「ある船頭の話」初監督作品というけど映像も内容も素晴らしい作品だったと思います。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「ある船頭の話」を観てきました。

 

ストーリーは、

川岸の小屋に暮らし、村と町を繋ぐため船頭を続けるトイチは、村人の源三が遊びにやってくる時以外は黙々と渡し舟を漕ぐ毎日を送っていた。そんないつもと変わらない日常を送るトイチの前に、ある1人の少女が現れたことをきっかけに、トイチの人生は大きく変わっていく。

というお話です。

 

 

時代が現代へと移り変わる端境期。川岸の質素な小屋で暮らしているトイチは、渡し船を営んでいた。大きな川には橋が渡っておらず、村人が町へいこうとすると、今はまだ、トイチの渡し船が頼りなのだった。村の若者・源三は、時々、トイチの所へやってきて一緒に食事をするなど、トイチに懐いていた。

 

そんな変わらない毎日を送っていたある日、川を1人の少女が流れてくる。驚いたトイチは、直ぐに拾い上げ介抱してみると、まだ息があるようだった。家に寝かせ休ませると、目を覚ますが、何もしゃべらなかった。仕方なく、トイチの家で面倒を見ていると、渡し船の客の噂で、川の上流の村で一家惨殺事件があったらしい事を聞く。その家族の娘だけ、姿を消したというのだった。

 

 

もしかして、その娘なのではないかと考えたトイチは、源三に頼み、上流の村での事件を調べてきて欲しいと話す。源三は調べてくるのだが、大したことは無かったとトイチに報告する。帰る家も無いのならと、トイチは少女を親族の娘だと偽り、一緒に暮らし始める。

 

そんな中、川に橋をかける工事が進み、もうすぐ橋がかかるという情報が入ってくる。橋がかかったら、渡し船の仕事は引退だと考えているのだが、少女もいるし、どうしたもんかと思っていた。そして橋が開通すると・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

俳優のオダギリジョーさんが初めて監督として作られた作品です。最初の作品なので、あまり期待しないで観にいったのですが、これが良かったんです。確かに、出演されている俳優さんたちも良かったんです。主演は柄本さんで、ちょっとした役にも、日本を代表するような俳優さんが揃っていて、よくこれだけ良い俳優さんを集めたねって言うほど、華やかな出演者でした。

 

 

もちろん、出演者が良いだけでなく、訴える事がしっかりしていて、映画に一本筋が通っているような作り方で、私は気に入りました。人間は自然と共に生きてきたのに、便利になり生活が進化してしまい、自然のありがたさを忘れてしまったんです。自然から離れて、人間社会を作った結果、大切な心は退化してしまう。人を思いやる気持ちや、共に生きるという気持ちを、忘れちゃうんです。そんな事が描かれていたように思いました。

 

 

トイチという老人は、自然と生きる旧人間の象徴であり、源三という少年は新しい社会の象徴に見えました。以前は、トイチの所で野生児のように暮らしていた源三が、橋という新社会への道が出来たら、スーツやコートを着て、自分の利益の事だけを考え、傲慢な人間となっていくんです。とても解りやすく、古い人間と新しい人間の違いを表現していました。

 

そんな二人の間にいる少女は、”自然”を表していて、トイチは彼女を守ることを考え、源三は踏みにじることを考えてしまう。本当に、人間が傲慢になり、どんどん自然を壊してしまったせいで、自然災害が起きるようになってしまった。自然と共存していた時は、自然も人間もお互いに助け合っていたので、災害は起きても、それ程に酷い事にはならなかったんです。全ては、人間の責任なんだよねって考えさせられました。

 

 

柄本さんが主演なので、上手いですよね。もう、文句のつけようがありません。それに対して、村上虹郎さんが、凄く頑張っていたと思います。沢山の素晴らしい俳優が出演していますが、中心は、このトイチと源三の対比ですから。新旧を表す二人がバランス良く動いて、変わらない人間と、変わって行く人間の違いを良く表していました。

 

自然の映し方も素晴らしく美しいんです。穏やかな自然があると思うと、川が濁流になっている荒々しい自然もあり、そういうバランスが上手いんです。バランスが良いと、凄く安定して、最後まで飽きずに楽しく集中して観ることが出来るんです。初めての作品というのに、上手いなぁと思いました。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。私は気に入りました。でも、単館系のじんわりした映画なので、あまり単館系に慣れていない方には、ちょっと難しいかもしれません。でも、解りやすく描いていたとは思うんですけどね。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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