジェラルドが何度も止めようとして、そして・・・というお話なのですが、その一触即発の雰囲気が、凄い迫力なんです。
あらすじを読んでいただければ分かるように、革命に参加していた女性が警察に捕まり拷問を受けて、革命が終わって、新しい世の中になったけど拷問で受けたトラウマは忘れられず、ある日、その拷問をしていた人物に出会ってしまうというお話です。
このお話、虐められていたけど、反対に虐める方になった時に、泣き叫ぶ相手を許すことが出来るのかという事なんです。私なら、まず、許さないでしょうね。”目には目を歯には歯を”として、同じことをしたいと思うでしょう。このポーリーナは、酷い拷問の上に何度もレイプをされたんです。女性がレイプされたら死んだも同然なんですから、相手を殺しても足らないと思いますよ。
(エゴン・シーレの”死と乙女”という絵です。)
そんな殺したいほど憎い相手が、目の前に現れたらどうしますかというお話で、夫のジェラルドは、もう終わった事だから、何とか抑えて、許してやってくれというのですが、ポーリーナはどうしても許せないんです。夫のジェラルドと、憎い相手のロベルトが、許して欲しいと何度も頼むのですが、許せないと言うんです。そりゃ、そうですよねぇ。当たり前だと思います。そして、「どうしていつも私たちばかりが我慢しなければいけないの?」と心からの叫びを訴えるんです。もう、その心臓を抉り出すような叫びは、本当に悲しくて、哀しくて、観ているこちらも、心が壊れそうになりました。
「死と乙女」というシューベルトの曲が題名になっているのですが、私は「死と乙女」と聞くと、エゴン・シーレの”死と乙女”という絵を思い出します。恐ろしい死神に抱きついている乙女が、これで苦しみから逃れられるというような表情なんです。でも、死神に連れられて行くのは地獄かもしれない。そんな事を思わせる絵なんです。死神の手を取らずにいられない女性の気持ちが、この演劇で痛いほどわかりました。
この演劇は、本当に素晴らしい舞台でした。演じる方の力が凄く出ていて、観ることが出来て良かったと思った作品です。宮沢さん、やっぱり凄い役者ですね。もう、ノックダウンされました。
私は、この演劇、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは、ぜひ、観るべき作品だと思います。東京だと、あとちょっとかな。この後、大阪での上演だと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
シスカンパニー 「死と乙女」
http://www.siscompany.com/sisotome/gai.htm
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