「アンダー・ユア・ベッド」乱歩を彷彿とさせる変態が高潔に見えてくる。良く出来た作品だと思います。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「アンダー・ユア・ベッド」を観てきました。

 

ストーリーは、

家でも学校でも誰からも必要とされることなく、存在自体を無視されていた男。誰からも名前すら覚えられることのないその男に「三井くん」と名前を呼んでくれた、たった1人女性がいた。学生時代の甘美な思い出から11年の時間が過ぎ、男は女性との再会を夢見るが、男の目の前に現れた彼女は別人のように変わってしまっていた。彼女に何が起こったのか。男の純粋な思いは暴走し、彼女の自宅に潜入。ベッドの下に潜み、息を殺して彼女の監視を始める。

というお話です。

 

 
雨の日の無人のエレベーターで、誰かの香水の香りが残っていた。この香りは、11年前、たった一度だけ、自分の名前を呼んでくれた佐々木千尋がつけていた香りだった。親からも学校のクラスメイトからも、名前すら憶えられたことのない彼を、唯一「三井くん」と呼んでくれた女性だった。三井は、自分の名前を呼ばれ、人生で唯一幸せだと思えた感覚をもう一度感じたいと思い、彼女を探す事にし、興信所に彼女の行方を探してもらった。
 
大学時代の授業中に教師に指名されて答えに窮していた三井に、千尋が後ろから「三井君」と声を掛け、ノートを貸してくれて、三井は答える事が出来た。講義後に千尋を喫茶店に誘い、彼女が好きだというマンデリンのコーヒーを飲み、飼育しているグッピーを分けてあげる話をしたのだった。三井は人生で唯一幸せだった時間を思い出し、“もう一度名前を呼ばれたい”一心で、現在の彼女の自宅を探し出すことにしたのだった。
 
 
千尋は地方の街で公務員である夫と生まれたばかりの子供と暮らしていた。三井は、彼女近くにいられるよう、それまで勤めていた熱帯魚店を独立するからと言って退職し、彼女の住む街へ引っ越し、観賞魚店をオープンさせた。
 
彼女の家が見下ろせるところに家を借り、彼女を見て過ごせるようにする。しかし、目の前に現れた千尋にあの日のキラキラとした眩しい面影はなく、今にも消え入りそうな虚ろな表情の変わり果てた姿だった。数日後、千尋が観賞魚店に来店するも、当然三井のことは覚えてはいないが、“グッピーを飼育する”という彼女の家にグッピーを届け、その時に、こっそり彼女の家の鍵を盗んで合鍵を作る。その日以降無断で千尋の家の留守を見計らい定期的に潜入し、置いてあったライターに盗聴器を仕掛け、窓越しに望遠レンズで盗撮し、監視する毎日が始まった。すると、見えてきたものは、夫・浜崎健太郎から激しいDVを受ける凄惨な千尋の姿であった。
 
 
彼女を助けたいと思いながらも、三井を覚えておらず、今は何の接点も無い彼女の前に現れる術を知らず、ただ、観ている事しか出来ない三井は、毎月、彼女と初めて出会った10日に「幸せになって。」というカードと共に花束を送り始める。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、「ハイテンション・ムービー・プロジェクト」の第2弾だそうです。第1弾は「殺人鬼を飼う女」でしたね。今作は、衝撃的でした。最初は、只のキモい男に見えているんですけど、段々と、その純粋さに気持ちが傾いて行き、彼に気が付かない世界が悪いのだと思い始めてしまうような映画でした。

 

 

三井は、子供の頃から何故か影が薄くて、親からも忘れられてしまうような子でした。でも、それは本人が悪いのではなく、親が悪いと思うんですよね。優しい子だからこそ、親の迷惑にならないようにしようと静かにしていたからだと思うんです。親の教育のせいなんですよ。ちゃんと親が彼に手をかけて愛してあげていれば、そんなことは無かったと思うんです。

 

そのまま成長し、彼は静かに社会に順応しているのですが、ある時、ふと、大学時代に自分の名前を呼んでくれた女性を思い出します。そして彼女に執着し始めるんです。ここら辺の感覚は、ちょっと理解が出来ませんが、そんな人もいるのかもしれません。でも、恐いと思いました。ただ一度、声をかけてお茶を一緒に飲んだだけの男が、自分をストーカーするって事なので、少しゾッとしました。だって、そんな人、沢山いますもん。それをいちいち覚えていないので、この千尋さんに同情しました。

 

 

で、ストーカーし始めると、千尋は酷いDVを受けているんです。このDVの様子が、見ていて辛くなるほど酷くてキツかったです。逃げなきゃ殺されるというほど酷いのに、何故か逃げられないんです。これが、DV被害者の心理ってものなのかもしれませんが、それが良く描かれていました。

 

私なら、直ぐに訴えていると思うけど、この映画の時代設定が、テープレコーダーを使うような時代なので、平成初期か昭和の末期かなと思うんです。その時代だと、今のようにネットも普及していないし、夫に暴力を受けていても、どうして良いのか解らなかったのかもしれませんね。だって、今だったら、身体に酷い痣が沢山あれば、医者が声をかけると思うけど、映画の中では、医者に行っても、産後に精神的に不安定になっているだけだと言って、薬をくれるだけなんですもん。酷いよね。

 

 

三井は、そんな千尋に大学時代のキラキラした彼女を重ね、近くで感じたいと思い、こっそり忍び込んでベッドの下に隠れて、じーっとしているんです。別に何をする訳じゃなく、ただ、ベッドの上で夫に犯されている彼女を感じて喜んでいるんです。うーん、変態ですね。あ、そうそう、もちろん”大人のおむつ”をして忍び込んでいます。ちょっと、この時代にあれ程性能の良い”おむつ”があったとは思えませんが、一応、そうやって長い時間、隠れていたんです。この雰囲気、江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」とか「人間椅子」がモチーフかなと思いました。あの小説と同じように、ベッドの下で恍惚としている三井の姿も描かれていましたよ。

 

どんどんDVはエスカレートしていき、それを観る三井は段々と耐えられなくなっていきます。助けたくても、助けられない。彼女の前に現れてはいけないと思っているのですが、ある日、あまりにも酷いDVを受けて、死にそうになっている彼女を見捨てられずに、彼女を助けてしまう場面があります。うん、この辺りは、まともな男だなと思いました。まぁ、マトモじゃないか。だってストーカーなんだもん。

 

 

高良さん、変態役をやっているのに、美しくて、高潔に見えました。彼がやるから、この映画は観れるけど、彼以外の人だと、ただ気持ち悪い感が出てしまい無理だったかもね。この映画は、彼という役者の力が強いと思いました。そして千尋役の西川さん、体当たりの演技、凄かったです。彼女は「私は絶対許さない」の時も凄かったですが、可愛い顔でここまでやってくれる女優さんが出てくると、ただ可愛いだけの女優は要らなくなりますね。だって、彼女だからDVの酷さが描けているけど、これ脱ぐのはダメ、暴力はダメと言っていたら、無理ですもん。本当に良く出来ていました。これはキャストも良かったのだと思います。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。面白いです。酷いDVが描かれていますが、そこは我慢していただいて観て頂くと、最後に本当に感動すると思います。私は、最後の高良さんの微笑みで、感動でした。その一場面だけで、救われるんです。確かに変態だけど、ここまで人を愛すると高潔に見えるんです。その愛に感動しました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

アンダー・ユア・ベッド|映画情報のぴあ映画生活

 

 

 

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