舞台「ブラッケン・ムーア」を観てきました。
ストーリーは、
1937年、イギリス・ヨークシャー州にある、炭鉱主ハロルド・フリチャードの大邸宅。炭鉱の社員ジョン・ヘイリーがハロルドに炭鉱閉鎖の再考を直談判しているところに、女中のアイリーン・ハナウェイがエイブリー一家の到着を告げる。
かつては家族同士で仲良くしていた両家だが、10年前に当時12祭だったハロルドの一人息子・エドガーが、ブラッケン・ムーアという荒野の廃坑に落ちて亡くなった事故をきっかけに疎遠になっていた。それ以来、エドガーの母親・エリザベスは家の中でふさぎ込んでいる。彼女を励ます為、ジェフリー・エイブリーと妻のヴァネッサ、エドガーの親友だった息子のテレンスは、数日間この屋敷に滞在する予定だった。
テレンスと再会したエリザベスは、亡きエドガーへの思いを溢れんばかりに話し出す。
その日からテレンスは毎晩悪夢を見るようになり、3日後の深夜。テレンスのあげた叫び声が屋敷中に響きわたり、彼は意識を失ってしまう。
ギボンス医師が診察をする為に駆けつけるが、テレンスはエドガーの霊が憑依し、何かを伝えようとささやいてくると言う。そしてテレンスは、事故現場であるブラッケン・ムーアに向う。やがて知られざる真実が少しづつ明らかになっていく。
というお話です。
この舞台、私はとても感動しました。もちろん、出演されている方々が上手いのもあるのですが、ストーリーが良かったからです。10年前に亡くなった子供の霊が憑依して、伝えたいことを話し始めるという、良く日本の怪談でもありそうなお話なのですが、ちょっと違うんです。最後まで観ると分かるのですが、簡単に思いを伝えに戻ってきたと言うのとは違うんですよ。そこが、上手い話しだなぁと思いました。
私は、霊や不思議な現象をどちらかというと信じる方です。だって、何故かいつも守られているような空気を感じることもあるし、きっと、自分が死んだら、思っている人をどんなにしても守りたいと思うだろうから、その思念のようなものって、残るような気がするんです。
この舞台でも、エドガーという少年が亡くなって、両親はとても悲しんでいるのですが、きっと、エドガーだって、いつまでも悲しんで前に進めない両親を見るのは辛いと思うんです。出来れば、10年も悲しまないで、早く新しい子供を作って欲しかっただろうと思うし、両親を影ながらでも助けられたらと思っていると思うんです。そんな彼の気持ちが、どうやって現れてきたのか、どうやって伝えられたのか、よく出来ていました。面白かったです。
岡田さん、本当に上手くなりましたね。エドガーとして言葉を発する時と、テレンスに戻る時と分けて演じていたし、演じるということを演じるという姿も感動出来ました。
炭鉱を閉鎖するという所から話が始まるのですが、この利益にならないからと言って、簡単に閉鎖する、会社を縮小するなど、良くある話とはいえ、そこには働いている従業員もいるので、色々な事を考えて決断すべきだと思うんです。ジョン・ヘイリーという社員が、新型機械の導入を止めて、その分で従業員を働かせれば、何年かは維持出来るという提案をしているのですが、社長は話しを聞きません。先の事を考えれば、諸事情を鑑みて、この社員の言葉を聞くべきだと思うのですが、社長は目の前の事しか目に入らないんですよねぇ。
そんな父親をエドガーは心配して戻ってきたのかもしれません。もっと広い目で見て、もっと未来を観て、と言いたかったのだろうと思います。もちろん、会社の事だけではなく、夫婦としてのことも。
とても深い内容のお話でした。私は、この舞台、超!超!お薦めしたいと思います。でも、東京公演は終わっちゃったかな。地方公演がもう少し残っていると思うので、もし機会があったら、観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
シアタークリエ「ブラッケン・ムーア」
https://www.tohostage.com/brackenmoor/index.html